懲役病棟 (小学館文庫 か 46-3)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094072600

感想・レビュー・書評

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  • シリーズ3作目。
    1.2作目ではいい脇役として登場活躍していた、
    香織先生と看護師マリ江さんが、女子刑務所に赴かねばならないという設定で語られるようになったストーリー。そこで出会う収監者たちの罪とそこに至る悲劇が主な内容となる。
    一般の人はなかなか知ることのない塀の中の人たちの事情、彼女たちは罪を犯した人間であるけれど、実は須らく被害者でもあった。
    環境や社会や親ガチャからも(そんな言葉が!)
    村木厚子氏の解説からも真実味が溢れている。

  • 金髪で元ヤン医師の太田香織とベテラン看護師・松坂マリ江は女子刑務所に派遣された。
    当初は受刑者と距離があったが、後輩から貸し出された不思議な聴診器を胸に当てると、心の声が聞こえてきて…

    受刑者=別世界の人が、読み進めると本人よりも取り巻く環境がそうさせたり、再犯も判る気がしました。出ても居場所がない。それが再犯の原因なのが何とも言えませんでした。

    元ヤンの香織ですが、根本はいい所のお嬢様なので、看護師のマリ江が読者の気持ちを代弁している様で良いコンビでした。

    出所してからまた辛い目に遭うかもしれないけれど、それでも前向きな姿が爽快でした。

  • 女子刑務所のいろいろがわかってよい。

    患者の心の声が聴ける、不思議な聴診器シリーズ第三弾w
    このシリーズで、一番よかった。

    お金が無くて、働けなくて、ホームレスになるか、犯罪者になって刑務所に入るか、もしくは死ぬか…そんな選択をしなくちゃならない人がいる世の中は嫌だなと思うけど、全くの他人事ってわけじゃすまないかもしれない、と思うと生きるのが苦しくなる。

    冤罪で逮捕された村木厚子さん(元厚生労働事務次官)の解説がリアルで怖い…(^◇^;)

  • 病棟シリーズ第三弾。
    「後悔病棟」の早坂ルミ子医師、「希望病棟」の黒田摩周湖医師に続き、パツキンの太田香織センパイが登場!

    太田香織(37歳)と、ベテラン看護師の松坂マリ江(50歳)は、青葉市の女子刑務所に常勤医と看護師として出向することになる。
    彼氏に付いて暴走族に入ったこともある香織だが、元々がお嬢様で世間知らず。
    刑務所に入るような女はクズばかりだろうという偏見を持っていた。
    熱を出して診察室を訪れる受刑者の印象が、「普通の女」でいささか意外に思う。
    ルミ子から託された不思議な聴診器で診察するうちに、彼女たちは加害者ではなく、むしろ被害者ではないかと気づく。
    なんで被害者の方がチョーエキ受けてるの?
    不条理である。

    本当なら、覚醒剤を勧めて稼がせる彼氏や、暴力を振るって何度も怪我をさせる夫の方を監禁して、性根を叩き直すべきだと私も思う。
    しかし一方で、刑務所とは、頑丈なシェルターという一面を持ってはいないだろうか。
    不自由な生活ではあるが、塀の中にいる間、彼女たちは守られているのだ。
    DV夫への傷害で実刑を受けている二人の女性は、服役中に家族の奔走で離婚が成立し、差し入れ、手紙、面会も多く、その表情は笑顔。同室の者たちから羨ましがられている。
    しかし、釈放されたら、元夫がまた干渉してこないとは限らない。
    刑務所を出た後の方がいろんな意味で大変なのではないだろうか。
    再犯を犯さないためには、出所した後に安心できる居場所があることが一番大切である。
    香織は、若い頃に見た暴走族の少女たちは居場所が無かったのかもと気づく。

    女性の受刑者の多くが、男によって人生を狂わされている。
    彼女たちの人生は重たいが、同室の受刑者同士の友情や、香織とマリ江の軽快な会話のやり取りが、読むことをつらくさせない。
    「治って出ていく」という点で、刑務所は病院と似ている。

  • 神田川病院の“金髪女医”太田香織と看護師・松坂マリ江は、ひょんなことから女子刑務所に派遣される。当初は、受刑者との距離を感じていたが、後輩から授かった不思議な聴診器を胸に当てると…
    惣菜四三〇円の万引きで懲役二年を科せられていたり、夫の執拗なDVに耐えきれず殺害に及んでいたり、はたまた悪い男にそそのかされ、クスリに手を出していたり、と切実な事情が見えてきた。二人は受刑者とは個人的に接してはならないという禁を破り、あっと驚く方法で解決に乗り出してゆくが…。「病棟」シリーズ第三弾。解説は元厚生労働事務次官の村木厚子氏。

  • 女性刑務所のお話。香織先生と看護婦さんのやり取りも心温まります。患者の心に寄り添うお医者様は医療の現場で1番大切な気がします。実際の刑務所に入ってる人も人間。本当に罪を犯す犯さないは、紙一重なのかもしれないと思わされるお話です。

  • 聴診器でその人の考えが読めるシリーズで、今度は女性刑務所の病棟での話。前作の希望病棟とテーマが近く、社会の(特に女性が抱える)の課題ゆえに犯罪を犯してしまった人々を描いていた。
    犯罪を肯定するような描写にはさすがに「どうなの?」とは思ったが、犯罪者に同情の余地があるのは確かなので、このような作品がきっかけで制度や法律が見直されれば良いと思った。

