上級国民/下級国民 (小学館新書) (小学館新書 た 26-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098253548

作品紹介・あらすじ

やっぱり本当だった。

いったん「下級国民」に落ちてしまえば、「下級国民」として老い、死んでいくしかない。幸福な人生を手に入れられるのは「上級国民」だけだ──。これが現代日本社会を生きる多くのひとたちの本音だというのです。(まえがきより)

バブル崩壊後の平成の労働市場が生み落とした多くの「下級国民」たち。彼らを待ち受けるのは、共同体からも性愛からも排除されるという“残酷な運命”。一方でそれらを独占するのは少数の「上級国民」たちだ。

「上級/下級」の分断は、日本ばかりではない。アメリカのトランプ大統領選出、イギリスのブレグジット(EU離脱)、フランスの黄色ベスト(ジレジョーヌ)デモなど、欧米社会を揺るがす出来事はどれも「下級国民」による「上級国民」への抗議行動だ。

「知識社会化・リベラル化・グローバル化」という巨大な潮流のなかで、世界が総体としてはゆたかになり、ひとびとが全体としては幸福になるのとひきかえに、先進国のマジョリティは「上級国民/下級国民」へと分断されていく──。

ベストセラー『言ってはいけない』シリーズも話題の人気作家・橘玲氏が、世界レベルで現実に進行する分断の正体をあぶり出す。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    「社会は知能によって分断されるようになった」
    本書はこの一言に集約される。知能が学歴の差を生み、学歴が年収の差を生み、年収がモテ/非モテと子どもの知能差を生む。世の中がそうした「知能第一主義」にシフトしていったのは、世界がリベラルに邁進していったからだ。人は人種や性別によって差別されないがゆえに、自分と他人の境遇の差は実力から来るものでしかなくなる。しかし、そもそもその実力も生まれ育った階層から来るいわば「天賦の才」である。こう考えると、上級国民と下級国民は本当に存在して、しかも下級から逆転することは不可能なように見えてくる。

    どこの国でもそうだが、誠実に生きている(大学を出て、企業に勤めて、結婚して、子どもがいる)人にとっては、世の中というのは結構優しい。そもそもそうした人たちを「中央値」として社会は設計されている。しかし、その「誠実な人」の割合が、自由主義が進むにつれてどんどん縮小されていった。かつては普通に手に入ったものがいつの間にか高望みになって、かつては普通の生活を送っていた人たちがいつの間にか上級国民扱いされていく。「誠実な人たち」との差はみるみる開いていくが、彼らは「今の生活が普通」と考えているため、下からの声が届くことはない。
    子どもを作るのが厳しい、まともな企業に入るのが厳しい、大学に行くのが厳しい、異性と付き合うのが厳しい……。いったい、普通というのはいつからこんなに難しいものになったのだろうか?そして、次は何を諦めればいいのだろうか?

    最近、「上級国民」や「親ガチャ」という言葉が話題になっているが、次の標的はどこだろうか。私が考えるに、恐らく「子連れ」になる。そうなったらいよいよ終わりだ。

    ―――――――――――――――――――――――――
    【まとめ】
    1 格差が目に見え始めた
    現代社会では、「エリート」や「セレブ」は「努力して実現する目標」だ。「上層階級(アッパークラス)/下層階級(アンダークラス)」は貴族と平民のような前近代の身分制を表わしていたが、その後、階級(クラス)とは下流から「なり上がる」ものへと変わった。
    それに対して「上級国民/下級国民」は、個人の努力がなんの役にも立たない冷酷な自然法則のようなものとしてとらえられている。いったん「下級国民」に落ちてしまえば、「下級国民」として老い、死んでいくしかない。幸福な人生を手に入れられるのは「上級国民」だけだ――。これが、現代日本社会を生きる多くのひとたちの本音である。


    2 団塊の世代の犠牲になる日本の若者
    日本のサラリーマンは世界(主要先進国)でいちばん仕事が嫌いで会社を憎んでいるが、世界でいちばん長時間労働しており、それにもかかわらず世界でいちばん労働生産性が低い。

