黄金旅風〔小学館文庫〕 (小学館文庫 い 25-5)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094033151

感想・レビュー・書評

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  • 少し詰め込み過ぎかな、という印象。
    江戸時代初期、第二代将軍秀忠から第三代家光へ権力が移行する時代の徳川直轄領 長崎を舞台とした物語。海外貿易で富を築いてきた代官 末次家のあとを継いだ平左衛門が、長崎奉行として横暴の限りをつくす竹中を失脚に追い込む 胸のすく勧善懲悪の物語が芯となるが、火消しの親方で平左衛門の幼馴染 才助や末次家の船大将 彌兵衛、蠟型鋳物師などの挿話が盛り込まれている。
    あの時代の長崎の様子が興味深い。これ程海外と貿易をしていたなんて知らなかったし、利権を巡って様々な国が入り乱れて小競り合いをしていたなんて、驚きだった。先に読んだ「出星前夜」との対比も面白かった。
    ただ、一つ一つの挿話をもう少し整理した方が読みやすいのではないかと思った。船大将の話や鋳物師の話は、それだけで独立した短編・中編として成立すると思う。鋳物師がその後どうなったのかも気になった(あのまま果てたのか、果てるとき彼は何を思ったのか…)。

    踏み潰されても逞しく生きる市井の人々の姿や心の勁さに、感銘を受けた。

  • (欲しい!/文庫)

  • 江戸時代の長崎が舞台。

    オランダやポルトガルとの交易状況や
    江戸時代の権力構造がよく分かる。

    船大将“弥兵衛”
    火消組“才介”
    長崎代官“平左衛門”

    魅力的に描かれている。

  • 家光の頃の長崎の地侍の奮闘を描いた物語。父親が暗殺されて、跡を継いだ主人公が、キリシタンを違法に迫害し、違法に蓄財に励み、違法にルソン遠征を試みようとする主人公にとどまらず、いろいろな登場人物から様々な視点で描かれたスケールの大きな物語。主人公の平左衛門が常に正しく、間違っておらず、常勝というのが気になったが、それでも楽しく読了できた。

  • NHKの大河ドラマになりそうな感じの大スケールなお話。

    江戸時代の海外貿易都市・長崎が舞台の小説。
    佐世保にいたこともあって、なんとなくイメージ的に掴みやすかったし、「あの地で昔はこんなことがあったのか~」となんとなく感慨ふけりながら読みました。

    長崎が、オランダやポルトガルと親交があったのは知ってたけど、
    こんなにも海外との貿易がさかんな街だとは思ってもみなかった。
    そして、その背景には切支丹弾圧という悲しい過去もあって、他の日本と比べると、まるで異国のような感じさえしたわ。

    今も昔も同じで、外交の駆け引きや賄賂などいつの時代も何百年経っても変わらないのね~。ってある意味笑える。
    でも、末次平左衛門の正義感、格好いい!!
    かなり、惚れるキャラだね~。
    で、平左衛門と仲よかった平尾才介。早くに死んじゃって残念。彼はかなりタイプだったのに惜しいわ~。

    この本は、色恋沙汰など全く出てこないんだけど、とても読みやすい内容の濃い歴史小説でした。
    年末に相応しい本を読んで、なんの邪気もなく年が越せそうです。

  • 才介とともに神学校のいんちき牧師に「オイタ」をする若き日の「やんちゃな」平左衛門。そのころと変わらぬ無骨な正義感で人種に関係なく長崎に住むひとの生活を第一と考ええ、グローバルな地政学的観点で行動する外交・政治感覚を持つ長崎奉行としての平左衛門(二代目平蔵)。この主人公を軸に様々な人物が登場し絡み合う。この登場人物の多さを壮大とみるか、苦痛とみるかは意見の分かれるところか。自分にとっては少し苦痛だった。外堀を埋めながら竹中重蔵を追い詰めてゆくものの成就までいかず歯がゆさが残った。

  • う〜ん、もっとエンターテイメントに徹したストーリーでもよかったのでは?。

  •  先に読んだ『天地明察』のライトな感じにいささか不完全燃焼な感じを覚え、私としては珍しく続けて歴史モノをチョイス。高校日本史Bの教科書に名前が載っていた末次平蔵の息子・平左衛門(二代目末次平蔵)が主人公。
     もはや小説なのか歴史書なのか、どこまでがフィクションでどこからが史実なのかわからんほどに書き込まれていて、しかも次々新しい人名が登場するため、一見不親切で難解に見える。けれど、重要な部分は繰り返し筆を費やしているため、いつの間にか気にならなくなってくる。さすが信頼の飯嶋和一クオリティ。
     ついつい歴史的考察の深さにばかり目が行ってしまうけど、作者が創作したエピソードもすごく面白い。了介のもとに持ち込まれた連続失踪事件とか、真三郎の作る童の銅像の話とか。

     非常に魅力的な人物が二人も死んでしまうので、そのたびに口が開いてしまった。そのうち後者のエピソードが、さほど本筋と絡んでこないのが少し残念ではあったが、竹中重義の悪政を描出するために彼は犠牲に供されたということなのだろう。アーメン。。。

     この作品と『出星前夜』が繋がってるらしいので、そっちもぜひ読みたいです。

  • だめだ
    入り込めなかった

  • 再読。やっぱりいいです。好きです、平左衛門。淡々と事実を重ねていく文体なのに、熱さがにじみ出てきます。平左衛門の周りに魅力的な人が多くて、それもまた楽しいところ。かなり視点が平左衛門有利に寄っていて、勧善懲悪な印象はあります。最後、平左衛門は誰と話したのでしょうね。

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著者プロフィール

小説家。1952年山形県生まれ。1983年「プロミスト・ランド」で小説現代新人賞を受賞しデビュー。88年「汝ふたたび故郷へ帰れず」で文藝賞受賞。(上記の二作は小学館文庫版『汝ふたたび故郷へ帰れず』に収録)2008年に刊行した単行本『出星前夜』は、同年のキノベス1位と、第35回大佛次郎賞を受賞している。この他、94年『雷電本紀』、97年『神無き月十番目の夜』、2000年『始祖鳥記』、04年『黄金旅風』(いずれも小学館文庫)がある。寡作で知られるが、傑作揃いの作家として評価はきわめて高い。

「2013年 『STORY BOX 44』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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