太平洋戦争 最後の証言 第三部 大和沈没編

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093798334

作品紹介・あらすじ

なぜ大和は「日本人の希望」でありつづけるのか。戦争ノンフィクションの決定版三部作、ついに完結。

感想・レビュー・書評

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  • SFアニメの世界では宇宙まで飛び出す、大和。しかしその実際の歴史はよく知りませんでした。

     この本では大和の建造から参加した主な海戦、そして大和の最後が描かれます。

     実際にそれぞれの立場で大和に接してきた生存者の方々とのインタビューをもとに、大和の歴史を再構成する労作です。

     連合艦隊がほとんど壊滅したレイテ沖海戦、この時点で艦隊を組めるレベルにはなく、また、どこに移動するにも航空機の援護が得られない状況になっていました。また、広島の呉軍港に係留されていた大和でしたが米軍の空爆が呉に及んだため、「このままでは最悪瀬戸内海で沈められる」恐れもでてきました。

     燃料の重油もほとんど枯渇した中、大和は沖縄に向かいます。

     大和にまつわる人間模様には…

     砲術学校へ行けと沈没直前に退艦した弟と入れ違うように大和に着任した兄の話。

     国のため、天皇のために潔く死ね、と教える陸軍に対し、「命は大切にしろ」と教えた海軍。(しかし、その海軍が神風特攻隊を組織するのですが)

     大和が沈むときにできた大きな渦に巻き込まれそのまま溺死するかと思われたとき、大和の艦内で爆発があり、それに持ち上げられるように海面に出て九死に一生を得た人たち。(複数の証言あり)

     私たち日本人が決して忘れてはならない歴史です。

     

  • 三部作の第三部。第一部では空の特攻を中心に、第二部では陸の玉砕を中心に、完結編であるこの第三部では「戦艦大和」に焦点をあて、「戦史ではなく体験」と「記録ではなく証言」を描いたノンフィクションです。

    「【本書 はじめに より抜粋】大和に乗り込んでいた三千三百三十二人のうち戦死者は三千五十六人で、死亡率は91.7パーセントに達した」とは言え、かの大東亜戦争において決して特別とは言えません。にも関わらず、著者はなぜ大和を完結編の対象として選んだのか。私はそのことにまず興味を覚えました。

    著者はその点について、次のように本書に著しています。
    【本書 はじめに より抜粋】
    希望や誇りは、形のないものである。しかし、大和は、その形のないものを後世の日本人に残していた。
    この未曾有の巨艦を壮大な無駄だったという人がいる。
    しかし、今も誇りと希望をもたらすその存在は、壮大な無駄どころか、日本人にとって太平洋戦争の最も大きな遺産なのかもしれない。
    ---

    本書では、大和の誕生から水上特攻により沈むまでのその生涯が、当時の人々の証言による体験にもとづいて綴られています。美化することも、卑下することもなく、生々しい証言にもとづいて、当時の生々しい状況や当時の人々の思いを。

    電車の中・航空機の中・喫茶店・宿泊先のホテル・自宅・・・。私は本書を完結編とする一連の三部作を紐解いたあらゆる場所で、流れる涙を、こみ上げる嗚咽をとどめることができませんでした。

    同時に、「諸先輩が後生に託した想いを理解し、それを引き継ぎ、それに少しでも報いることができるように行動し、それを次世代に伝える。」ということを、一生をかけて取り組ませていただいきたいという思いが、確固たるものに変わっていくことを感じました。

    【本書 おわりに より抜粋】
    戦争にかぎらず、体験とは、時間の経過によって風化していくのが宿命である。歳月によって次第に物事の輪郭はぼやけ、やがては忘却に至るものだ。
    しかし、人間の思いは違う。たとえ「形」の輪郭がぼやけても、思いは生きつづける。
    そして後世の人間に必要なことは、先人のその思いをしっかりと受けとめ、それを語りついでいくことではないだろうか。
    ---

    特別なことではないはずです。今日の私の・この国の礎となっていただいた、とても身近な先人たちの思いなのだから。

    ---以下、第一部の読了時感想---
    三部作の第二部。第一部では空の特攻を中心に、この第二部では陸の玉砕を中心にその「戦史ではなく体験」と「記録ではなく証言」を描いた作品。

