明暗 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.70
  • (105)
  • (135)
  • (195)
  • (17)
  • (4)
本棚登録 : 1973
感想 : 126
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (688ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101010199

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読み上げるのに3ヶ月かかってしまいました。漱石の長編の中では最も長いと思います。文庫で600ページ。なおかつ未完。本書は大正5年、朝日新聞に連載、漱石の死とともに終わっています。私は本書を、連続テレビドラマでも見るかのような気分で読み続けました。柄谷行人の解説には何やら難しげなことが書かれていますが、私は単純に普通の人間ドラマとして楽しみました。今でも十分通じるような登場人物の気分が描かれています。未完というのはつらいです。しかもすごくいいところで終わっています。ドラマが最終局面に達したところで終わっているのです。終わりが近づくに連れて、ちゃんとその理由が書かれているんだろうなあと心配になってきました。そして最後のページにたどり着いたとき、「おいおい、こんなところで終わるなよな」という気分でした。あとは想像するしかありません(別人の著した続編も出ているようですが)。ところで漱石の小説はいつもそうですが、細かい状況描写が多く本筋がいっこうに進みません。この600ページでは10日もたっていないのです。急に1年後なんて出てくる最近のドラマとはずいぶん違うんです。そういうのに慣れた人はしんきくさくて読めないかも知れません。私自身も、明治のいわゆる文学などはほとんど読んでいませんでした。(これはとってもはずかしいことだけれども。)それが何かのきっかけで(テレビで「文学と云ふ事」というのを見てだったと思う。)漱石の小説だけはすべて読もうと思うようになりました。まだ半分も読んでいませんがこれからも少しずつ続けていきます。できれば、中学生くらいのときにある程度読んでおきたかったなあと思います。わけが分からなくてもいいから。そして社会に出て、いろいろな経験をつんだ上でもう一度読んでみたかったような気がします。今こうして漱石の小説を読んでいると、もちろん時代的な背景はずいぶん違うのだけど、ものの考え方・感じ方というのは相通じるところがあるように思います。本書の清子という女性、最後の20ページくらいしか登場しませんが、その話しぶり、立ち居振る舞いからとても魅力ある女性に感じられます。それにしても小林という男は(この小説にとってどんな重要な意味があるにしても)本当に腹立たしいです。こんな男とどうしてつながっているのか、私には理解できません。みんなはどう感じるかな。

  • 150826読了
    序盤は文章の美しさを存分に楽しんだ。前半は話の展開が遅く、飽きてきた。後半になると物語にどんどん引き込まれ、最後、未完の二文字が重く心に答える。漱石先生、どう締めくくる積りだったのか?

  • 2012.06.13

  • 卒業論文

  • 第3話(11月5日放送)で、カフェ・シャコンヌのテーブルの上に置いてあるのが、この本。国語の授業で『こころ』を教材に選んだ国語教師・真琴が、夏休み中に漱石作品をおさらいしているところです。

  • 実は漱石の作品中、最もお気に入りかも。
    兎に角登場人物が皆周りの腹を伺いつつ、本音をひた隠す。
    と言うかこれは本当の現実だと思う。本音って誰も世に公言したことがないはず、だからこそ家族という最小単位であっても社会には緊張関係が絶えず存在する。
    しかしこの厳然たる事実にはあまり皆目を向けたがらない、何故なら精神的に厳しいであろうから。漱石はそれに拘泥し、延々とそれこそ終わりなき描写に終始する。
    未完だが、漱石には終わらせる腹積もりはあったのだろうか?
    色んな妄想をかき立てるある意味至高の本です、当方にとっては。

  • 漱石の晩年の長いが未完の作品。ただひたすら、人と人の間のどうにも薄暗がりのなかを探り探りの微妙な感情の鞘当のような、肚を割れない顔色の伺いあい。坊ちゃんとは対極の居心地の悪い展開がずっと続いていく。しかし、ところどころにドキッとするような示唆を与えることばがなんでもない会話のなかに散らばっており、自分のことを言われているようで余計に居心地悪くまた気持ち悪い。小林とか。しかも未完だし、余計におさまりが悪い。遺作がこんなんだなんて、お札に顔が載るよう人でも、やっぱり人が悪い。

  • 漱石未完の長編。

    実は未完だというのは本を最後まで読むまで知らなかった僕。
    それくらい先入観なしで読んでいたのがある意味奇跡かも。

    漱石の小説は結構すきなのね。
    なんかニヒリズムがどの主人公にもあるような気がして、
    津田もそういう類の人間だ。

    自分が本当に好きな女性と結婚できずに、
    堕落をしてあげく親の金が支給されないとなるととんでもないことだと言わんばかりの感じ。
    一応真面目な僕からすると働けって。

    各々の登場人物が非常に特徴あるように描写されていて、
    文章の美しさは三島由紀夫ほどではないけれども、
    いつも漱石の小説に惹かれるものがある。
    たぶん感情移入しやすいのだろうか。そうでもなければすらすら読めないよな。

    結局明暗というタイトルの意味が掴めないまま読み終わってしまった。
    だけど、それも読者にゆだねる終わり方なので、
    こういう本で読書会すると面白いのかもね。

  • 明と暗。
    夫婦、親子、男女、兄妹、貧富・・・
    数々の明と暗を登場人物に織り込みながら、時には明が暗となり、暗が明となる。
    心理描写は精細にそして奥深く、読む者を惹きつける。
    未完であることも作品として完成度を高めているような気もする。

    漱石を読む面白さの一つが、明治という価値観が純粋な形でぶつかり合う時代背景を知ること。
    社会主義の萌芽、資本主義の価値観に戸惑う中産者階級、自己に目覚める女性・・・

    以下引用~
    ・「普通世間で偶然だ偶然だという、所謂偶然の出来事というのは、ポアンカレーの説によると、原因があまりに複雑過ぎて一寸見当が付かない時に云うのだね」
    ・「僕は味覚の上に於いても、君に軽蔑されながら、君より幸福だと主張する如く、婦人を識別する上に於いても、君に軽蔑されながら、君より自由な境遇に立っていると断言して憚らないのだ。つまり、あれは芸者だ、これは貴婦人だなんて鑑識があればある程、その男の苦痛は増して来るというんだ。・・・」

全126件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

夏目漱石の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×