パンに書かれた言葉

著者 :
  • 小学館
4.12
  • (13)
  • (21)
  • (8)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 165
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784092893191

作品紹介・あらすじ

ヒロシマとイタリアをつなぐ<記憶>の旅 わたしには名前が三つある。 光・S・エレオノーラ。 エレオノーラは、イタリア語で光という意味。 Sは何かって? ちょっと大げさな名前だからないしょにしてる。2011年震災後、少女エリーは親戚のいるイタリアに少しの間避難する。おいしいものと温かい人たちに迎えられ人心地つくが、思いもよらない歴史に触れ、エリーの名前のSに込められた本当の意味を知ることになる。戦争を乗り越えて生きてきた人々の“希望”を描く、ヒロシマとイタリアをつなぐ物語。 【編集担当からのおすすめ情報】 ヒロシマを描き続けてきた作者が、震災後、どうしても書きたかったという渾身の物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 言葉で伝えていくことの大切さ。

    広島出身、被爆二世の父と、第二次世界大戦中ナチスに侵略された北イタリア出身の母。その両親の13歳の娘がヒロシマ、イタリア双方の戦争の悲惨な歴史を祖父、祖母から聞くことになる。

    言葉の力、残された言葉の重み。
    むごたらしい戦争を繰り返さない、という著者の強い思いが全篇ににじんでいる。

  • 被爆と大虐殺 向き合う少女 児童文学作家 朽木祥さん新著 無差別殺りく 「同じ人間になぜ」 | 中国新聞ヒロシマ平和メディアセンター(22年8月4日)
    https://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=122078

    パンに書かれた言葉 朽木祥 小学館 | 児童文学書評 おいしい本箱 book cafe
    https://bit.ly/3P3dY0D

    ベスト『パンに書かれた言葉』 | 教文館ナルニア国
    https://bit.ly/3bCmR3A

    パンに書かれた言葉 | 書籍 | 小学館
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09289319

  •  主人公の光・S・エレオノーラ(エリー)は、広島出身の日本人の父とイタリア人の母を持つ。

     エリーは、母の実家である、エレナおばあちゃんがいるイタリアにしばらく滞在し、そこで、おばあちゃんの子供の頃あったこと、とりわけ、おばあちゃんのお兄さんであるパウロの話を聞く。

     エリーがそれまでほとんど何も知らなかった、イタリアでの、ナチスによるユダヤ人虐殺、イタリア人同士のファシスト政権と、それに抵抗する一般市民らパルチザンによる攻防戦の話だ。パウロはパルチザンの一員だった。パウロは捕まり、母が差し入れた1つのパンに、自身の血である文字を書いた後、処刑された。そのパンは、カチカチになって緑色のサテンに包まれ、大切に今もエレナの家に保管されていた。

     エリーはイタリアで聞いたこと、そして広島の原爆のことも、もっと知りたいと思うようになる。帰国した後、夏休みには、被爆経験のあるおじいちゃんのいる広島へ行く。そして、今まで経験した戦争について多くを語らなかったおじいちゃんから、沢山の話を聞く。


    [心にまとっている無関心という名のマントを破り捨てなさい]という文が強く心に残りました。歴史に対して、他人に対して、無関心でいることに慣れきっている自分にハッとしました。

     勝手に男性と思っていた朽木祥さん。調べたら女性でした。被爆2世である作者がどうしても伝えたいことを盛り込んだこの一冊。今まで読んだ(数少ないですが…)戦争物の中で、一番我が事のように胸に響きました。歴史が特に苦手な私でも一気読みでした。中学生くらいから大人まで、多くの人に読まれるべき一冊だと思います。

  • 光・S・エレオノーラ
    イタリア人の母、日本人の父をもつ、3つの名前がある中学1年生

    東日本大震災直後の春休み、母の親戚が暮らす北イタリアの小さな村に一人で行くことになる

    そこでノンナ(おばあちゃん)に聞かされたのは、第2次世界大戦でナチスがイタリアでもおこなったユダヤ人虐殺、抵抗して戦った人たちの記録、そしてノンナの兄が残したパンに書かれた言葉

