- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101036267
作品紹介・あらすじ
東京から引っ越してきた仁美、リーダー格で人気者の心太、食いしん坊な無量、眠るのが生き甲斐の千穂。4人は友情とも恋愛ともつかない、特別な絆で結ばれていた。一歩一歩、大人の世界に近づく彼らの毎日を彩る生と性の輝き。そして訪れる、それぞれの人生の終わり。高度成長期の海辺の街を舞台に4人が過ごしたかけがえのない時間を、この上なく官能的な言葉で紡ぐ、渾身の長編。
感想・レビュー・書評
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蓮華草(レンゲソウ)と読む。なかなか良い出だし。序章は女児が性に目覚める感じかな?読了。
田舎での男女4人の成長を描いている感じ。なかなか味のある作品。心太のカリスマ性も良い。
本の全体を表現できていないけど、まぁオモロイかな。
※オナニーってドイツ語なんだ。オナンという人物の名前が語源。
最後の村田沙耶香さんの解説が素晴らしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
恋愛より先に性愛に気づき始める過程とか、少年少女の成長の過程とか、本人的には秩序的ではたから見れば非常に不安定な状態の描写が素晴らしい。
何より、小学生から高校生までの具体的な描写と、死の第三者的描写を以て、学問、と銘打つセンス。人生の始点と終点のみ示して課程は読者に丸投げしたうえで、そこに学問を見いだせるはずだという、読者への信頼の厚さを感じる。
日々是学問。
馬鹿面白いだに!
2016.3.13 -
性と生きることはひとつのものなんだろうと思う。
山田詠美の本は、いつもそこのとこ突きつけてくる。
いやらしいとか、何言ってるの? あたりまえのことなのに? って。
7歳の主人公たちが出会って、心が通って、大きくなって、
小学生になって、中学生になって、高校生になって。
その一瞬一瞬どれもが、いつかどこかで経験したようなことなの。
よくぞここまで、幼少期の感性を、大人が思うよりもずっと見えていた世界を、
こんなに綺麗な文章で描けるなぁって。
ただただ、感嘆。
わたしたちって、
自分中心の一対一の関係しか目に入らない幼い頃があって、
大勢の中での自分、多人数の中での力動が中心の思春期がきて、
それから、自分にとってのひとりを見つけて、また一対一の関係に戻ってく。
でも、この本の主人公たちは、
どの子もどこかで、一対一の関係につながれたままのような感じがする。
幼い頃から解き放たれないままで。
なんか、そこがあやうくて、緊張感をあおる感じ。
「まっとうに死んだ人間が好き」 っていう言葉が出てくる。
なんだか、それもドキドキするような台詞だ。 -
胸がキュッてする話。
子供から大人になる過程。
仲の良かった5人が、
どんな風に死んでいくのか先に書かれているのが、
やっぱり人はいつか死ぬんだと改めて気づかされる。
そう思って読むと、5人のたわいもないやりとりがとても尊く感じる。 -
借り物。
初めての山田詠美先生。
学問といってもそんな学問もまあ確かにあるかといった感じ。
村田沙耶香先生の解説もよかった気がする。 -
山田詠美の主人公って、いっつも、すごい共感を取りにくるけど、実際は絶対こんなやついないって思うから、なんか近いふりして見下ろされてる感じで、思い出して嫌いになるタイプだ。
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立派な学問。
卑猥な話なんかじゃないね、読み終わってそう思った。
山田詠美が描く「男の子」はいつも不思議で素敵。 -
今までの本とはまったく違う山田詠美さんの箱庭にスポッとはまってしまったようです。ワタシの知らなかったパラレルワールドがこんなところにありました。新しい自分の庭を発見しました。なんだかバンザイな気分です
古いようで新しく新しいようで古く感じる楽しい文章です。フトミちゃんのこれからを楽しく想像してみたくなりました。 -
何よりタイトルが良いなあ。ある意味『僕は勉強ができない』と対になっているかのような、見た目の意味は正反対のようで、テーマは同じというか、ざっくり簡単にまとめてしまえば、学校で習う勉強だけが学問じゃなくて、人生そのものが学問なんだよってことだと思います。うん、良かった。
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小学生の時、親の仕事の都合で美流間という田舎町に越してきた仁美。そこで知り合った同じ社宅のチーホと学校でも町でも一目置かれている心太、食べることが大好きなムリョ。主にこの四人の子供らしい仲の良さや何気ない遊びの中に見出せるきらめきを描いている。でも、いずれも大人から観た子供像という枠を出ない。性の目覚めについても描かれているけど、性の目覚めを赤裸々に描くこと自体がもう定型化しちゃっているから今更山田詠美でこんなの読むとはな、と期待はずれ間を抱いて読み勧めていた。
ところが突如間欠泉みたいに沸きあがる心太の僻みっぽさとかむなしさが出てくる(三)あたりから夢中になり、すっかり子供じゃなくなった彼らのやり取りに夢中になり。そして語られることがない冒頭の死と最後の死の間に横たわる関係。気になる。でも、気になったままでいいかなと思う。「ずっとついていく」と決めた仁美の言葉だけで十分だ。人の一生をこんなふうに語ることも出来るんだな。
山田詠美を読んだのは3年以上振り。デビュー作から順を追って貪るように読んでいた頃とは違うときめきを味わえた。