  • 登場人物も設定もリアルではないが、違和感なくすんなり読めた。
    金髪女医と看護師が女子刑務所に派遣される。そこで人の心が読める聴診器で殺人や薬中毒者などと接して罪を犯す経緯を知る事になる。
    最後あたりの「ほとんどの女が犯罪者というより被害者だった」の一文が哀しい。解説は冤罪で勾留された村木厚子元事務次官でこの部分が1番こわかった。

  • シリーズ3作目
    今回は香織先輩が看護師のマリ江さんと共に刑務所に半年出されるお話

    以下、公式のあらすじ
    ------------------------
    舞台はなんと女子刑務所!
    「後悔病棟」「希望病棟」に続くシリーズ第三弾!
    神田川病院の“金髪女医”太田香織と看護師・松坂マリ江は、ひょんなことから女子刑務所に派遣される。当初は、受刑者との距離を感じていたが、同僚から授かった不思議な聴診器を胸に当てると――
    惣菜四三〇円の万引きで懲役二年を科せられていたり、夫からの執拗なDVに耐えきれず殺害に及んでいたり、はたまた悪い男にそそのかされ、クスリに手を出していたり、と彼女たちの切実な事情が見えてきた。
    二人は受刑者たちとは個人的に接してはならないという禁を破り、あっと驚く方法で解決に乗り出してゆくが……。

    「受刑者は私だったかもしれない――
    そんな想像を読者に抱かせる本書を
    心からお勧めします」
    村木厚子さん(元厚生労働事務次官)
    ------------------------

    香織先輩に聴診器を託す摩周湖、ルミ子、そして同意する笹田部長
    今までは香織先輩はガラの悪そうで常識外れではあるけど、人の気持ちやらはわかっているような感じだったけどね

    最初は罪を犯した囚人たちを偏見を持って見ていた香織
    逆恨みされたり、いきなり襲われたりといた心配をしていたが、実際に診察してみると受刑者たちは罪を犯すのにそれなりの事情があり
    また服役後の生活も決して易しいものではない事を知る

    万引きを繰り返し、最後は総額四百三十円のお惣菜の窃盗で懲役二年を課せられた清子 (きよこ) 62歳
    夫のDVが子供にまで及びそうになったために刺殺した美帆 40歳
    男にそそのかされて覚醒剤に手を出してしまった山田ルル 26歳
    自殺した孫の原因であるいじめを隠蔽した教育委員会委員長の家に放火した秋月梢 80歳

    そして、香織が神田川病院に戻ってからの後日談と届いた手紙

    マリ江が言うように、やはり香織はいくら非行の時期があったとしてもいいとこの子ですよねー
    まぁ、受刑者に対する偏見は私も似たようなものを抱いていますが
    皆が皆決して許されない罪を犯しているわけではなく、止むに止まれぬ事情があったり
    加害者でありながら被害者でもあるという事情があるというのもわかる
    でもなー
    やはり一線を越える人とそうでない人の明確な線引きはあると思ってしまう

    彼女らの抱えている問題の解決方法は相変わらず滅茶苦茶で非現実的
    普通は刑務官もそんな事認めないだろうし、塀の外の事情にも他の人を巻き込んで踏み込んでいるのは明らかに現実的ではない
    でもまぁ、垣谷美雨さんの物語だし という事で納得してしまう

    受刑者達の再犯率も男と女で違いがあるし
    その再犯に至る事情も違う
    出所してから適切なサポートがあれば防ぐことができるけれども、そこまで手が回っていないからこそ負のループができてしまう

    理屈はわかるけれども、でも実際に自分の近辺に犯罪を犯した人が居るというのは、まったく何も知らない状態よりは身構えてしまうのも確か
    これって、誰が、何が悪いのでしょうね?
    社会復帰には社会の手助けが必要なのに、その理解が得られないという状況がある


    何だかんだ言いつつ、物語の中では四人とも順調なその後を歩んでいるようでよかった
    ってか、香織とマリエはこの4人以外も何かと首を突っ込んでいそうな気がするけどね

    女性の受刑者に関しては、山田宗樹さんの「嫌われ松子の一生」を読んでいたので、ちょっとした知識はある
    美容理容の資格取得に関する事情とかね


    解説は元厚生労働事務次官であり冤罪事件で拘置所に長期間勾留された事がある村木厚子さん
    確かに、事情が違えばこの方も同じように刑務所に収監されていたわけだし
    元々小説で語られるような女性たちに関するお仕事もしていたわけで
    解説に生々しさがあった

  • さくさく読めた。ドラマ化したらきっと面白いと思った。
    ファンタジーでありながら、きちんと問題提起もされていて。刑務所に入るに至る理由に胸がつまる。人ごとじゃないな、と。
    最後は登場人物がみな前向きに更生に向かっていくのも、鼻につかず素直に読めたのは作者の力がすごいからなんだろうな。

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著者プロフィール

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『後悔病棟』『嫁をやめる日』『女たちの避難所』『四十歳、未婚出産』などがある。

「2023年 『うちの父が運転をやめません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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