てらこや青義堂 師匠、走る (小学館文庫 Jい 3-1)

著者 :
  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094071825

作品紹介・あらすじ

格別の思いがこもる、作家今村翔吾の原点! 明和七年、太平の世となって久しい江戸・日本橋で寺子屋の師匠をつとめる坂入十蔵は、かつては凄腕と怖れられた公儀の隠密だった。 学問は苦手ながら剣術に秀でた才を持つ下級武士の息子・鉄之助、浪費癖のある呉服問屋の息子・吉太郎、極度のあがり症ながら手先の器用な大工の息子・源也など、さまざまな個性の筆子たちに寄りそう日々を送っていたが、藩の派閥争いに巻き込まれた筆子の一人、加賀藩士の娘・千織を助ける際、元忍びという自身の素性を明かすことになる。 年が明け、筆子たちのお伊勢参りに同道する十蔵の元に、将軍暗殺を企図する忍びの一団「宵闇」が公儀隠密をも狙っているという報せが届く。十蔵は、離縁していた妻・睦月の身にも危険が及ぶことを知って妻の里へ向かった。 哀しみに満ちた妻との出会いと別れ、筆子たちとの絆の美しさ、そして手に汗握る結末――「本書は無冠だが、無冠の傑作として永く文学史に残るであろう」そう文芸評論家・縄田一男氏が絶賛し、作家自身が「最も自分自身を剥き出しにして書いたかもしれない」と語った、今村翔吾の原点ともいえる青春時代小説の傑作!

感想・レビュー・書評

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  • 疾走する如く読み切ってしまいました。色々と思考を巡らせることなく、今村さんが描かれているストーリーをそのままを読んで楽しめる。ワクワク、ハラハラ、ドキドキするのだけれど、決して期待が裏切られることがない。安心?して読み進められる感覚がとてもよかった。

    江戸時代中期、田沼意次が老中となっていた頃の時世を背景に公儀隠密、侍、忍者といった武士階級。農民、商人、大工といった市政の人々が大活躍する大冒険活劇、といった作品。

    元隠密であった寺子屋の師匠と筆子たちの師弟愛や夫婦愛を中心に据えてストーリーが展開されます。喜怒哀楽の様々な要素が組み込まれており、読むスピードを抑えることが難しかった。

    今村さんの時代小説は作品ごとに異なる時世を背景にしつつも、人間の感情を巧みに操りながら心を揺さぶるような作品が多いと思っています。ただ、この作品は特にスピード感が半端ではありませんでした。

    面白かったです。

  • 子供たちも睦月も可愛い。先生羨ましい…

  • 寺子屋の師匠になった凄腕の元公儀隠密の坂入十蔵と個性豊かな筆子たち。
    互いを思い合う人情が交錯し、手練れの忍びたちも絡むワクワクハラハラ展開がおもしろくない筈がない。
    「いかなる子であろうとも見捨てはしない」の誓いの元、十蔵が教え子のために走り寄り添う気持ちを問題児たちがなんだかんだで受け止めていて胸熱。
    命を奪ってきた暗い過去や大切な者たちを奪われた凄惨な過去…それぞれ苦しみを背負う忍びたちもまた魅力だった。
    十蔵と対しながら、心を通わせた筆子の窮地に颯爽と現れるニヒルで絢爛な火遁使い、鬼火の禅助が印象に残る。

  • これはよかった本当によかった。わたし的には文句なしの星5つ。江戸、忍び、子どもたち、教育、守りたいもの等々、わたしの好みのトピックが勢揃い。火喰鳥のシリーズより面白かった。もっともっと高く評価されてほしい!!

  • 物騒な場面は多いが心温まるお話

  •  今村翔吾の手になる世話物。史実を下敷きにした歴史ものだけでなく、こういう世話物もうまいのは火喰鳥シリーズなどで実証済みだ。と思って読んでみたが、ちょっと想像と違った。屈指の隠密だったという前歴をもつ手習い所の師匠十蔵と、にぎやかな筆子たちの日常風景という体裁ではじまる連作短編だが、章が進むにつれ、公儀隠密と忍びの者との暗闘が主題となり、最後は筆子たちが巻き込まれての大闘争で幕となる。筆子たちの設定や造型はさすがにうまいし、それぞれのシーンも十分面白いのだが、全体的に整理されていないというか、ドタバタして腰が据わってない印象がある。デビュー当座の若書きというせいかもしれない。子どもたちを手練れの忍者に向かわせるクライマックスはさすがに無理がありすぎるが、小難しいこと言わないで活劇だと思って読めばいいのかな。確かに劇画向きだ。

  • 最後は一気読み。
    今村翔吾さんが書く物語は読み進めたい気持ちに
    読み進める速度が追い付かない。
    圧倒的に強い者同士の闘いや、登場人物の安否など先が気になって仕方ないからなのか…。

    舞台は、寺子屋。そこに通う四人の子供たちと師匠のお話。子供たちは個性豊かで起こす問題もてんでばらばら。でも、その中には必ず人への想いが描かれていて心に沁みる。そして師匠は凄腕隠密を訳あって引退した身。
    子供たちの問題と向き合いながら、時には駆けずり回りながら自分の過去や現在の想い、そしてこれからに想いを馳せる。
    印象に残った言葉はいくつかあるけどその中でも
    「これからも迷いながら生きとうございます」という台詞が刺さった。
    綺麗事じゃないけど前向きな言葉で素敵だと思った。

  • 今村先生らしく胸熱でドキドキワクワクのおもしろい作品でした。
    寺子屋を舞台に、子どもたちと元忍びの先生との痛快エンタメ。
    特に夫婦の絆は素敵に描かれてます。
    ぼろ鳶組で出てるくるワードもちらほらで、テンション上がりました(笑)

  •  今村氏らしい、疾走感全開の江戸青春小説。
     前半は4人の筆子の紹介も兼ねた事件。ここは展開は緩やかで面白いが勢いがつかない感じ。その中でも今回の黒幕・源之丞や三雲禅助が登場し大きな事件を予感させる。後半の伊勢詣の道中、事件が起きる。十蔵は捕らえられ、筆子たちが奮闘する。
     ツッコミどころは多いが、後半は一気に読んでしまう点が流石。襤褸鳶シリーズのように様々な特徴の忍びが出てるが、印象的な者は少なく、その点はこの設定の限界かもしれない。
     江戸物の青春小説というと、宮本昌孝『藩校早春賦』が想起され、それには及ばないけれど、武家だけでなく商家や大工の子らが活躍する点に新しさと広がりを感じた。

  • 手に汗握る面白さでした。
    まさか、忍者の戦いの話とは思いませんでしたが、壮絶なバトルの描写は、臨場感たっぷりでした。
    最近の小説は、スッキリしない結末が多くて、それはそれでリアリティがありますが、今村さんの小説は、読了後がスッキリ!します。
    続編を期待します。

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著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。’18年『童の神』が第160回直木賞候補に。’20年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。同年『じんかん』が第163回直木賞候補に。’21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第六回吉川英治文庫賞を受賞。22年『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞。他の著書に、「イクサガミ」シリーズ、「くらまし屋稼業」シリーズ、『ひゃっか! 全国高校生花いけバトル』『てらこや青義堂 師匠、走る』『幸村を討て』『蹴れ、彦五郎』『湖上の空』『茜唄』(上・下)などがある。

「2023年 『イクサガミ 地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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