    バブル前夜からバブル崩壊までの25年間で、「全体としては」年功序列・終身雇用の日本型雇用慣行は温存され、若い女性ではたしかに非正規が大きく増えたものの、その多くは元専業主婦だった。その一方で、若い男性で急激な「雇用破壊」が起きたことは間違いない。つまり、平成の日本の労働市場では、若者(とりわけ男性)の雇用を破壊することで中高年(団塊の世代)の雇用が守られたのだ。

    IT革命が到来して、アメリカでは、これまで会社内で行なわれてきた業務がアウトソースされるようになった。こうして生産活動の一部が効率的な国内外のサービス供給者に集約され、経済全体の生産性が上昇したのだ。ところが日本では、雇用対策を優先したため、社員の仕事を減らすような業務のアウトソースができず、子会社や系列会社をつくって社内の余剰人員を移動させるという対応がしばしば行なわれてきた。しかしこれでは、個別の企業にとっては労働コストの削減にはなるが、経済全体の生産性上昇にはつながりらない。

    日本的雇用の本質は「重層的な差別」である。なぜなら、日本という社会が、先進国のふりをした身分制社会だからだ。
    オランダでは「フルタイム」と「パートタイム」は勤務時間が異なるだけでまったく平等な労働者ですが、日本では「正規」と「非正規」は身分のちがいで、「非正規に落ちる」とか「正社員に上がる」という言葉がごくふつうに使われます。正社員との収入格差でも、社宅や家族手当などの福利厚生でも、雇用の保証でも、日本の「非正規」は先進国ではあり得ないような劣悪な労働条件を課せられている。

    現代日本社会は「大卒/非大卒」の学歴によって分断されている。現代日本社会において、「下流」の大半は高卒・高校中退の「軽学歴」層なのだ。


    3 モテと非モテ
    調査によると、女性より男性の方が自分の人生や将来展望に大きな不安を感じている。男性のなかでもっとも不安定性が低いのは「壮年大卒男性」だが、それでも女性のなかでもっとも不安定性の高い「若年非大卒女性」とあまり変わらない。壮年よりも若者のほうが、大卒よりも非大卒のほうが、女性よりも男性のほうが不安定性が高い傾向にある。

    男の性淘汰では、「持てる者」になる(高い階級に達する)ことと、女性に「モテる」ことが一致する。自由恋愛という「一夫多妻制度」では、なんらかのルールにもとづいて複数の女性が一人の男(権力者)を共有することになる。もちろんそこでも競争(足の引っ張り合い)はあるだろうが、それは男集団のような明確なヒエラルキーをつくるようなものにはならない。自分の子どもを守り育てるには、競争するより女同士で協調した方が有利だからだ。 これが、男性とちがって、女性は「階層帰属意識」が低くても、それが生活満足度や幸福感の低下に直結しない理由ではないだろうか。

    男も女もすべての人が自らの意思で結婚・離婚する自由恋愛の社会では、マジョリティであるはずの男性が、必然的に「モテ=持てる者(上級)」と「非モテ=持たざる者(下級)」に分裂することになった。
    そんな中、「非モテの男たち(下級国民)」にとって、「モテの男(上級国民)」とすべての女は自分たちを抑圧する「敵」にしか感じられない。「非モテ」の男は性愛から排除されることで人生をまるごと否定されてしまうのだ。


    4 リベラルが作る格差の世界
    リベラルは、人種、出自、宗教、国籍、性別、年齢、性的志向、障がいの有無などによるいっさいの差別を認めない。なぜならそれらは、本人の意思や努力ではどうしようもないことで自己実現を阻むからだ。しかしこれは逆にいうと、「本人の意思(やる気)で格差が生じるのは当然だ」「努力は正当に評価され、社会的な地位や経済的なゆたかさに反映されるべきだ」ということになる。これが「能力主義(メリトクラシー)」であり、リベラルな社会の本質である。

    オランダは世界にさきがけてフルタイムとパートタイムの「差別」を撤廃したが、そんなリベラルな社会でも、2004年に施行された「雇用・生活保護法」で、18歳以上65歳未満の生活保護受給者は原則として全員が就労義務を課せられ、「切迫した事情」を立証できないかぎりこの義務が免除されなくなった。

