世界はなぜ地獄になるのか (小学館新書)

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 895
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784098254576

作品紹介・あらすじ

社会正義はめんどくさい。 人種や性別、性的指向などによらず、誰もが「自分らしく」生きられる社会は素晴らしい。だが、光が強ければ強いほど、影もまた濃くなる。「誰もが自分らしく生きられる社会」の実現を目指す「社会正義(ソーシャルジャスティス)」の運動は、キャンセルカルチャーという異形のものへと変貌していき、今日もSNSでは終わりのない罵詈雑言の応酬が続いている──。わたしたちは天国(ユートピア)と地獄(ディストピア)が一体となったこの「ユーディストピア」をどう生き延びればよいのか。ベストセラー作家の書き下ろし最新作。 【編集担当からのおすすめ情報】 累計20万部突破『上級国民/下級国民』『無理ゲー社会』(ともに小学館新書)に続く、橘玲氏の待望の最新作です。

感想・レビュー・書評

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  • 『上級国民/下級国民』『無理ゲーム社会』の続編。

    本書で著者は、リベラル=「自分らしく生きたい」という価値観と定義し、リベラル化が進むことによって「格差が拡大し、社会が複雑化して生きづらくなってい」く、ポピュリズム(「反知性主義」「排外主義」「右傾化」)の隆盛を招いく、と言う。

    キーワードは "キャンセルカルチャー"(「公職など社会的に重要な役職に就く者に対して、その言動が倫理・道徳に反しているという理由で辞職(キャンセル)を求める運動」)、"ステイタスゲーム"(「ステイタスの高い者に憧れながら、ステイタスの高い者を引きずり下ろそうとし、他者からの批判を過剰に気にして身を守りながら、ライバルの足を引っ張って自分のステイタスをすこしでも高めようと」する生き残りゲーム)。

    「上方比較を損失、下方比較を報酬とする脳は、ステイタスの高い者を「正義」の名の下に引きずり下ろすときに、きわめて大きな快感を得る」。人間の本能というか性(サガ)がむき出しになる、なんとも生きづらい世の中になってしまったものだ。こうした「この世界の仕組みを正しく理解し、うまく適応する」しかないとはなあ…。

  • ◆原因はリベラル化と主張[評]斎藤貴男(ジャーナリスト)
    <書評>『世界はなぜ地獄になるのか』橘玲(あきら) 著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/285101?rct=shohyo

    『世界はなぜ地獄になるのか』発売のお知らせ – 橘玲 公式BLOG
    https://www.tachibana-akira.com/2023/07/14817

    世界はなぜ地獄になるのか | 書籍 | 小学館
    https://www.shogakukan.co.jp/books/09825457

  •  橘玲さんの本は、ごく当たり前のこととして自分達がふわっと思い感じていることを具体的な言葉にして、エビデンスを持って説明しており、毎回分かりやすく読みやすい。
     本作は、一昔前にいわれた言葉狩り等から波及したキャンセルカルチャーに焦点を当てて話しを進めているが、話が深掘りされてLGBTQ等のマイノリティに話が及ぶ辺りから、専門性が強くなり若干飽きてきてしまった。

  • 行き過ぎたポリコレ、誰もが振り翳し幸福感を感じる社会正義、ターゲットになるとキャンセルカルチャーが蔓延し、正義を讃美するかの様な風潮が世界に溢れる。SNSやネットにより情報は取りやすく広まりやすくなったが、世界はユートピアどころではなくディストピアに向かっているのではなかろうか。

