二十世紀旗手 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101006093

感想・レビュー・書評

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  • 53冊目『二十世紀旗手』(太宰治 著、1972年11月、新潮社)
    太宰治が1936年から1937年にかけて発表した、表題作を含む7編を収録。
    20代後半だった太宰の苦悩や絶望が赤裸々に著されており、それは85年後の現代を生きる我々にも、身近な心の苦しみとして痛切に感じることが出来る。
    描かれている内容は時代を越える普遍性を持っている。
    しかし、この時期の太宰は精神的な混乱を抱えており、それが文章にも表れている。
    端的に言って、非常に難解で読みづらい作品集である。

    「笑われて、笑われて、つよくなる。」

  • 作品集「晩年」の発表前後
    麻薬中毒で錯乱していた時の、支離滅裂な作文ばかり集めたもの

    「狂言の神」
    友人の笠井くんが自殺してしまった
    そこで追悼のために、彼のことを書き始めるのだが
    じつはその正体が作者自身であることは、すぐに割れてしまう
    (執筆前年に単独自殺を試みている)
    貧乏に負けたと思われるのが嫌で、ポケットにお金を残しておくのだが
    結局死ぬのもやめて、こんな小説を書いている

    「虚構の春」
    レター教室なんてとても言えない
    どれもこれも独りよがり、そうでなきゃ白々しく取り澄まして
    読むに耐えない猿面冠者の妄想以下だ
    もっとこう、女生徒の日記みたいな色気のあるものを送ってほしい
    そんな願いの伝わる書簡集

    「雌に就いて」
    いい女がそばに居てくれたら自殺しないですむのになあ
    そんな理想を形にすべく、友人相手にシミュレーションを行うが
    最後はやはり自殺だった
    226事件の夜
    観客なし、ひたすら陰惨の漫才だった
    三島由紀夫などは、太宰のこういうところを意識したのだろう

    「創生記」
    独善的でなければ小説は書けない
    きちんとした小説などスランプのしるしにほかならない
    そのように嘯き、人に金を無心しては薬物に耽溺
    支離滅裂であることに首尾一貫を見ようとする、凄惨な決意だ
    心の平和の訪れは将棋に没頭したときだけなんだ

    「喝采」
    悲劇役者の柄じゃない、出世はもとより望めない
    だから涙の道化なんだな

    「二十世紀旗手」
    二十世紀はスキャンダルの時代だ
    やりたかないけどしかたない、というスタンスで
    生まれてすみません!とあらかじめことわってはいる

    「HUMAN LOST」
    いたわりを要求したのは太宰
    金銭を要求したのも太宰である
    その結果得られたのが麻薬中毒の苦しみだったとしても
    たどりついた場所が精神病院だったとしても
    すべて自己責任、自業自得というものだ
    しかし、にもかかわらず!被害者づらの太宰であった
    いちおう「人間失格」の原型とされている
    …精神が回復していく様子も書かれているので安心?してほしい

  •  これについて行けたら人生は多分もはや自分にとって意味がないのではないか、と思う程度に、借金と苦悩と言い訳に満ちた作品集であった。
     ヒューマンロスト以外は読み返さなくていい。

  • うわ〜。これはマジもんに気が違ってます。全編あますところなく気狂いピエロな太宰さんを堪能し、ドン引きさせていただきました。話題の「絶歌」読む気はないですがかの作品の1億倍はダウナーな狂気を味わえることを保証します。「絶歌」より絶対こっち読んだ方がいいですよ!向こうは「治ってる」けどこの時期の太宰さん治っていませんから。「虚構の春」は書簡のみで構成された作品でしたが結構好きです。「HUMAN LOST」は意外と癖になる変なユーモアを感じました。でも中学生が読書感想文に書くと家庭訪問されるからやめておこうね!

  • 太宰の感情に、激情に呑み込まれるという表現が正しい。

  • 天才作家がジャンキーになると、こんなブッ飛んだ文学が創生されるという見本のような作品集。よくもこんなに様々な言葉が湧いてくるものだと感心するが、線ではなく完全な点の文学である。後の代表作「人間失格」のプロトタイプみたいな「HUMAN LOST」で、内妻の悪口を書いた部分が逆に太宰の人間らしさを感じる。

  • 私の読解力が足りないので理解できないのかと思ったが、解説を読む限り最初から難解な文章らしい。
    でも、自殺にちょうどいい木を見つけて「善は急げ、というユウモラスな言葉が浮かんで」というような一文など、手記のような小説などは、ついクスリと来てしまう部分もある。

  • 読みながら、うあーどうしたらいいんだろう、何を感じればいいんだろう、わかんないってなった。
    太宰でそうなったのは初めてだったからどうしたらいいかわからなかった。
    でも不思議なことに、もう一回読みたくなる。

  • 支離滅裂でわかりづらい。
    でも、太宰を知るためには必要な1冊でしょうね。

  • 「二十世紀旗手」という
    華々しいタイトルに反して
    太宰の苦悩や混乱が
    感じられる
    読みづらいけど
    文章のリズムとか表現には
    ハッとさせられる

    古本屋かえりみちにて購入 

著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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