- Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093864176
感想・レビュー・書評
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TSUTAYAの単行本コーナーで見かけて、『ヒトリコ』→『屋上のウインドノーツ』の順に読了しました。
作者の二本立てのデビュー作はいずれも霞ヶ浦を望む地方の高校が舞台。『ヒトリコ』の主人公はピアノ教室に通い、『ウィンドノーツ』の主人公は吹奏楽部で活動するということで音楽つながりもあります。いずれも学校生活や友人関係のなかで他人からも自分自身からも疎外されてしまった主人公の感情的な再生とか社会的な再統合とかの物語で、さらっと読めます。
中高生の学校生活というのは現代小説の主題としてありふれているけれど、視界いっぱい畑と田んぼが広がっていたり朝靄の先に湖を望むなんて地理(?)は舞台としてめずらしい気がします。2つの物語の主題となる高校生の主人公たちの友人関係やその葛藤の根源がいずれも幼稚園や小学校のころからの因縁であるのも、そういう地方都市周辺の農業地帯のやや流動性の低い社会を背景にしているからこそなのかなとも。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
担任に金魚殺しの濡れ衣を着せられ、孤立しヒトリコになってしまった日都子。手のひらを返すかのようにヒトリコを無視する友人たち。そのどちらの気持ちも丁寧に描かれている。「関わらなくてもいい人とは関わらない」と言い切る凛とした強さが悲しい。怪獣のバラードが似合う前向きなラストだった。
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小学5年の時に担任の生成から濡れ衣を着せられひどく叱責され、そして仲良しだった友だちにも裏切られ、ひどいいじめを受けた日都子は、"みんな"に加わることをやめ、ヒトリコとして過ごすことを決めた。
彼女の支えはピアノとピアノを教えてくれるキュー婆ちゃん。
語り手が入れ替わりながら話が進んでいく。
思春期の子供達の葛藤や閉塞感に胸がギュっと掴まれるよう。
日都子がいじめにあっても強く居られたのは、殆ど描写されてはいないけど、自立した母娘の健全な関係があったからかもしれないと、ふと思う。
途中、誰のせりふか分からない部分があったり、少し迷子になりつつも、全体として伝わってくるものがある作品だと感じた。
合唱と怪獣のバラードのテーマが上手く作用してる。
背筋をピンと伸ばして凛とピアノを弾く日都子の姿、ピアノを弾きながら歌う彼女の澄んだ声が目の前に浮かんでくる。 -
小学館文庫小説賞
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怪獣のバラード。懐かしくて涙でそう。
合唱曲になっていたんだねぇ。
ステージ101の中の名曲だった。当時あの番組を見ていた人がほとんどいなくて、独りだけ見つけたときには意気投合したっけか。それは、中学時代。なんか色々、かぶるのであった。 -
飼育係の日都子は、世話が嫌だから金魚を殺したのだと担任に決めつけられてから、クラスでハブられてヒトリコと言われるようになった。
心を閉ざした日都子は、中学で部活に入らないでいいようにピアノ教室に通うことにした。
そこは不愛想なキュー婆さんの教える教室で、婆さんは日都子が家族以外でただ一人、心を許せる人になった。
ヒトリコとして高校生になった日都子の前に、金魚事件の原因を作った海老澤冬希が4年ぶりに現れた。 -
これぞ青春小説。最初はちょっぴり痛くて切ないけど、読み終わると心はほっこりします。こういう子供達こそがフィクションでの中学生/高校生なんじゃ無いかと俺は思います。宮部みゆき氏にも読んでいただきたい(笑
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おぉ、ヒトリコ、なんて悲しいんだろう。
小中学生って、なんでこんなに残酷なんだ。
でも、ヒトって、なんでこんなに強いんだ?
生きる強さが素晴らしい。
本屋大賞ノミネートして欲しいくらいの大作でした! -
小学生時代に金魚殺しの濡れ衣を着せられ、助けてくれると思っていた友人にも裏切られた経験を持つ日都子。その日からあえて人と関わらない「ヒトリコ」になることを決めた。小学校~高校までお話は日都子や、その周辺の人たちによって語られていく。人と関わらないのは自分が傷つくのが怖いからーでも人が成長するには人との関わりは避けられない。のよ。
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「金魚事件」でクラスで孤立し、<ヒトリコ>となってしまった日都子の再生への物語。
金魚事件もそうだけど、三年生の合唱練習や冬希の母親の話など、なかなか胸が痛む話が続いて辛かったけれど、温かみのある丁寧な文章が良くじっくり読むことができました。
「怪獣のバラード」が何度か出てきて、どんな歌だろうとyoutubeで探して聞いてみた。
いい歌だなあー。