若者はなぜ殺すのか-アキハバラ事件が語るもの (小学館101新書 15)

著者 :
  • 小学館
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098250158

作品紹介・あらすじ

「単に経済的な格差や家庭環境、学校でのいじめといった部分の集合ではなく、真の問題点は一人ひとりの心の底にあり、それは若者全般に共通する何かにつながっているからだと、私はあらためて感じている。」若者による無差別殺傷事件から浮かび上がる今日の病理への解決策を明快に論じた緊急提言の書。

感想・レビュー・書評

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  • たまたま家に置いてあったので読みました。
    若者が無差別殺人に至る経緯がわかりやすく書かれていた。筆者は、若者の孤独(主に親子関係に焦点が置かれている)が根本的な原因であり、子供の受け止め手となる存在の必要性を論じていた。
    興味深い内容で、文章も読みやすかった。
    また、
    「自殺と無差別殺人はコインの表と裏の関係」
    「殺意を向ける相手に攻撃できないことで攻撃対象を見失い、無差別殺人へと発展する」
    の考え方は新鮮だった。

    悲しい殺人事件を防ぐのは簡単ではないし、ゼロにはできないと思う。だが、確かに筆者の言う通り、自分を全てを受け入れてくれる存在は必要だと思う。しかしこれはかなり難しいと思う。本書では母親がその存在(隣る人と表現されていた)になるべきと書かれているが、母親も不安定な一人の人間であり、なかなか難しい。実際、家庭環境が厳しい子供は沢山いるだろうと思う。筆者は、「今の子供にとって友達とは信頼の対象ではない」と書いており、大いに納得できるが、家庭環境が厳しい子供にとっての救いは友達ではないかと思った。そんな優しい友達はそうそういないとも思い、理想を語っているだけなのかも知れないが私はそこに希望を持ちたいとも思う。

  • 2008年に起きた秋葉原無差別殺傷事件の犯人の心性に迫る本です。具体的には「孤独」と「誰でもよかった」という心性について考察されています。

    最終章の「自己領域性」についての考察からは、いろいろな展開が可能だと感じました。自己領域を守ることが、議論の場という「公共性」にとって代わってしまっている青年との出会いを通して、著者が「自己領域性を開こうとするときにのみ、「公共性」の契機が現れる」と考えるようになったことが述べられています。

    ただ、主題である事件を起こした青年の心性については、詰めるべきステップが詰められていないように思えます。自立と依存とは対立するものではなく、むしろ全面的に自分を受け止めてもらえるという体験が自立的な心性を育むという指摘は納得できるのですが、親に全面的に受け止めてもらったという体験をもたない青年は、主体的な生を奪われて「いい子」を演じさせられており、それがいつか限界を迎えるというのは、少々強引な議論の運び方のように思えてしまいました。原因は、かならずしも親子関係だけにかぎるとはいえないように感じます。

    さらに、そこから無差別殺人へと向かう理由が、明確には見えてこなかったことにも、不満をおぼえます。主体的な自己を育てることのできなかった若者にとって、「いい子」の崩壊は自己崩壊を意味しており、自己崩壊と「誰でもいい」という無差別的な破壊衝動とは表裏一体の心性だと著者は考えているようですが、心理的な推移ではなく、実存的な理由のつながりを解き明かしてほしかったように思います。

  • 駄目だ。
    気分じゃないのかもしれないが、読み続けられんので、止め。内容には至らず。

  • 無差別殺傷事件の背景を探る書。
    “若者”の孤独と、そこから生まれる疎外感に目を向け、根本的な問題として、子のすぐそばで見守り受け止めるべき存在=「隣る人」の不在 を提唱している。

    読みやすく分かりやすいが、やや“若者側”への擦り寄りが顕著なため、ある種の違和感は確かに覚える。
    また、「自己領域性」という解釈については面白かったものの、原因を親に帰結させていく論旨は、どうしても雑に思える。

    実際のところ、“普通”の人間の多くが知りたいのは、“親”としての若者への接し方ではなく、“隣人”としての接し方ではないのか。

  • 心理学的な内容やったらいややなーと思いながら、でもゼミの課題の材料やから読まななあと思いつつ読書。
    最近このような内容に距離をおいていたため、ひさしぶりにこの手の本を読んだけど、共感できるところが多くておもしろかった。
    無差別殺傷、親殺し、自殺の背景に真っ先に「子殺し」があるということ。重く受け止めないとあかんと思います。
    「受けとめ手」の存在、それに気付ける親たち、まわりのひとたちがどれだけいるだろうか。
    終章の重みが好きです。

  • 結構極端な話に感じたけど。
    「誰でもいい=それだけ他人に関心がない」
    っていうのはいいとしても、
    そこにアダルトチルドレン的な文脈が
    絡んでくると、
    「世の中狂ったのは、すべて子育てのせい」
    みたいではないか。

    これをして、解決の糸口になるのかどうかと
    いう点では微妙だけれども、親として考えさせ
    られる点は多々あった。
    でも、オレは誰も殺してない。

  • ふつう人は自暴自棄になっても他人を殺すところまではいかない。

  • 要するにみんなそれぞれ自分のことしか考えなくなったということ

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著者プロフィール

評論家。1942年東京生まれ。上智大学経済学部卒業。著書に『家族という意志』(岩波書店)、『家族という絆が断たれるとき』『宿業の理想を超えて』『「孤独」から考える秋葉原無差別殺傷事件(共著)』(以上、批評社)、『ひきこもるという情熱』『〈宮崎勤〉を探して』『「存在論的ひきこもり」論』(以上、雲母書房)などがある。

「2013年 『子どものための親子論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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