  • 橘玲さん、ちょこちょこ読んでいます。新書はもくじをざっと見て買うことが多いけど、「小山田圭吾炎上事件」とか「性的少数者の呼称が長くなる理由」とか「障害は差別用語なのか」とか、「日本では中間管理職の死亡率がもっとも高い」とか「個人は国家の過去の加害行為に責任を負うべきか」などなど、興味深いタイトルだったので即買いました。
    東京オリンピックの時に、小山田圭吾が過去のインタビューやら発言をほじくりかえされて、”キャンセル”された。いったい、過去に何言ったん?っていう単純な興味も沸いたし。どんな発言だったのかも簡単に紹介されていました。じゃ、彼はどうすれば良かったのか。著者によれば、以前にも過去の発言が問題視されていたわけだし、オリンピックの演出のような公の仕事を引き受けるべきではなかった、というのが正解だそうで。それ以外、謝罪したところで、過去にいじめられた人が再び傷つくだけだし、どうしようもなかったであろうと。
    「障害者」を「障がい者」と表記するようになったのはもう何年も前から。そういうの嫌いだな、とは思っていた。意味は変わらないわけだし。ばかばかしいというか。表記を変えたら差別がなくなるわけでもないし。
    LGBTが LGBTQ となったのは数年前に知ったけど、またさらにアルファベットが追加されているとか。いろんなパターンの”性的少数者”が詳しく解説されていたけど、読んでいるうちに訳がわからなくなりました。一言で要約してしまうと、結局「いろんな人がいる」っていうだけで、みんなが自分の基準に無理に当てはめようとせず、「いろんな人がいる」ってことを受け入れさえすれば、名称なんてなんでもいいのに、と思いました。
    私なりに、いろいろ努力して固定観念に縛られず、偏見を持たず、差別をしないようにしているし、ことあるごとに子供たちにもいろいろと話して、差別をしない、差別を許さない大人になるように見本となる大人になるべく努力いるつもりです。
    一方、私の母は非常に頭がかたく、保守的で、ともすれば差別的な考えに至るし、「それ差別だよ」っていう発言もする。でもすごくピュアで素直なので、長年教員をしている私が「そういうのは、・・・・・だから差別なんだよ」って冷静に伝えると、「そうなんだー!」目をぱちくりさせて驚く(笑)。そういう彼女は、目の前にどんな障がい者がいようが、LGBTの人がいようが、真正面から付き合って、たまにうっかり差別発言をしたり、「かわいそう」とか言っっちゃったりしながらも、とても慕われて深い付き合いになったりするから不思議だ。要するに、「何が差別にあたるか」とか小難しいことを考えなくとも、いろんな人がいる、目の前にいる人は私の仲間、と認識すればちゃんとバリアフリーな世の中になるんじゃないかな。
    そうではなく、あれもダメこれもダメと小難しい世の中になったことを「世界はなぜ地獄になるのか」というタイトルで表現している、非常に興味深い本でした!

  • 昨今のキャンセルカルチャー、世界の分断、炎上の問題など、最新の研究を紹介しながらよく整理されている。その結果、「地獄」になっていくが、現代の私たちはテクノロジーを手にして幸福な生活も送っている二面性。地獄に向かう世の中に対する著者なりの処方箋も。
    いっぽう、最近の著者の作品は、さまざまな研究の紹介が多く、少しわかりづらいと感じることもあり。それだけ世の中が複雑化しているということかもしれない。引用されている原本にあたり、再び氏の著作に戻ることで、よりすっきりするのかもしれない。急がば回れか。

  • 差別を解消し、また自分らしく生きようとするほど、この世界にはコンフリクトが発生する。
    キャンセルカルチャーが大手を振るこの世界で生きるために。

    読めば読むほど認知的不協和が起き、めんどくさくなってくる。
    これがタイトルの地獄という意味。

    キャンセルされそうな火元には近寄らず、SNSには猫の写真をpostする、というのが現状の最適解か。

  •  誰もが自分らしく生きられる社会が地獄になるのはまぁそうだよなって、誰かのらしさと自分のらしさが同じ訳ないし、ぶつかったりするよなと思いながら読んでました。本書はどちらかというと個と個の対立というよりは集団内での対立のイメージな気がしました。たしかに、性別や性的志向の話題を何人かで集まってすると変な緊張感があります。らしさを正義とした魔女狩り裁判が行われている感じ。まさに地雷原を歩く緊迫感。たぶんそういうのが嫌で独りのが楽だなと思ってしまうんだろうなと気付けました。
     筆者の結論としては地雷を踏まぬように気をつけましょうという感じですが、納得せざるを得ないほど今の社会の息苦しさの一面を知ることができました。

  • 【比べるとそうなる】
    ちょっとしたことでもすぐに炎上する時代です。

    身分を明かさず、あまり深く理解していなくても、正論をここぞとばかり言える状態は「快感」を与えるということです。

    「正論で糾弾できる」喜びです。

    さらに、糾弾する本人にマイナスリスクは無いことが、より激しく糾弾できる要素となっています。

  • 小山田圭吾の「いじめ問題」の詳報から始まる、キャンセルカルチャーの考え方。切り取り方によって変わる「事実」と、端的に受け取った世間の「正義」のあり方。本文中でも二転する「事実」がそれをより思わせる。

    SNSの発展により「成功ゲーム」に参加できないステータス的な弱者が「美徳ゲーム」に傾れ込んだ。これは本当にその通りだなと感じる。SNS上では簡単に匿名になれたり、はたまた自分を偽ることが出来る。自身の弱者性を隠して、美徳ゲームに参加するのは(成功ゲームに参加出来ない敗者にとって)さぞ楽しかろう。

    ステイタスゲームの戦い。自分はある種そういう世界から抜け出したように感じているが、この行為自体がステイタスゲームの勝者宣言のようにも感じる。むずかし。

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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