- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093567459
作品紹介・あらすじ
奇跡のアンソロジー、日韓同時刊行! 突如若者に舞い降りた「無」ブーム。世界各地に「無街」が建設され――。(村田沙耶香「無」) 夫がさりげなく口にした同級生の名前、妻は何かを感じとった。(アルフィアン・サアット「妻」/藤井光・訳) ポジティブシティでは、人間の感情とともに建物が色を変える。(ハオ・ジンファン「ポジティブレンガ」/大久保洋子・訳)先鋭化する民主化運動の傍らで生きる「あなた」たちの物語。(ウィワット・ルートウィワットウォンサー「燃える」/福冨渉・訳)都市に走った亀裂、浸透する秘密警察、押し黙る人びと。(韓麗珠「秘密警察」/及川茜・訳)ブラック職場を去ることにした僕。頭を過るのは死んだ幼馴染の言葉だった。(ラシャムジャ「穴の中には雪蓮花が咲いている」/星泉・訳)家族の「縁」から逃れることを望んできた母が、死を目前にして思うこと。(グエン・ゴック・トゥ「逃避」/野平宗弘・訳)3人の少年には卓球の練習後に集う、秘密の場所がある。(連明偉「シェリスおばさんのアフタヌーンティー/及川茜・訳)6人の放送作家に手を出した男への処罰は不当か否か。(チョン・セラン「絶縁」/吉川凪・訳) 【編集担当からのおすすめ情報】 きっかけは韓国を代表する若手作家チョン・セランさんのひと言でした。「韓中日+東南アジアの若手世代の作家7~9人で、同じタイトルのもとそれぞれ違う短編小説を書いてアンソロジーを出してみたいです。今、思い浮かんでいるタイトルは『絶縁』です」この提案を、『コンビニ人間』が世界的ベストセラーになった村田沙耶香さんに伝えたところ「痺れるテーマですね」と快諾。その後、アジア9都市9人の作家の参加が決定しました。『折りたたみ北京』にてヒューゴ賞を受賞したハオ・ジンファンさんをはじめ、いずれも気鋭の作家です。多くの作品が既存作品の翻訳ではなく書きおろしという前代未聞のプロジェクト、日韓同時刊行です!
感想・レビュー・書評
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「絶縁」という同じテーマでアジアの9都市9作家がそれぞれ物語を描いたら…面白いなぁ~と、しかも村田沙耶香さんだぁ…と思い手にしました。村田沙耶香さんの作品「無」は、楽しめました!「無」になりたい…とは思ってもなかなか難しいもんですね…。「無」が崇め奉られる…スゴい世界っ!!しかも「無街」が各地にできるって…ちょっと怖い世界っ…でも村田沙耶香さんらしい作品でした。
他の作家さんが描く作品も読み応えありました。ただ、やっぱり日本とは全く違うなぁ…って思うと、なかなか深く読み込めなくって…私には難しい作品を選んでしまったのかもしれません…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東アジア~東南アジアの若手作家による『絶縁』という共通テーマのもとに書き下ろされたアンソロジー。
かなり読みごたえがある。
読み終えるのに結構な時間がかかった。
同じ時代を生きているのに、その国の政治・社会状況によりこんなにも違った世界が広がっているとは、想像もしなかった。そう、同じテーマのもとに書かれているにも関わらず。
作家の個人的な傾向もあるだろうが、それとてその国の社会情勢に影響されることは少なくないだろう。
村田沙耶香、チョン・セランの作品は、読みながら(村田沙耶香のはディストピアのようだったが)その状況や心理が掴みやすかったのは、やはり似通った社会構造の国の作家だからだろうか。
他の作品は、知識のなさゆえに想像力が追い付かないものもあったが、アジア文化圏の多様性と奥深さを感じ、もっと和訳されてほしいと思う。
2023.1 -
アジア9都市アンソロジー『絶縁』情報解禁! | 小説丸
https://shosetsu-maru.com/bungei-news/zetsuen_news/01
絶縁 | 書籍 | 小学館
https://www.shogakukan.co.jp/books/09356745-
小説家・村田沙耶香のスペキュラティブフェミニズムと彼女自身の惑星 | WIRED.jp
https://wired.jp/membershi...小説家・村田沙耶香のスペキュラティブフェミニズムと彼女自身の惑星 | WIRED.jp
https://wired.jp/membership/2022/11/24/writer-sayaka-murata-inhabits-a-planet-of-her-own/2022/11/28
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アジア9都市9人の作家のアンソロジー。「絶縁」
をテーマにした作品を収録。
村田沙耶香さん、藤井光さんの名前を目にして手に取ったが、それぞれの作品に魅力があり読み応えがあった。その分、ふだんより時間をかけて読んだ。
