ヒトリコ

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 635
感想 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093864176

作品紹介・あらすじ

小学館文庫小説賞松本清張賞W受賞の快挙!

深作日都子は小学5年生の時、教師から金魚を殺した濡れ衣を着せられ、熾烈ないじめの対象となった。そのときから日都子は、誰にも心を閉ざし、「みんな」には加わらない「ヒトリコ」として生きていく決心をする。
田舎の小学校の生徒達はそのまま中学校へ持ち上がる。ヒトリコの心の支えは、ピアノとピアノを教えてくれる偏屈なキューばあちゃんだけ。合唱の盛んな中学では生徒の間にカースト制度が生まれ、激しいいじめや陰口が横行する。「みんな」に属している限り生徒間の闘いは続く・・・。
地元の高校の入学式。小5で転校した冬希の姿がそこにあった。モンスターペアレントの母親との暮らしに疲れ切った冬希は、母親を棄て、父親の地元に戻ってきたのだった。何も変わらぬ故郷、仲間。ただ、一人だけ全く変わってしまった日都子の姿に冬希は驚く。そしてその原因が自分が飼い、置いてきた金魚と知り・・・。
誰もの心に突き刺さる、青春の残酷さ、閉塞感・・・・・・。絶望的な孤独の末に見えてくるうっすらとした光。必ず誰もの心の奥の奥に入り込み、内側からあなたの心を揺さぶる、苦くて新しい青春小説です。

【編集担当からのおすすめ情報】
全くの新人作家の方がほぼ同時期に2つの新人発掘の大賞を受賞することは、いまだかつてないことです。最終候補作に残っている、という連絡は奇しくも同じ日だったとのこと。2015年4月頭に第16回小学館文庫小説賞受賞決定、その直後に第22回松本清張賞も受賞。
これを記念して出版社の枠を飛び越え、二つの受賞作品をダブルデビュー作として刊行することになりました。この彗星のように現れた新しい才能のきらめきを、是非お確かめください。

感想・レビュー・書評

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  • なんかわかる…と思う部分も多く少し苦しくもなりながら展開が気になってあっという間に読み終えた。

    ほどほどに頑張る

    これが個人的には刺さった。

    この思春期の心が成長する過程で起こる
    家族、友達、恋愛のもどかしい感じがとてもリアルだった。

  • 『ヒトリコ』になる前の日都子と『ヒトリコ』になってからの日都子は、自分のことしか考えなかった子供から周りの人々を見ることが出来る少女へと変わった。
    それでも相手にズバリと痛いところを突いてしまうところが日都子なんだけど。
    嘉穂の方が正直で理解出来た。好感度は低いけれど。
    特に冬希、あんなエキセントリックな母親に育てられながらもこんな好少年によく成長してくれたなと感心。
    『ヒトリコ』の日都子、『ヒトリコ』にしてしまったきっかけの元同級生たち、それぞれの成長が苦く切なく爽やかに描いてあって、粗削りなもののインパクト大な良い作品だった。

  • 深作日都子は小学5年生の時、担任の女性教師から
    金魚を殺した濡れ衣を着せられ、クラスメイトから苛められるようになった。
    その時から、日都子はいつも一人で誰にも相手にされない。
    誰とも関わろうとしない。「ヒトリコ」として生きていく事を決意するー。
    時が経ち高校に進学した彼女達のもとに、いじめの原因となった
    金魚を置いて転校した冬希が戻って来るー。

    ヒステリックな教師の決めつけで、苛められ小学5年生で「ヒトリコ」として
    生きて行く決心をし、それを貫く日都子の強さや覚悟が凄い。
    あの年齢の女の子にとって、一人で居る事ってとっても辛い状況のはずなのに、
    辛さを感じさせない。背筋を真っ直ぐに伸ばし凛としている。
    でも平気なんかじゃなかった…。脆さも描かれてるのが良かった。
    中学の部活から逃れる為に習い始めたピアノ。
    ピアノの先生・キュー婆ちゃんが居て本当に良かった。
    そして、お母さんの理解も。
    担任のヒス柳には怒りしか湧かなかった。
    こんな人が先生で居て良いはずない。
    苛めた側の嘉穂の気持ちも丁寧に描かれている。
    ほんの少しのズレが大きく大きくなっていった…。
    嘉穂や智代や美香子…女の子の嫌な姿をこれでもかって位描いてる。
    こんな女の子達大っ嫌い!
    この年齢の頃にこんなに暗い感情に支配されていなかったなぁ…。
    そして、日都子が彼女達に投げつける言葉が的確でスカッとしました。

    冬希もモンスターペアレントの母親の存在に悩み
    窮屈な学校生活を送ってきていた。
    それなのに、母との繋がりを絶てずにいる。
    全く変化のない故郷で、一人だけ全く変わってしまった日都子の姿に驚き、
    自分の残した金魚が原因だと胸を痛める。
    「関わらなくてもいい人とは、関わらない」と、言い切る日都子の姿が眩しい。

    頑なに心を閉ざしてた日都子が、冬希のお蔭で
    他人と交流し、少しずつ少しずつ変わっていく様子は、
    これから先の日都子の未来を明るく感じさせてくれて
    心がじんわり温かくなりました。