    「知識社会化」「リベラル化」「グローバル化」は三位一体の現象である。
    先進国のマジョリティは2つの階層に分断される。イギリスのジャーナリスト、デイヴィッド・グッドハートはこれを「エニウェア族(Anywhere)」と「サムウェア族(Somewhere)」と名づけた。 エニウェア族は、仕事があればどこにでも移動して生活できるひとびと。地元を離れて大学に進学し、そのまま都市の専門職に就き、進歩的な価値観を身につけ、成果主義や能力主義に適応している。グローバル化や欧州統合に賛成し、移民の受け入れや同性婚にも寛容である。一方、サムウェア族は、中学・高校を出て地元で就職・結婚して子どもを育てているひとたち。個人の権利より地域社会の秩序を重視し、宗教や伝統的な権威を尊重する「ふつうのひとびと」だとされる。イギリスのブレグジットによって明らかになったエニウェア族とサムウェア族の分断は、現代社会が人種や民族、宗教によって分断されているわけではないことを示している。また、アメリカ社会は白人と黒人の人種対立ではなく、白人社会のなかでベルモント(新上流階級)とフィッシュタウン(新下流階級)に分断されている。

    社会を分断しているのは何か?それは「知能」によってなのだ。

  • リベラル化してPCが幅を利かせる社会。
    一方で豊かな者と、そうではない者の分断が拡大する時代。
    文明の方向は「自己責任」に向いている。
    好むと好まざる関係なくて、人種や国籍や宗教や性別や性癖(LGBT)や職業、恋愛、婚姻、体形、容姿などで差別をしてはいけない、というのは豊かな先進国での常識になっている。
    その根底には、以上で挙げた項目に関して選べる、つまり自己決定の自由(人種は?ですが、性別は変えてる人もいる)。
    オランダに続いてスペインも安楽死が認められるようになった。それも寿命の自己決定の実現といえる。
    自己決定だから、そこには選んだ責任が自分に掛かってくるのがセットになる。
    自己決定があって自己責任がある、ということだと思う。それはそれとして、自己決定できない(能力的に、貧しさゆえに、無知ゆえに)人達の行方には悲惨な境遇が待ち受けている。そんな世界。

    作品紹介・あらすじ-------------------
    やっぱり本当だった。

    いったん「下級国民」に落ちてしまえば、「下級国民」として老い、死んでいくしかない。幸福な人生を手に入れられるのは「上級国民」だけだ──。これが現代日本社会を生きる多くのひとたちの本音だというのです。(まえがきより)

    バブル崩壊後の平成の労働市場が生み落とした多くの「下級国民」たち。彼らを待ち受けるのは、共同体からも性愛からも排除されるという“残酷な運命”。一方でそれらを独占するのは少数の「上級国民」たちだ。

    「上級/下級」の分断は、日本ばかりではない。アメリカのトランプ大統領選出、イギリスのブレグジット(EU離脱)、フランスの黄色ベスト(ジレジョーヌ)デモなど、欧米社会を揺るがす出来事はどれも「下級国民」による「上級国民」への抗議行動だ。

    「知識社会化・リベラル化・グローバル化」という巨大な潮流のなかで、世界が総体としてはゆたかになり、ひとびとが全体としては幸福になるのとひきかえに、先進国のマジョリティは「上級国民/下級国民」へと分断されていく──。

    ベストセラー『言ってはいけない』シリーズも話題の人気作家・橘玲氏が、世界レベルで現実に進行する分断の正体をあぶり出す。

  • 【正不平等】
    ー 正しい不平等 ー
    どんどん平等になっていきすべての障壁がなくなったときは確かに恐ろしいです。

    すべての責任が自己責任になります。
    人種差別だ、男女差別だ、政治家が悪い、会社・上司がよくない、機会が不平等、家柄が違う、世の中が悪いなどと言えません。すべてが平等です。
    できなかった場合は言い訳することができず、すべて自分が悪いことになります。
    究極のダメだしです。