とくに、村田沙耶香の「無」と、チョン・セランの「絶縁」がよかった。
「穴の中には雪蓮花が咲いている」ラシャムジャも印象深い作品だった。
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「絶縁」をテーマにしたアジア9都市9作家によるアンソロジー。村田沙耶香さんと郝景芳さんの2作を目的としつつ、こういったアンソロジーじゃないとなかなか読む機会もないだろうと興味も湧いたため、手に取って読んでみた。
9作家ともなると「絶縁」についても様々で、自ら選ぶ絶縁もあれば、受け入れざるを得ない絶縁もある。希望を感じさせる絶縁もあれば、確たる救いがない絶縁もある。悩み、苦しみ、不安を感じ、それらを受け入れて未来に進もうとしているものもあれば、未来を閉ざすものもある。読後感としては、正直すっきりと晴れやかではなく、ややモヤっとしている。それは国や文化の背景の個人的な理解不足によるものもあるので、総評的には読むことができて良かった。
「無」村田沙耶香
「ポジティブレンガ」郝景芳
「秘密警察」韓麗珠
「絶縁」チョン・セラン
この4作品が印象に残っていて、内なる心の葛藤や本当の自分を見つける強さや決意を感じるようだった。 -
アジアの作家たちによる「絶縁」をテーマにしたアンソロジー。村田沙耶香さんが参加されることもあり、発売を楽しみにしていた。黒なのにキラキラしてる装丁も素敵。短編にしては長めの作品が多く一部手こずったが、SF的設定のものより後半のリアリズムなお話がより胸に響いたかな。
*村田沙耶香「無」は、村田作品らしい諸々の設定に読み始めは既視感を覚えつつも、終盤の展開には「おおっ」となってやはり圧巻の読み心地なのだった。母親の虚無感を都市の化け物(=キングギドラみたい?)に描くのはグロテスクで痛々しくありつつもその孤高さがもはやカッコよく感じたりもして。
*アルフィアン・サアット「妻」:短編集『マレー素描集』を読んでいるのに、雰囲気などすっかり忘れていて新鮮に読んだ。乾いた&倦んだ筆致は嫌いじゃなかった。
中盤の数編は視点の変化やSF的奇想にちょっとついていけなくて、目が上滑りしてしまったかも。福富渉さん訳のタイ文学、興味あったのだけど、この「燃える」は個人的に大好物の二人称の語りにもかかわらずなぜか微妙にハマれなかった。解説を読んで、タイに関する知識が足りなすぎたなと反省。アジア各国の民主化運動をもっと勉強する必要があると思った。
*ラシャムジャ「穴の中には雪蓮花が咲いている」は、初めて読むチベット文学。でも舞台の中心は主人公が働く北京なので、都市や街路樹のイメージなど驚くほど東京と地続きに感じた。それに故郷の幼馴染との逸話がうまく絡んで新しいのに懐かしい独特の味わいがあった。
*グエン・ゴック・トゥ「逃避」:これはベトナムの作品。老いた母の成人した子どもに向ける複雑な思いは普遍的で、風呂場で倒れて死にかけてる、という設定もなにか他人事じゃなくて、じつは一番胸に響いたかも。
*チョン・セラン「絶縁」:ずっと読みたかった初チョン・セラン!キャンセルカルチャーと旧友とのいかんともしがたいすれ違いがテーマなんだが、心の揺れ動きが緻密に描かれていて、苦しいけどその苦しさにどこか励まされる。ざらりとした後味含め、角田光代さんを思い出し、人気に納得。 -
アジアの異なる場所の作家のアンソロジー、という時点で何という思いつき、と驚くのだけど、そこでテーマを「絶縁」で、とするチョン・セランさん、さすがですわ…。
どの作品もぎりぎり心臓を削られるようで、でも色合いや音色は全く異なっていて、全編緊張しつつもとても面白かった。
今時点ですごいメンバーなのだけど、10年経ったらますます何という贅沢な面々、と思うことになりそう。
全作家さん追いかけたい。 -
村田沙耶香さんの作品が読みたくて手に取ったのですがこの本を手に取らなければ一生縁がなかったなと思う素敵な作家さんがたくさんいて、そのお国柄が出ててとても面白かったです
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日本の作家と共作しませんかと問われた韓国の作家チョン・セラン氏が「アジアの若手世代の作家が同じテーマのもと短編を書くアンソロジーはどうか?」と編集部に逆提案。それで編まれたのが本書だとか。
今回のテーマは“絶縁”。人によって、国や地域によって、こんなにもいろんな“絶縁”があり、それぞれが自分だけの「生」に翻弄されながらそれでも生きていくしかないのだな…。誰かに代わってもらうわけにはいかないものね。
作品ごとに作者紹介に加えて訳者解説やあとがきがあるのがうれしい。世界が広がるような一冊でした。テーマを変えたり執筆者の顔ぶれを入れ替えたバージョンも読んでみたい! -
「絶縁」テーマのアンソロジー
訳者のあとがきにナイスフォロー大賞を捧ぐ
村田沙耶香、天才
と思いきや、芋づる式に天才現る
そして、しんがりのチョン・セラン
一気に世界が広がってしまったので、これからどうしようかと悩む