    「もし金魚が死ななかったら、私は多分すごく嫌な奴になったと思う」
    こう言える日都子が素晴らしいって思ったし、印象的でした。

  • 2023年6月12日
    青春群像劇。
    担任の仕打ちが疑問。
    今どきそんな酷いことする教師がいるか?
    1人1人を見て認めるのが仕事だろうが。
    ヒトリコはそれを責めず、孤高に過ごす。
    いろいろな人の煩悩に気づいてもいる。
    雑事や悪評に頓着せずに知らぬ顔して淡々と。
    それは武装とも言える。
    同じような弱みを持った冬希が少しずつ近づいて心を開く。
    思春期の定まらない揺れ動く心が小さな出来事を甚大なものに変えてしまった。
    苦い経験を積んで大人になっていくのだろう。

  • 考えさせられました。
    たぶん、実体験なのかなって思わせるところが散りばめられていた感じがありました。
    私にも似たようなことをされたことがあるからな。
    自分がイヤな思いをしたくないから人と関わりたくなくなるんだよね。
    関わってなくても容姿とかで全然関わったことがない人が馬鹿にしてきたりするからね。
    仕返しをしたくてもできないし。。。

    つい最近、やられてイヤだったことを思い出した作品でした。

  • 学生時代の苦く苦しい時を思い出した。学生特有の劣等感と優越感、嫉妬、友達を失わない為に自分の気持ちよりも友達の意見を優先する気持ちがありありと目に浮かんだ。
    でも、読んだ後不思議な高揚感に包まれた。
    一人でいる人には、本人だけが知っている理由があって、他人が揶揄ったり馬鹿にするのは良くないと改めて感じた。
    主人公が最後、自分が一人になるきっかけとなった出来事を肯定し、あの出来事があったから、人を嘲笑ったり馬鹿にしたりせずに済んだと前向きに捉える所が良かった。

  •  「ヒトリコ」日都子は読み終わって、凄く強い女の子だったんだと、実感しました。
     普通だったら、金魚を殺した犯人にされた時点で、登校拒否か自殺していると思う。
    それを、『関わらなくてもいい人とは、関わらない』と完璧に割り切って、学校生活を送っていく。
     それには、キュー婆ちゃんの存在がとっても大きかったのもある。
     キュー婆ちゃんに教わったピアノが心の支えとなって、冬希君が戻ってきたことも重なり、日都子の周りが元に戻っていく希望の見えるラストも良かった。
     日都子をいじめている、友達だった嘉穂にも彼女の中のコンプレックスと嫉妬があり、冬希にも母親という大きな存在を消してしまいたいくらい酷い干渉があった。
     みんないろいろな悩みを抱えて生きている。
    自分もいろいろな悩みがあるけど、前を向いて生きて行きたいと思う。

  • 誰かと深く関わっていくのって難しくて、浅く広く関わりがちですよね。


    思春期に、「関わらなくてもいい人とは関わらない」というスタンスで過ごす日都子はとても勇気があって強いと思う。

    そんな日都子の「関わってもいい人」になろうとする、キュー婆ちゃん、冬希くん、堀越くんたちを通じて変わっていく、日都子の心の動きがとても切なかったです。

  • 理不尽で、ほんとに理不尽で、でも人間ってそう。嫉妬するし、贔屓するし、みっともない。「みんな」の中で清々しいほどに凛としたヒトリコはかっこいい。そして何より、各々影を抱えた登場人物全員がちゃんと人間だった。血が通っていた。ああ、青春だなあ。ほろ苦い。でも、ちゃんと道筋は照らされた。すきです。

  • ああ、小説ってこういうのだったよね。エンタメやミステリー、SFにラノベと乱読しているしもちろんそれらは面白いのだけど、こういう純文学に通じる作品を読むと、ホームに帰ってきた安心感がある。重厚さにこそ欠けるが丁寧な表現で、きっちり心を抉ってくる。キャラ性や展開や構成に目新しさはないが、茨城の集落の情景や、小さいコミュニティにおける心象を、これまた丁寧に(あえて言うなら丁寧過ぎる程に)書いていて、誰もが少年少女時代に抱えた心の痣を、どの立場かはそれぞれだが思い浮かべるかもしれない。記憶を掘り起こされる一作。

    余談だけど。筆者はワシの大学の、同じ文芸学科で、卒業間もないらしい(から、会ったことはもちろんないけど)。そう、ワシの同期もそうだけど、やはり学年に何人かはこのクオリティで書ける人がいるんだよな……そこから大成するかには運も絡んでくるけど。引き続き、勝手に応援したい作家さん。

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著者プロフィール

1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部卒業。2015年、「ウインドノーツ」(刊行時に『屋上のウインドノーツ』と改題)で第22回松本清張賞、同年、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞する。著書に、『ラベンダーとソプラノ』『モノクロの夏に帰る』『弊社は買収されました!』『世界の美しさを思い知れ』『風は山から吹いている』『沖晴くんの涙を殺して』、「タスキメシ」シリーズなど。

「2023年 『転職の魔王様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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