    ここまでになると下位に位置する人間は生きていくことはむずかしくなります。銃を乱射して世の中が間違っていると叫ぶこともできません。
    平等の機会・条件で競って優劣がついてしまっているのですから。。。すべてが自分の責任になります。

    こう考えると、ある程度不平等が存在しないと下級に位置してしまったときに生きる糧がなくなってしまいます。負け犬の遠吠えの余地も残っていないとやってられません。
    あるいはすべてが「個性」というものでくくられて、優劣がない状況になれば問題ないのでしょうが。。。

    これからフリーランスが増えるのは間違いないでしょうが、フリーランスは基本的に個人契約です。会社という看板で契約するわけではありません。個人の看板で契約を結ぶ必要があります。
    契約を結べる人はいいのですが、問題は契約をとれない人になります。これも何の障壁もない自由競争の結果であるため、自業自得というどこにも文句の言えない状況となります。こういう人たちはどうやって生きていけばいいのでしょうか・・・

    ー 団塊の世代 ー
    団塊の世代は正直うらやましいです。人口のボリュームゾーンでしかも上の人間がいない状況です。何でも自分で生み出す苦労はありますが、文句を言われることなく、自分たちの自由にできる、こんなうらやましい環境はないです。自分たちが時代(ルール)を創っているのです。苦労も苦労でなくなり最高に楽しい状況です。

    団塊の世代の雇用確保をして、60歳でやっとその下の世代が活躍できると思ったら、まだまだやめないで働き続けているのです。団塊の世代が60歳になるときにいろいろな問題が発生すると予想されていましたが、全く起きませんでした。65歳になるときにさすがに問題が起きると予測されていましたが、それも特に大きな問題は生まれませんでした。それもそのはずで、団塊の世代が既得権を握ったまま働き続けているからです。70歳を超えても現役で社長に君臨しているのです。

    後期高齢者になってやっと仕事をやめて権力を明け渡すのかもしれませんが、次は団塊の世代の年金を確保する時代がやってきます。人数も多く発言権を多数持つ団塊の世代の年金を減らすことは不可能です。死ぬまで時代の中心に君臨し続けるのです。ただ、あと20年ほど我慢すれば本当に(ついに)団塊の世代がいなくなり時代が変わります。
    団塊の世代はうらやましいかぎりの世代です。

    ー 加速技術 ー
    テクノロジーが恐ろしく進化して、大多数の人間の理解を超え始めています。しかし、今現在、極端に進化・成長し儲けを生んでいる分野はテクノロジーの世界しかありません。他の分野はそれほど進歩していませんが、テクノロジーはさらに飛躍する余地を残しています。
    人はテクノロジーを理解することをあきらめるときがいずれやってきます。うまく利用するように移行しますが、うまく利用することすら困難な時代がやってきそうです。少しだけ理解しているものが大多数の理解できていない人間を操るかたちになると思います。
    団塊の世代に勝てる(勝ち負けではないが・・・)ところはここに一つの可能性はあると思います。テクノロジーについていけないようにすればいいのですが、残念ながらお年寄りだからついていけないわけではないというところが悲しいです。お年寄りでもテクノロジーを使いこなしている人は多数います。さらに、団塊の世代はバイタリティー豊なため、下の世代よりテクノロジーを積極的に使用する人も多いです。

    やはり、ボリュームゾーンの世代が亡くなるまでは時代は変わらないのかもしれません。

    • やまさん
      gonco3さん
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      gonco3さん
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      2019/11/16
  • 上級国民、下級国民って言葉は
    あの交通事故から聞くようになった気がします
    それも書いてありました
    上級国民だから逮捕されなかった、ってことでは
    ないようですが
    本書ではいろいろなデータをもとに上級や下級
    モテ、非モテなどが語られています
    そして知識社会か
    なんとなくですが、この分断はもうしょうがない
    のかもしれない

  • 講演の内容をもとに加筆修正し、新書のかたちにまとめたもの、ということを読み終える直前くらいに知った。道理で、読んだことがある内容が多いわけだ。。でも、復習として十分面白い。

