- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784098254576
作品紹介・あらすじ
社会正義はめんどくさい。 人種や性別、性的指向などによらず、誰もが「自分らしく」生きられる社会は素晴らしい。だが、光が強ければ強いほど、影もまた濃くなる。「誰もが自分らしく生きられる社会」の実現を目指す「社会正義(ソーシャルジャスティス)」の運動は、キャンセルカルチャーという異形のものへと変貌していき、今日もSNSでは終わりのない罵詈雑言の応酬が続いている──。わたしたちは天国(ユートピア)と地獄(ディストピア)が一体となったこの「ユーディストピア」をどう生き延びればよいのか。ベストセラー作家の書き下ろし最新作。 【編集担当からのおすすめ情報】 累計20万部突破『上級国民/下級国民』『無理ゲー社会』(ともに小学館新書)に続く、橘玲氏の待望の最新作です。
感想・レビュー・書評
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橘玲さんの本は、ごく当たり前のこととして自分達がふわっと思い感じていることを具体的な言葉にして、エビデンスを持って説明しており、毎回分かりやすく読みやすい。
本作は、一昔前にいわれた言葉狩り等から波及したキャンセルカルチャーに焦点を当てて話しを進めているが、話が深掘りされてLGBTQ等のマイノリティに話が及ぶ辺りから、専門性が強くなり若干飽きてきてしまった。 -
行き過ぎたポリコレ、誰もが振り翳し幸福感を感じる社会正義、ターゲットになるとキャンセルカルチャーが蔓延し、正義を讃美するかの様な風潮が世界に溢れる。SNSやネットにより情報は取りやすく広まりやすくなったが、世界はユートピアどころではなくディストピアに向かっているのではなかろうか。
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昨今のキャンセルカルチャー、世界の分断、炎上の問題など、最新の研究を紹介しながらよく整理されている。その結果、「地獄」になっていくが、現代の私たちはテクノロジーを手にして幸福な生活も送っている二面性。地獄に向かう世の中に対する著者なりの処方箋も。
いっぽう、最近の著者の作品は、さまざまな研究の紹介が多く、少しわかりづらいと感じることもあり。それだけ世の中が複雑化しているということかもしれない。引用されている原本にあたり、再び氏の著作に戻ることで、よりすっきりするのかもしれない。急がば回れか。 -
差別を解消し、また自分らしく生きようとするほど、この世界にはコンフリクトが発生する。
キャンセルカルチャーが大手を振るこの世界で生きるために。
読めば読むほど認知的不協和が起き、めんどくさくなってくる。
これがタイトルの地獄という意味。
キャンセルされそうな火元には近寄らず、SNSには猫の写真をpostする、というのが現状の最適解か。 -
誰もが自分らしく生きられる社会が地獄になるのはまぁそうだよなって、誰かのらしさと自分のらしさが同じ訳ないし、ぶつかったりするよなと思いながら読んでました。本書はどちらかというと個と個の対立というよりは集団内での対立のイメージな気がしました。たしかに、性別や性的志向の話題を何人かで集まってすると変な緊張感があります。らしさを正義とした魔女狩り裁判が行われている感じ。まさに地雷原を歩く緊迫感。たぶんそういうのが嫌で独りのが楽だなと思ってしまうんだろうなと気付けました。
筆者の結論としては地雷を踏まぬように気をつけましょうという感じですが、納得せざるを得ないほど今の社会の息苦しさの一面を知ることができました。 -
【比べるとそうなる】
ちょっとしたことでもすぐに炎上する時代です。
身分を明かさず、あまり深く理解していなくても、正論をここぞとばかり言える状態は「快感」を与えるということです。
「正論で糾弾できる」喜びです。
さらに、糾弾する本人にマイナスリスクは無いことが、より激しく糾弾できる要素となっています。 -
小山田圭吾の「いじめ問題」の詳報から始まる、キャンセルカルチャーの考え方。切り取り方によって変わる「事実」と、端的に受け取った世間の「正義」のあり方。本文中でも二転する「事実」がそれをより思わせる。
SNSの発展により「成功ゲーム」に参加できないステータス的な弱者が「美徳ゲーム」に傾れ込んだ。これは本当にその通りだなと感じる。SNS上では簡単に匿名になれたり、はたまた自分を偽ることが出来る。自身の弱者性を隠して、美徳ゲームに参加するのは(成功ゲームに参加出来ない敗者にとって)さぞ楽しかろう。
ステイタスゲームの戦い。自分はある種そういう世界から抜け出したように感じているが、この行為自体がステイタスゲームの勝者宣言のようにも感じる。むずかし。