    帰国した光は、夏休みにこんどは父の実家がある広島に出かける

    祖父母からは被爆の実態とその後の苦しみを聞かされ、祖父の妹が残した日記を手にする

    〈イタリアとヒロシマをつなぐ〈記憶〉の旅〉──帯のコピー

    ふたつの〈記憶〉から少女は何を考え、何を学んだか
    ノンナの兄が死の直前、パンに残した言葉とは

    暴力ではなく言葉の力を信じることができるために、主人公の名前でもある“光”に希望を託した物語

    〈暗黒の日々のなかでも他者の苦痛や悲しみを分かち持って生きようとした人々の物語が、少しでも現代の読者を励ませるよう心から祈ります。〉

    〈どうか世界中の子どもたちが心の自由を奪われることなく、〈希望〉に満ちた未来を生きていけますように。〉

    ──「あとがき」より

    『八月の光』『光のうつしえ』の朽木祥による書き下ろし、2022年6月刊

    〈心にまとっている無関心という名のマントを破り捨てなさい〉

    このくにのかたちを問う選択を前に、ナチスに抵抗した学生運動「白バラ」が残したメッセージをかみしめたい

    ※p.9〈ママと話したことをが〉⇒〈ママと話したことが〉

    ※p.120〈くやりきれない〉⇒〈やりきれない〉

    ※p.32〈今年のバスクアは四月二十四日だった。〉⇒〈三月二十四日〉でないと〈春休みの旅行〉にならない(ただし、2011年のじっさいの復活祭は4月24日)

  • 待ちに待った朽木祥・新刊!
    予約をして、嬉々として読み始める。

    う~ん、正直、盛り込みすぎのような・・・

    北イタリアのパルチザンと広島、
    そして3.11までがつながるのだけれど・・・
    ちょっとムリがあるような・・・

    たぶん、ご本人が、よくおわかりのはず。
    それでも、これを書きたかったという、その思いに
    まずは、心からの拍手を。

  • “子供たちたちのために作りたい。歌い出すような明日を”

    イタリア人のママと日本人のパパの間に生まれたわたしには三つの名前がある。
    光・S ・ エレオノーラ

    イタリアのおばあちゃんは真ん中の名前にとても喜んだんだって

    鎌倉に住むわたしの今日もいつもと同じだと思っていた
    そしてぐらりと揺れた地面は、わたしから日常を奪っていった

    ・イタリアの親戚の家にしばらく預けられた光は、おばあちゃんにおばあちゃんのお兄ちゃんのこと、仲良しだった女の子のことを聞く
    二人はナチスに命を奪われている
    おばあちゃんの家で見つけたカチコチのパンに書かれていた文字は…

    ・日本に帰ってきた光は広島のおじいちゃんの家にやってきた
    フクシマの災害から、戦争体験を話すようになったというおじいちゃんが語ってくれたのは、マメちゃんという光と同い年だった妹の話

    〇この本で語られるパルチザンはユダヤの人々を助ける活動を行っていたが、やはりその中で…
    〇光の気付き。突然日常が奪われる。人ごとではなく、またジブンゴトのように考えていくことの大切さ
    〇イタリアでも酷いナチスの侵攻があったことを初めて知った

  • 前半のイタリア編を読んでいたときは、まだ少しぼやーっとしていましたが、後半の広島編を読んでいるうちに、朽木さんがこの本に込めた思いがわかった気がしました。

    「伝えること」「声を上げること」

    の大切さ。

    あとがきにも、

    「戦争やヒロシマを描こうとするとき、心から去ら  
     ぬ問いがあります。
     物語ることが先か、伝えることが先か。
     伝えたい思いが募るあまり物語を損なうことがあ
     ってはなりませんが、しかし、どうしても伝えて
     いかねばならない〈記憶〉もあります。」

    とありました。

    将来を担う、一人でも多くの子どもたちに、この思いが伝わりますように。


  •  鎌倉で東日本大震災を経験したエリーは、しばらく母の故郷のイタリアの祖母の元で過ごすことになった。
     祖母の家の祭壇で見つけた小さな布の包みには、祖母の悲しい過去が包まれていた。エリーは祖母から戦争の体験を聞いた。

