水辺のブッダ

  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093865418

作品紹介・あらすじ

ベストセラー『あん』著者新時代の感動長篇

多摩川の河川敷で、仲間のホームレスたちと共に生活する望太。一度は死を選びながらも、彼らに救われ、やるせない思いを抱えながら生きている。
そこからさほど遠くない街で、女子高生の絵里は、世の中に対する怒りとむなしさを抱えて暮らしていた。家族の中での疎外感に耐えられなくなったころ、ある男と出会い、事件に巻き込まれてしまう。
そしてふたりの過去が次第に明かされてゆく・・・。

誰の人生にも、冷酷な人間の心の闇に触れて絶望するときがあれば、人と出会い、深く語り通じ合い、光に満ちた美しい瞬間もある。

世の中の片隅で懸命に生きる人々の傍らに立つドリアン助川が描く、ふたりの”生きる”物語。

河瀬直美監督、樹木希林・永瀬正敏主演で映画化もされ、世界12言語で翻訳出版され国内外でベストセラーとなっている『あん』の著者の、新時代最初の感動長篇!

感想・レビュー・書評

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  • 『あん』を、ただのいい話として描かなかったドリアンさんだな、と、しみじみ。
    川辺に段ボールやシートで作った家に住み、空き缶を拾いお金に換える。そういう暮らしをしている人たち、ひとりひとりにその暮らしを続けざるを得ない理由がある。それぞれに理由があり、それぞれに人生の物語がある。

    自分を抑えきれずに人を殺めてしまった一人の男。娘のために、と離婚し希望のない生活を続ける。ただ一つだけの望みは娘の幸せ。なのに娘もまた家族に恵まれず、絶望の中で生きていた。こんなことって…
    大都会東京。普通で考えたら重なるはずもない二つの命の線が偶然と奇跡によって交わる。
    だけど、それを過度に美化しない。美化しないことで終わらない物語となる。
    これは、きっと、日本中の、あらゆるところでありえる話、なのだろう。

  • 小学館の月刊本の窓2016年7月号〜2018年6月号に掲載されたものを2019年5月小学館から刊刊。ラストで表紙の孔雀を抱いた女性に繋がりました。良かった良かった。

  • テレフォン人生相談のドリアンさんが、書かれた小説。あの優しい声の感じが本当に伝わってくるような本でした。

  •  多摩川の河川敷に住むホームレスたち(主人公は新入りの望太)の物語と,単位制高校2年生の絵里との物語が並行して進んでいく。もちろん,最終的にはどこかで接点はあるという設定。
     随所に出てくるホームレスの古株ブンさんの言葉が,なぜかわたしの心に染み入る。どん底ともいえる状態の中で生きている意味とは何なのか。彼らの未来とは何か。今この時間とは何か。ドリアン助川の心の言葉が,この古株の言葉を通してわたしに迫ってくる。
     そして,やっぱり,ドリアン助川の目は温かい。人生に失敗した(と思っている人)も,普通に歩いているサラリーマンも,同じように生きていくべきであるし,未来はある。望太の結末と絵里の結末は,形は違えども,向かった先は同じだったと思う。

  • 重くて、最後まで暗い。
    ホームレスになった父と、
    家族に蔑ろにされ、どんどん道を踏み外す娘。
    どこかで救われてほしかったけど、悪循環は断ち切れず。
    どんより。

  • 主人公の望太は社内で起きた窃盗の罪を自分に被せようとした同僚を殺してしまい、6年間服役した。退所後も定職につかず、今はホームレスとして暮らしている。離婚した妻は娘の絵里を連れて再婚。しかし娘には父親の名さえ教えず、死んだことにしている。そして絵里は新しい家族の中でネグレクトされている。近くで生活しながらお互いに知らないこの親娘を交互に描きながら物語は進みます。
    河に身を投げ自殺しかけた望太を救ったホームレスの指導者や仲間、どこか仙人めいたホームレスの老人・ブンさん、性依存症の女性、ホームレスを襲撃する若い男、望太が暮らす多摩川の流れのそばには様々な傷を持った人物が登場します。
    そして家を出た絵里は典型的なDV男と同棲し、やがて知らずに望太に接近します。
    ブンさん(=水辺のブッダ)のスピリチュアルな言葉もなかなか面白い。さらにそれとの関係は曖昧ですが、エンディングで望太と絵里がつながる様に得る前向きな悟りはとても心地良く。
    この手の話にありがちな押しつけがましさの少く、良い話でした。

  • 読後感がスッキリ!という作品ではない。
    この作品から得たものを、自分で抱え込んで、考え続けていくんだろうなと思う、そんな本だった。

    やむを得ない事由から人を殺めた男は、殺人犯の子という誹りを我が子に与えないためという理由で、妻と子を捨てる。
    服役し、ホームレスとなった男は、その暮らす河原で師とも思える男と出会う。
    ホームレス生活の中で、男は人生と向き合い直すことをことを考え始める.....

    そして、あとは読者が考え続けていくことなのだろう。

  • こういう題材を取り上げてよくある号泣ものに仕上げてない。別ジャンルで知名度のある著者だからそういう安易な物語に妥協しないところを信頼する。地味だけどいい本。

  • 過ち犯しててしまった父と孤独になった娘の物語。

    殺人で服役し、出所して最終的に多摩川にたどり着いた望太は、多摩川のホームレスのカリスマ的存在・ブンさんに出会う。

    ブンさんの生きる姿に魅了されながら、娘の姿を追う望太。

    娘の絵里は、継父との折り合いが付かず、道を外れ、DVに耐えながら、体を張って生きていた。

    そんな二人が多摩川の近辺で奇跡の再会を果たそうとするが。。。


    抽象的な表現が過多で、イメージを今ひとつ掴めにくかったのと、ブンさんのキャラが確立してなかったのが惜しいところかな。

  • 人生捨てたもんじゃないと思えるような物語ではないのに、優しい気持ちになる。
    今回は婉曲的でなく、ブンさんに語らせ、望太が体現するストレートな表現だった。

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著者プロフィール

ドリアン助川 訳
1962年東京生まれ。
明治学院大学国際学部教授。作家・歌手。
早稲田大学第一文学部東洋哲学科卒。
放送作家・海外取材記者を経て、1990年バンド「叫ぶ詩人の会」を結成。ラジオ深夜放送のパーソナリティとしても活躍。担当したニッポン放送系列『正義のラジオ・ジャンベルジャン』が放送文化基金賞を受賞。同バンド解散後、2000年からニューヨークに3年間滞在し、日米混成バンドでライブを繰り広げる。帰国後は明川哲也の第二筆名も交え、本格的に執筆を開始。著書多数。小説『あん』は河瀬直美監督により映画化され、2015年カンヌ国際映画祭のオープニングフィルムとなる。また小説そのものもフランス、イギリス、ドイツ、イタリアなど22言語に翻訳されている。2017年、小説『あん』がフランスの「DOMITYS文学賞」と「読者による文庫本大賞(Le Prix des Lecteurs du Livre du Poche)の二冠を得る。2019年、『線量計と奥の細道』が「日本エッセイスト・クラブ賞」を受賞。翻訳絵本に『みんなに やさしく』、『きみが いないと』(いずれもイマジネイション・プラス刊)がある。

「2023年 『こえていける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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