    P21
    日本のサラリーマンは世界(主要先進国)でいちばん仕事が嫌いで会社を憎んでいるが、世界でいちばん長時間労働しており、それにもかかわらず世界でいちばん労働性が低い、ということになります。

    P30
    平成の日本の労働市場では、若者(とりわけ男性)の雇用を破壊することで中高年(団塊の世代)の雇用が守られたのです。

    P220
    アイデンティティ(共同体への帰属意識)は、「俺たち」と「奴ら」を分別する指標でもあります。それに最適なのは、「自分は最初から持っていて、相手がそれを手に入れることがぜったいに不可能なもの」でしょう。黒人やアジア系は、どんなに努力しても「白い肌」を持つことはできません。(中略)彼ら(白人アイデンティティ主義者)は、「人衆差別主義者」というより、「自分が白人であること以外に誇るもののないひとたち」です。

  • どの主義を持とうとも個人の自由
    究極の自己責任社会になるのを感じますね
    かつて手にしたことのない異常なまでの自由な
    世界はどうなっていくのか
    答えは混沌の中・・・・

  • 著者にはいつも様々な気づきを与えてくれます。
    普通に生きてるだけでは気づかないことが多すぎます。

    「日本のサラリーマンは世界で一番仕事が嫌いで会社を憎んでいるが、世界で一番長時間労働しており、それにもかかわらず世界で一番労働生産性が低い」
    これはまあ巷間でよく言われることですよね。
    僕も周りでよく聞きます。

    「働き方改革は団塊の世代が現役を引退したことで初めて可能になった」
    つまり団塊の世代の既得権益に手をつけられなかったんですよね。
    これからは対症療法的な法改正を小刻みにやっていくことになるんでしょうか。

    『教育の本質は「上級/下級」に社会を分断する「格差拡大装置」であることを福沢諭吉は正しく理解していた』
    とあります。
    福沢諭吉の「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」の一節は続きがあって学問をするかしないかが貧富の差を分けるとあります。
    今の教育は大学至上主義になってるのでこのレールに乗れない人はよほど逆転の目が出ないと成功に向かわないということです。
    僕は友達に大学に行かなくても社長や店長として大成してる人を知ってますし高卒の素晴らしい上司に囲まれて仕事をしてます。
    ただそれはマイノリティなんやろなあと思います。

    グローバル化によって数億人が貧困から脱出したことで、世界全体における不平等は急速に縮小している。
    しかし世界が「全体として」ゆたかになった代償として先進国の中間層が崩壊した。
    これがまさに今の日本の生きづらさの正体なんかなと思います。

    本書は読後にすごく考えさせられます。
    何が正しいのか自分で納得して選択していかないと後悔することになるんやろなと思います。

  • 上級国民と下級国民
    経済や知識的に国民の格差は拡大する一方。
    しかしながら、過去の時代から階級や生まれた家柄などで格差はあった。
    リベラル派により、階級などがなくなった先進国では逆転勝利を得ることも可能にはなったが
    その反面、全てが自己責任として語られるようになってしまった。

    今現在でも生まれた環境や家の経済状況により、全てが自己責任として処理されるには厳しい現状があるのは確かである。
    私たちはこの現代社会の現状を理解した上でどのように生きていくことを選ぶのか、考えるきっかけとしていきたい。

  • ふむふむ上級国民と下級国民…
    やっぱそういうことだよね

    世界が進化もしくは深化していく中での弊害

    トランプ政権下では顕著だったけど、
    コロナ禍の未来はどう変わるのかな?

  • 池袋での高齢者による自動車暴走事故の際、死傷者が出たにもかかわらず、運転者である高齢者が逮捕されなかったことが、当該運転者の過去の経歴に照らして「上級国民」だから、という巷の風評があった。
    そこからにわかに上級国民、下級国民論が論じられるようになったわけだが、本書はその論を著者の過去の話題作「言ってはいけない」と同様に、各種統計データを駆使しながら、日本だけでなく、世界での「上級国民/下級国民」問題を深く掘り下げている。
    印象的だったのは、
    「平成が『団塊の世代の雇用(正社員の既得権)を守る』ための30年だったとするならば、令和の前半は『団塊の世代の年金を守る』ための20年になる以外にありません」と、
    「教育の本質は『上級/下級』に社会を分断する『格差拡大装置である」と喝破しているところ。

    本書を読むと暗澹たる気持ちになるが、現実は直視しなければならない、と感じた次第。

  • .

