- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784093965200
作品紹介・あらすじ
突然の余命宣告。絶望の中でやがて彼は「命の始末」と向き合い始める。その臨終までの道程はとことん前向きで限りなく切なく愛しい。これは41歳で急逝した売れっ子流通ジャーナリストの見事な死の記録である。
感想・レビュー・書評
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在りし日の弾ける笑顔
を未だに覚えています。
最後の力を振り絞って
思いのたけを一字一句、
苦しく息をつきながら
書き遺している様子が
目に浮かび胸が詰まり
ました。
病を得て足るを知ると
言いますが、
生きているだけで幸せ
とまでは思えなくても、
健康であることや家族
に心配事がないことに、
満足することを知ろう
と気付かせてくれます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
41歳の若さで亡くなった流通ジャーナリスト金子哲雄さん。
彼が最後の最後まで文字通り命をかけて綴った本書。
ただただ圧倒された。
彼の生き様、死様、あっぱれとしか言いようがない。
肺カルチノイドと言う耳慣れない病気に罹った金子さん。
日本でもほとんど症例もなく、有名な大学病院ですら診療を拒否したと綴られている。
別名「がんもどき」とも呼ばれるそうで、癌に似ているが癌とは違う肺カルチノイド。
この名前を少しでも多くの人に知ってもらい、今後の研究に役立ててほしいとの思いから、医師と相談して死亡診断書に「肺カルチノイド」と記載することを望んだそうである。
金子さんの望み通り日本中の多くの人が彼の死によってこの病名を知ることになった。
これだけもすごいことである。
その他にも生前から自分のお墓を決める、戒名を決める、葬儀業者を決める、会葬御礼を書く、その彼の最後の最後まで自分をプロデュースし続けた姿には見習うべき点も多い。
単世帯が増え続け、地域コミュニティが崩壊しつつある昨今において、自分の死後をどうするのか考える事は決して人ごとではない。
私も人生折り返し。
準備する事に早すぎる事はないだろう。
それにしても金子さんの奥様のあとがきは涙なしに読めなかった。
金子さんが執筆している文章にも当然奥様への愛がいたるところに見受けられるのだが、このあとがきを読むと奥様の金子さんへの思いがひしひし伝わってきてたまらなかった。
素敵な夫婦だなと思った。
奥様あってこその金子さんなのだなと。
「僕が死んでも絶対に守るから」と言い残して去って行った金子さん。
亡くなってもずっと金子さんはそばにいると言う奥様。
こんな夫婦になりたいなと心から思った、一瞬。
夫の姿を見るとすぐに忘れちゃうだろうけど(笑) -
命あるもの、必ず死は訪れます。
あらゆる価値観、定義が益々不透明になっている現代においても、(また、未来永劫)これだけは普遍性を保っていると言えるでしょう。
だからこそ我々は懸命に生きることが出来るし、喜怒哀楽を味わえるのだと思います。
本書『僕の死に方』の著者である「金子哲雄」さんのことは、テレビで拝見して、今までに見たことのないようなジャーナリストだなと思っていましたが、41歳の若さで亡くなられていたのは知りませんでした。
本書を読もうと思ったのは、ブクログの感想欄を拝見したのが切っ掛けです。新刊で購入できなかったので、ブックオフで手に入れました。
さて、本書の内容ですが、金子さんの生き方に対する矜持を最期まで貫いたことに、何よりも感服いたしました。
その生き方の矜持には、奥様をはじめ自分が愛する人々、公私共にお世話になった方々への感謝を忘れない、迷惑を掛けないという点をあの世に逝った後のことまで考えて行動されたということも含まれています。
私にもいつか必ず訪れるのですが、なかなか出来る事ではありませんね。
本書には、いくつもの紹介したい場面・文章がありますが、最も心を振るわせられたのは、奥様の「あとがき」に出てくる金子さんの臨終の場面・文章です。
この文章は、いわゆる並みの作家では書けないのではと思うほどでした。
