夫婦善哉 決定版 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101037028

作品紹介・あらすじ

惚れた弱みか腐れ縁か、ダメ亭主柳吉に懸命に尽くす女房蝶子。気ィは悪くないが、旨いもん好きで浮気者の柳吉は転々と商売を替え、揚句、蝶子が貯めた金を娼妓につぎ込んでしまう。新発見された「続夫婦善哉」では舞台を別府へ移し、夫婦の絶妙の機微を描いていくが……。阿呆らしいほどの修羅場を読むうちに、いとおしさと夫婦の可笑しみが心に沁みてくる織田作之助の傑作六篇。

感想・レビュー・書評

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  • 夫婦善哉と続夫婦善哉の他に短編が幾つか収録された本。

    表題作の夫婦善哉・続夫婦善哉では、大阪の貧しい商人の娘蝶子が芸者になり、懇ろになった妻子持ちの客との貧乏暮らしの日々が描かれる。

    とにかくとにかくもう、夫になった柳吉がどうしようもない放蕩ダメ亭主。理髪用品、果物、関東煮、カフェ、別府に移ってまた理髪用品、と色々お店をやってたくましく生きているが、ほぼ毎回以下のパターン。

    節約したり金借りたりして開業資金を作る→店がんばる→亭主が事業に飽きる→芸妓に散財→亭主を折檻・数日逃亡→店畳む→金貯める&借りる…のループもの。読んでてああああああああああまたやった、という、感想がため息と共に浮かんで消えていきます。

    よくもまあこんな相手に愛想尽かさないもんだなぁと思いつつ、多分お互いがお互いにしかハマれない超稀有な関係なのかもしれない、と前向きに捉えることにしました。

    こんな夫婦は多分現代にはなかなか成立しなさそう。
    「昔はおおらかな良い時代だった、大阪下町はやっぱりなんだかんだ人情味溢れてやがるぜ!」みたいな美談着地は自分は到底できないなぁと思った。

    六白金星
    妾の子供だと分った兄弟が成長するにつれ少しずつ特に弟の楢雄が壊れていく少し不気味さを感じるお話。救いはないまま終わる。

    アド・バルーン
    じわっと良い終わり方。継子やら妾の子やら、一筋縄ではいかない育ちの子が成長していく過程を描きがち。しかも良い話になるとは限らず、むしろ不幸や理不尽が横行する。でも最後まで読みたくなるし日々を大切にしようと思える、不思議な作風だと思いました。

    世相
    織田作之助の戦時中〜戦後辺りの自伝?なのかな。本当なのか作り話なのか、前提知識が無いから分からないが、普通に面白かった。下町の貧しさでドン詰まった市井の人々を描くのが得意な作家なんだなーということはよく分かった。

  •  文章で読んだ。そしてラジオで聞いた。音にして聞くとより良さが伝わってきた。努めて端的に描こうとしているように思う。そしてこの手の作品の続編が冗長になるのは良くあることと感じる。
     印象的なのは銭勘定を詳しく述べているところだが、西鶴の影響か。他に収録されている短篇も楽しく読んだ。

  • 太宰のダメニンゲンとはまた違ったダメニンゲンオンパレード。
    でも、優しさが滲んでいるんだよな、作者の。

    最後の『競馬』が読み易かった。
    書き慣れてくると作家も上達するんだな。

  • ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    『夫婦善哉 決定版』
    著者:織田作之助
    装幀:新潮社装幀室
    装画:信濃八太郎
    発行所:株式会社新潮社
    初版発行:1950年
    発行:2016年 新潮文庫
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    気が弱く家の金を浪費するダメ夫の柳吉と
    肝っ玉母ちゃん的な気の強さを持つ蝶子という
    大阪を舞台にした夫婦のドタバタと人情を綴った
    『夫婦善哉』を代表作に持つのが
    オダサクさんだ。

    ダメ夫 柳吉のダメさ加減に終始
    イライラしながら読み進め、
    ラストの大阪法善寺境内にある
    「めおとぜんざい」へ行き、
    2人でぜんざいを食べるという
    半ば強引な結末で〆るのが
    オダサクさんだ。

    そして、
    そんなオダサクさんの代表作『夫婦善哉』の
    未発表続篇が2007年に発見された。
    今度は大分別府に舞台を移して
    そこでもドタバタを繰り広げる。
    この続篇は蛇足感があり、
    そのまま発表しなければいいと個人的に思えた。
    だが発表しないでも続篇を書いたのは
    紛れもないオダサクさんだ。

    その他の短篇に、
    複雑な環境下での自己の出自に対する
    葛藤や煩悶を描いた
    『六白金星』『アド・バルーン』、
    私小説風の『木の都』『世相』『競馬』を掲載している。
    個人的に1番のお気に入りは、
    阿部定事件を元にした短篇『妖婦』構想に着目した
    『世相』だろうか。
    思わずまだ未読の『妖婦』を読んでみたくなった。
    さすがはオダサクさんだ。

    オダサクさんはわずか33歳で早世してしまった。
    だがその間、
    7年間の作家生活で書いた短篇作品は50を超える。
    まだまだ面白い作品は残っている。
    これからもその短篇たちを追い求めていく気にさせる。
    それがオダサクさんだ。