  • 日本と世界が抱える現代社会の問題点が浮き彫りになる一冊。知識社会の現代の中で人々は明確にその知能レベルによって分断されてしまう。そしてその知能レベルでの分断が経済的な分断も生み出すことになり、さらにそれがモテ非モテといった問題にまでつながってしまう。このように現代社会において日本に限らず世界中で同様の問題が発生しており、これを明確に解決する方法が無いのが現状である。このままではいつまで経ってもインセルに代表されるような現代社会への報復を思想する人間が現れ続けてしまうだろう。

  • ・男と女が社会的に幸福になるには、異なるKPIがあるのを理解できた一冊。
    ・現代は格差社会が構築され、それは知能の差である。特に男は持てるとモテるがイコール。

    ・男性と女性では、女性の方が幸福度が高いというのは歴史や文化に関わらず世界共通。
    ・男性、女性に両方とも、年齢に限らず学歴が低い人は幸福度も低い。
    ・若い女性はエロス資本を持っているため幸福度が高い。壮年でも女性の方が男性よりも幸福度が高い。女性の方が繋がりを作るのがうまいから?男性は年を取れば孤立していく。
    ・男の性的戦略は、純愛の欺瞞。女性はこれに振り回されないために、噂話で対抗した。また物理的にも女性一人で男性には勝てないので、共感能力を発達させ、グループとして男性の暴力を抑えこもうとした。
    ・女性がモテる要素は若さ。男性は金と権力、要は共同体内での地位。
    ・近親婚を避けるために、女性は他の集団のオスに興味を持ち、集団内の女性が入れ替わる。冒険的になる。だから女性は新しい集団での関係性構築がうまく、また緩いつながりとなる。一方男性はいつまでも一つの集団のそのヒエラルキーに属する。女性はいくつになっても友達を作れるが、男性は作れない。
    ・米国では時給14$で働く人が、10億円のボーナスを受け取るCEOには価値があり、自分には価値がないことを受け入れている。リベラル社会は全てが自己責任。知能格差。

  • 橘さんの本は、男女の問題に重点を置くことが多い。
    本の中で語られている貧困の連鎖は、若い時は分からなかったが今ならよく分かる。

    両親ともにエリートではなく、地域全体が中流であれば、子供もその価値観に染まるのは当然のこと。
    貧困の連鎖を断ち切るには、物心つくまえに環境を変えることだと思う。

    アメリカの白人で問題になっている格差問題、ホワイトカラー白人とブルーカラー白人の分断が、まもなく日本でも起きると、この本は予想する。

    社会全体が豊かになったとしても隣の人が自分より、より豊かになっていれば心穏やかでいられないのが人情というもの。

  • すげ〜最後の解決策もびっくり!

  • 持つものと持たざる者がいる。それがお金だったり、性的魅力だったり、対象は色々だけど、たしかに差はあって、しかも年々差がついていくという話。もちろんその通りと思う部分もあるし、同意できる箇所も多いが、『だから何?』というのが、結局頭の中から消えなかった。

  • 話題になっていた時に読まず、ずっと気になっていたがたまたま古本屋に売っていたので購入しで読了。

    センセーショナルなタイトルとは裏腹に多くのデータや様々な文献からの引用が多く、現代社会における分断の理由を知ることのできる良書。チラ裏のような話題集め本かと思ったが社会学的な目線で、現代人の分断が述べられている。5年後、10年後、20年後にこの時代(平成終わりから令和初期)のリベラルの考え方を知ることのできる一冊になりそう。
    ただ主張や意見に筆者の気持ちが強く入っているため、全て鵜呑みにせず、自分で一次情報を当たって再考するのが良いだろう。