あの世に向かっているんだな。
そのことがはっきりとわかりました。
・・・
そのうちに、いつものような寝息に近い状態になりました。静かな静かな寝息です。すーっと吸っては止まる。すーっと吐いては止まる。その繰り返しです。
そのリズムが、だんだんとゆっくりになり、そして止まりました。
最後の呼吸が止まった瞬間に、金子の体が物体になったのがわかりました。
金子の体はここにあるけれど、でも、金子がここにはいないことは、よくわかりました。
「ありがとう。お疲れさま」
最後に、(金子さんが眠る)東京タワーに立ち寄る機会がありましたら、稀代の流通ジャーナリストの在りし日の姿と本書のことを思い出し、手を合わせたいと思います。 -
著者のことよくわからず 読み始めました。
40歳と言えば 仕事もノリに乗ってる頃でしょう。
それなのに 病気で死を宣言されてしまって でも最後まで仕事をキッチリこなして さらには プライベートの奥様などの負担軽減の為の諸々をこなしていった著者は 凄いですね。
自分はこのように 冷静にできないと思いますが 悔いのない生き方をしたいと思いました。 -
昨年、突然の訃報に心底びっくりしたのはまだ記憶に新しい。
さらに、その後まもなく本書が発刊されてさらに驚いた。
病気を隠して仕事をつづけつつ、こんなものまで用意していたのか…。
余命わずかの闘病記として読むには、ショックで泣き続けた、との描写はあっても、あまり悲愴感は感じられない。ひたすらに、どうすれば自分がお世話になった人に迷惑をかけずに仕事を続けられるか、感謝を返せるか、そのことに心血が注がれている。
信じられないほど前向きで、常に周囲の人に喜んでもらうことを第一に考え、自分にできることを全うしようと、本当に今際の際まで仕事を続けた金子氏と、それを全身全霊で支え続けた奥様。
お二人にただただ敬服するしかない。
奥様の綴るあとがきは涙なしでは読めない。
深い愛情にあふれたご夫婦だったんだな…。
悔いなく生きるとは。心残りなく死ぬとは。
終末期医療の在り方まで考えさせられる、深い一冊です。 -
死について知りたくて読書。
実は著者の映像はあまり見たことがない。亡くなってから初めて知ったに等しい程度だった。
人は目前に迫り来る死とここまで対峙できるのか。自分の抱えている悩みなんて小さなと思い知らされた。本人が死の直前まで書き残し、最期は奥さんがあとがきとして書き添えている。このあとがきで機内号泣。すごい人、すごい夫婦だ。
亡くなる直前までの膨大な仕事量。もし、仕事量を減らしていたら、延命したのだろうか。いや、むしろ、著者の場合は、逆だったかもしれない。
幼少期から流通ジャーナリストになるまでの過程。奥さんのこと。仕事たにする思いも綴られている。
肺カルチノイドという名称をもっと知ってしまうために死亡診断書に書いてもらうように生前に依頼していたなんてきっと自分にはできない。
がん治療の現実や大学病院の話は衝撃を受ける。1999年に恩師を肺がんで亡くしたことを思い出す。
自身の命が燃え尽きようとしているのに周りの感謝の言葉があふれる。そんな素敵な本当に惜しい人を亡くしたと思う。著者が死がしっかりと生かされることを願うばかりだ。
読書時間:約1時間30分 -
突然重篤な病を宣告され、死の淵に立たされたとしても、
たとえ1%でも命を繋ぐ希望が残されていたら、
どんなことをしてもそれに賭けてみようと思うだろう。
蜘蛛の糸のような希望でもそれに縋り、生きる糧にするだろう。
でももしも、1%の希望さえないとしたら...。
金子さんはその暗闇の中を、仕事を唯一の糧に限られた命を生き抜いた。
それは生き地獄だっただろう。
しかし仕事を通して人を喜ばせたいという、
利他の念が生きる勇気を与えてくれたんだろう。
「肺カロチノイド」という特殊な病を、少しでも多くの人に知ってもらい、
治療法の確立に役立てたいとの思いもあり、この本を執筆されたそうだ。
最後は赤ちゃんのような顔になっていたとのこと。
苦しむことなく、眠るように逝かれたこと、それだけが救いだった。
貴重な体験を遺して下さったこの本は、
現在闘病中の方をはじめ、多くの人の支えになると確信します。