- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101010052
感想・レビュー・書評
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厭世的であり怠惰であり優柔であり頑固である主人公代助の考え方がかなり共感できはまった。昔好きだった女が親友と結婚したが、結局諦めきれず手を出してしまい、なんて完全に漱石的ストーリーだが、大正の西欧かぶれ感と純文学語体のマッチングがとてもきれい。本郷〜神楽坂〜神保町という舞台も親近感があり。
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定職に就かず、本を読み、花を眺め、散歩に出て暮らす。
慌ただしく文明が発展していた明治時代においても、代助は、社会生活での泥臭い抗争や利害から離れ、自身の精神に誠実に生きていた。代助の姿は、人によっては「頭でっかちな、ただのニート」と映るかもしれないが、私は代助は、人間が真に求める純粋な精神の持ち主だと感じた。
(『草枕』の主人公が、都会の喧騒を離れて山奥の温泉地を訪れた際に求めていた精神に通じている。)
ただ、その精神も、友人の妻への恋心を成就させるために発揮されるのであれば、待ち受けるのは破滅だ。
自身の精神に誠実に生きるのが希望だが、社会や他者とどのように調和を図り、折り合っていくべきか。そのバランス感覚は現代に生きる上で必要不可欠ではあるが、また同時にジレンマを抱えることになる。
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作中には多くの花の描写があった。
代助が活けた鈴蘭の花瓶の水を、三千代が飲む描写が最も印象に残っている。
これが何を暗喩していたのか、作品を読んでいる最中も読み終わった後も、あれこれ考えている。 -
「それから」を再読して、主人公や家族、女性達がいきいきと描写され、改めて漱石の素晴らしさを感じた。
高等遊民のような生活をしている長井代助は、友人の平岡の妻、三千代に横恋慕する。三千代とは過去深い心の交流があったのだ。しかし時代は明治、他人の妻をとることは許されない。代助は家族からも絶縁され、実社会の荒波の中を漕ぎ出す。 -
その時代では許されないと頭で理解しつつも、争う代助がよかった
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ニートをここまで正当化するように描けられる夏目漱石はすごいと思った笑
この時代の姦通罪がどれほど大きいのかを知っておくとなお理解しやすいかも。
登場人物が代助の思考に上手く絡んでて、代助の考え方がはっきりわかりやすい。 -
1月の「夢十夜」の読書会で久しぶりに漱石の本に触れたら、非常に心地よい世界であることを再認識しました。三部作の「三四郎」は高校生の頃と数年前と2回読んだので、「それから」を購入。素直に「面白かった」というのが印象でした。
ストーリーの展開は静かです。父からの援助で30になっても毎日私ぶらぶら暮らしている長井代助が主人公。実生活に根を持たず、散歩、読書、書生や嫂、そして友人の平岡とのおしゃべりに時間を費やしています。平岡の妻、三千代は代助がかって愛しながらも、友情から平岡に譲った女性。この小説は三千代に再会した代助の内面を中心に描く心理小説です。
上記のように地味な物語ですが、読み終えるのがもったいないほど夢中になって読みました。その理由は
1)ストーリーの動きが地味な割に、代助の内面の激しい動きが刻々と描かれること。神経質で敏感な性格で、これからの行動を決めかね、過去の行動については後悔するという、けっこう第三者を苛立たせる性格です。
「なぜ働かないって、それは僕が悪いんじゃない。つまり世の中が悪いのだ。もっと大げさに言うと日本対西洋の関係がダメだから働かないのだ」
「高等遊民」として独自の醒めた考えを持つ代助の思考は、神経質であったり、三千代のことを突然想起したりとジェットコースターのように展開します。この小説を面白くしている大きな要因と思いました。
2)解説にある通り、「それから」は「姦通小説」です。この「姦通」という主題が登場人物の人間関係に緊張をもたらしています。したがい、展開が地味な割には、引き込まれるような小説になっています。
当然ながら明治の親子関係、風俗が描かれていて、なんとも言えない心地よさがあります。やはり、読むべき小説のひとつと思います。 -
やっぱ夏目漱石好きだな。
門読まなきゃ! -
流石の筆致。純愛。