     日本での夏休みは、父の故郷の広島に滞在した。被爆者の祖父はこれまで戦争の話はしたがらなかったが、この夏は違った。

     エリーは、自分と同じ年頃で戦争の時代を生きた少女達のことを知り、これからを生きる自分の役割を考える。

  • 広島出身の父とイタリア人の母の間に生まれた“光”の名を持つ少女が主人公。イタリアと広島それぞれの戦争を書く。タイトルの意味は胸がしめつけられる。戦争を知らない世代に。

  • 2022 朽木祥

    わたしには名前が三つある。
    光・S・エレオノーラ。
    エレオノーラは、イタリア語で光という意味。
    Sは何かって?ちょっと大げさない名前だからないしょにしている。

    主人公は通称エリー、13歳
    父は広島出身の日本人
    母はイタリア人

    始まりのなぞにひきつけられる
    とすぐに東日本大震災
    舞台の鎌倉は関東だったので、そのあたりの事情は想像しやすい。
    物理的不安と、心理的不安。

    からの
    イタリアトリエステのステラマリス村へ
    おかあさんの実家へひとりたびのエリー
    そこで祖母(ノンナ)から、その村であった戦争の話と祖母の兄のパオロの話を聞くことになる。
    ノンナの親友だったユダヤ人のサラのこと。サラがノンナに託したのは二人のお気に入りの赤い布表紙の詩集だった。二人は13歳。
    パオロはそのサラの一番下の弟を隠し、救おうと働いていたのだった。パオロが妹エレナに託したのは英語が書かれたノート数ページ。
    春休みのこと。

    そして夏休みには、父の実家広島へひとり旅
    祖父から聞く、祖父の妹真美子さんの話と広島原爆のこと。真美子さんは13歳で爆心地で被爆して亡くなった。
    真美子さんの日記を読ませてもらい、その存在が一気に身近になるエリー。
    そこでは従兄弟の彩香(さいか)ねえさん(大学3年生)がいて、フランス旅行でショア祈念館(ユダヤ人大虐殺の歴史博物館)へ行った話、そこでであった【クラルスフェルト夫妻】の写真集の話を聞く

    白バラ ミュンヘンの大学生たちがつくったドイツ国内の抵抗運動
    ビラを6枚作り最後のところには「このビラをできるだけ多く複写して、できるだけ多くの人に届けてください」と記していた
    それは「言葉の力」を信じていたからなのか
    第五のビラの言葉「心にまとっている無関心という名のマントを破り捨てなさい」という言葉

    フランスでまかれたビラの話
    エリュアールの詩 リベルテLiberte
    Paul Éluard
    https://www.youtube.com/watch?v=bktcB5QpNp0

    内容はてんこ盛り感もあるのだが、朽木さんがどれも大切に感じていて、同じように扱うべきだと考えていることがわかる
    とくに広島の精霊流しの光のゆれは、前の朽木さんの作品も彷彿させる

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

広島出身。被爆2世。
デビュー作『かはたれ』(福音館書店)で児童文芸新人賞、日本児童文学者協会新人賞、産経児童出版文化賞受賞。その後『彼岸花はきつねのかんざし』(学習研究社)で日本児童文芸家協会賞受賞。『風の靴』(講談社)で産経児童出版文化賞大賞受賞。『光のうつしえ』(講談社)で小学館児童出版文化賞、福田清人賞受賞。『あひるの手紙』(佼成出版社)で日本児童文学者協会賞受賞。ほかの著書に『引き出しの中の家』(ポプラ社)、『月白青船山』(岩波書店)、『八月の光 失われた声に耳をすませて』(小学館)などがある。
近年では、『光のうつしえ』が英訳刊行され、アメリカでベストブックス2021に選定されるなど、海外での評価も高まっている。

「2023年 『かげふみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朽木祥の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ソン・ウォンピョ...
辻村 深月
伊坂 幸太郎
島本 理生
ジョーダン・スコ...
上橋 菜穂子
凪良 ゆう
瀬尾 まいこ
ヨシタケシンスケ
朽木祥
小手鞠 るい
瀬尾 まいこ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×