    第二部まで拝見させて戴き、生の証言に圧倒され、戦争の現場の表現しきれない凄惨さを垣間見ています。特に陸の凄惨さは言語に絶します。これら極限の状態で発揮される「愛国心」「ユーモア」「人間の情」「誇りと勇気」「人間のさが」「運命」・・・。

    私自身の言葉でこれらの体験・証言の感想を綴るのは難しいです。本書第九章「ソ連軍急襲「占守島」の激闘」で、北海道分割統治を「終戦後に」命をかけて防いだ体験・証言が記されています。その証言の一部をここに紹介させて戴き、感想にかえます。バトンを受け取り、次の世代へつなげる役割の一部を担うことを誓って。

    【帝国陸軍少尉 武蔵哲】
    (占守島について)私たちは終戦後に戦ったわけですから、無駄死にだったという人もたくさんいました。しかし、やはりあの戦いには意味があったということが最近わかってきて、ああ、俺たちが頑張った甲斐があったんだ、と思うようになりました。やはり今の平和というのは、あの時代に戦った人たちの犠牲の上にあることは間違いないと思います。今の平和自体が、戦友が無駄死にでなかったことの証明でもあると私は思うんですよ。死んでいった戦友たちに対する最大の慰霊とは、そういう事実を、子や、孫や、そういう世代に知ってもらい、その思いを引き継いでいってもらうことだと思うんですよ。

    ---以下、第一部の読了時感想---
    現代日本 ・現代に生きる我々の礎となり、あの戦争を自ら戦って頂いた先輩達が、我々後生の日本人に託した想いを正確に知りたい。そういう想いでこれまでも、それなりの数の書物を手に取らせて戴いてきました。本書は、それらの書とは少し違っていました。
    本書は著者自ら本書で著しているとおり、「末端の兵士たちの実際の体験や思い」に焦点をあて、「当時主力として戦った元兵士を日本全国に訪ね歩き、その痛烈なそれぞれの体験を忠実に再現したノンフィクション」です。
    著者の高い取材能力・事実と知識を区別するジャーナリストとしての誇り・質の高い文章力が「家族と祖国のために自らの命を捧げた若者たちに対する、後生の日本人としての尊敬と感謝を込めた鎮魂歌」とするに相応しい一冊を生み出しています。
    諸先輩が後生に託した想いを理解し、それを引き継ぎ、それに少しでも報いることができるように行動し、それを次世代に伝える。一生をかけて取り組むに相応しいテーマだと思います。
    本書は、この取り組みを具体的に助けてくれる良書です。

  • この三部作はどれも大変おもしろいし、もっと広く読まれるべき。寝食忘れて一気に読んでしまいます。各章の扉の写真がまた印象的で象徴的。

    第十四章「鎮魂の海」がなんだかもう、悲しくて悲しくて。

    艦としての「大和」はそこまで好きではないんですが、その中にあった乗員の諸々を思うと言葉もありません。

  • このシリーズは全部良かった。
    大和の書籍は何冊か読んだが、いろいろな方の証言が記録されていて、まとまっていた。
    何度、読んでも巨大戦艦大和を特攻に出したのは哀しい。

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著者プロフィール

作家、ジャーナリスト。1958年、高知県生まれ。中央大学法学部卒業後、新潮社入社。『週刊新潮』編集部記者、デスク、次長、副部長を経て2008年独立。『この命、義に捧ぐ─台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、後に角川文庫)で第19回山本七平賞受賞。主な著書に『死の淵を見た男─吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫)、『日本、遥かなり─エルトゥールルの「奇跡」と邦人救出の「迷走」』(PHP研究所)、『なぜ君は絶望と闘えたのか─本村洋の3300日』(新潮文庫)、『甲子園への遺言』(講談社文庫)、『汝、ふたつの故国に殉ず』(KADOKAWA)、『疫病2020』『新聞という病』(ともに産経新聞出版)、『新・階級闘争論』(ワック)など。

「2022年 『“安倍後”を襲う日本という病 マスコミと警察の劣化、極まれり!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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