    ●近代までの社会は階層や宗教などのコミュニティの違いにより社会的に区分けされていた。
    ●知識社会化・自由化・グローバル化によって、個人の自由(自分が選択することで自分の生き方を決められる)が加速すると、自己責任論が加速する。
    ●現代は知識社会のため分断は知能の格差によって分けられている。日本においては具体的には大卒が非大卒かである。

    第三部は現代の世界の思想についてわかりやすくまとまっているのでリベラルとは?ポピュリズムとは?ということを知りたい人にもおすすめである。

  • 面白かった。現代社会はこういう捉え方ができるのかと、目から鱗。今は知識格差社会だが、それは産業革命以降の潮流であり、2045年にテクノロジーが人間の能力を上回ると、また世界観がガラリと変わるという。複雑な世界を生き抜くために、自分をアップデートし続けてく必要を痛感した。

  • なんとなくわかっていたけど、やっぱり教育や貧富の差はなかなか埋められない。途中からアメリカのことが書かれていたけど、どの国も中流階級が減っているという…私はどう生き延びていけば良いのか…

  • 日本の格差が気になっているときに本書を夫が図書館で借りたので、私も読んでみました。
    「言ってはいけない」で有名な著者の本だったので、案の定少々過激な内容でしたが興味深く読みました。
    特に後半、アメリカ社会の分断の構図については大変勉強になりました。

    さて、具体的な内容ですが、日本だけでなく先進国を中心に世界中で「上級国民/下級国民」の分断が進んでいる背景について考察し、世界がどこに向かっているのかを解説した本でした。

    まず日本の現状ですが、日本のサラリーマンは「先進国の中で一番仕事が嫌いで会社を憎んでいるが、世界で一番長時間労働をしており、それにもかかわらず世界で一番労働生産性が低い」そうです。
    そんな状況では競争力は低下していくばかり。
    ですが、平成の日本の労働市場では、既得権益者である団塊の世代(中高年)の利益(雇用)を自身が優先したせいで、若者男性の雇用が破壊されました。
    実際今でも日本では、正社員の身分が非正規労働者の存在によって保たれており、問題提起する側の人間(マスコミ等)がまさにその正社員の身分であるから、そのあたりには触れない、切り込まない、という理屈はとても納得感がありました。

    次にアメリカ社会に代表される先進国の現状は「知識社会化・リベラル化・グローバル化」という三位一体の巨大な潮流のなかにいるということです。
    ① 知識社会化
    テクノロジーの進化によるとてつもなく豊かな世界であり、一部の優れた人だけが富と名声を手に入れる社会
    ② リベラル化
    人々は共同体から縛られず、一人ひとり自由な意思によって自己実現を目指す、より自由でより豊かな世界だが、失敗も成功も自己責任の社会
    ③ グローバル化
    国境を越えたヒト、モノ、カネの移動を可能としどこでも好きなように仕事を選択できるようになるが、一方で適応できない人は生産現場では働く機会が失われる社会
    これが現代社会の構図の正体で、トランプ大統領選出、イギリスのEU離脱、日本におけるヤフコメ民の存在などはどれもこれにあぶれた「下級国民」による「上級国民」への抗議行動なのです。

    私たちは総体的には豊かになり、人々は全体としては幸福になるのと引き換えに世界が分断されていき、行きつく先は究極の自己責任社会です。
    それは何歳になっても働いて納税したり、リタイアしてもボランティア活動するなど、「自分はこうやって社会に貢献している」とアピールしなければならない世の中で、「生涯現役社会」とは「生涯にわたって社会に参画し続けなければならない社会」です・・・
    また、今後も共同体の解体は進行し、人間関係は学校や会社など固定的なものからネット上のコニュニティーのような即興的なものにかわり、仕事はフリーランスが集まりプロジェクト単位で行われるようになります・・・
    そしてこの劇的な変化に適応できない人たちとの分断がますます顕著になります。
    現代社会は人種や民族、宗教によって分断されているわけではなく、現代は「知能」によって分断されている、というのが著者の結論でした。
    衝撃的だけど一理あるかなあ、と思ってしまう。コワイね。

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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