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    ⚫︎目次情報⚫︎

    夫婦善哉

    続 夫婦善哉

    木の都

    六白金星

    アド・バルーン

    世 相

    競 馬

    解 説 青山光二/石原千秋
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

  • 2024.02.10読了

  •  
    ── 織田 作之助《夫婦善哉 1940‥‥ 決定版 20160827 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101037027
     
     
    (20231128)

  • 2023.9.28 読了。
    「夫婦善哉」「続 夫婦善哉」「木の都」「六白金星」「アド・バルーン」「世相」「競馬」7編の短編集。

    初読のオダサク作品。
    「夫婦善哉」「続 夫婦善哉」の勝ち気な蝶子とどこかだらしのない柳吉の切っても切れない、転んでも前にどんどん進んでいくリズミカルでユーモラスだけれど根底には気づかない程の哀愁も漂わせている人間臭さ溢れる2作品が代表されるが、「木の都」になると書き出しから一気に静寂な雰囲気になり、他の短編も読んでいくと作者の書き方の特徴が全作品に収められつつも、異なる世界観に引き込まれる部分があり不思議な気持ちにもなった。
    どの短編も涙が滲みそうになってしまう感覚を残していくような小説。

    解説にもあったけれど、地名や細かいお金の勘定がたくさん出てくる。大阪に詳しくないので地元民や地理に詳しかったらもっと面白く読めたかもしれないとつい考えてしまう。

  • 関西の「銀の匙」のような回想がとても良かった。恐ろしく面白い

  • ①文体★★★★☆
    ②読後余韻★★★☆☆

  • 大阪の情景が眩く心を打ちます。
    夜店の下りは何度読んでも気持ちが良い。
    人情味溢れる人の営みに織田作先生の優しさが垣間見えます。面白かったので他作も読もう

  • 夫婦善哉
    こんなダメな夫に付いていく妻の気持ちがわからなかったが、この本を通じてこういう関係を受け入れることができた。この話は過度かもしれないが、夫婦の関係をうまく描写しており夫婦とはこんなものかと思った。

  • あーえーなー
    夫婦善哉は何度読んでも良い

  • 最近仕事で大阪へ行くことが多い。それを知った友人が貸してくれたので読んだ。
    町田康の夫婦茶碗が僕は好きだ。その直系の祖作にあたるこの本は、生き生きと活気のある大阪と人間を描いている。大阪の人たちがこの作を好む理由がよくわかった。

  •  出世作の夫婦善哉が収録。

  • 単行本の「夫婦善哉」に加えて、数作の短編付き。
    夫婦善哉だけを読んだ時には、良さが分からなかったが、大阪の情景を描く短編も詰め込まれたこちらの1冊を読んでいると、織田作之助の良さが、単行本の時よりは感じられた。

    どの作品にも出てくる私小説的「わたし」は主人公そのものではないらしいが、すべてに共通するのが放浪性。トラさんに似た世界の関西版といった風情。

    木の都は、他所での知り合いが自分の故郷で古本屋を開き、その家族を見守る話。古き良き時代の日本の、心やさしき交流が描かれる。

    六白金星はそのできの悪さゆえに、父親から冷たくされる妾腹の子の話。なんとなく、後味が悪い作品。

    アド・バルーンはちょっと何が言いたいのか曖昧。またまた奉公先を変えてばかりの主人公。だけれど、意外にずっと胸にいるの年下の幼いころからの知り合いの女の子。その子への気持ちはくすぶり続け、彼女を追いかけてみるが、迷惑がられてしまう。ただひとつ、フラフラとしなかった恋愛では気持ち悪いと言われてしまうのが、なんだか切ない。

    世相。これで売れっ子になったらしいが、分かる。これが一番いい。私小説なのかどうか分からないが、とにかく作家のわたしが主役。戦争前後の市井。。。というか、水商売の一情景を描き出す。男性ならあわよくばと想像を楽しむのであろう、一夜限りの関係を楽しもうと積極的な飲み屋の女将、ふじこちゃんみたいな服を着ているのも笑える。それに、阿部定事件の入れ込み。それらが大阪の当時のリアルな情景、発展性がなく、ずっと同じ作風、題材で小説を書き続ける言い訳などに織り交ぜられる。

    解説によると、織田作之助は全くのフィクションと言ったらしいが、実は結構な割合でノンフィクションのモデルがいるらしい。この人の作品を何作か短編集として読んでみての感想が、想像力のあまりない人だと思ったので、さもあろうと思った。

    さらに、何がいくらとか、どこの角を曲がった~屋など具体的な描写が彼の特徴の1つであるとのことだけど、本人が世相の中で、その理由を解説しているのも興味深い。「曖昧な思想や信ずるに足りない体系に代わるものとして、これだけは信ずるに足る具体性だと思っている」

    私が思う特徴としては、戦前。戦後のやる気がぎらぎらしているのか、停滞したムードなのかよく分からなくて混とんとした当時のぬるい空気感を描いている点かなと思った。引用した分については、現代っこにも当てはまると思った。それとも、若者は或る意味、どの時代でも無気力なのかもしれない。

    この人は、大阪、しかもミナミを愛していたんだろうな。記録に残したかったんだと思う。

  • 表題作以外にも5つの代表的な短編が収録されている。表題作は、映画化・ドラマ化もした人気作だが、これよりも他の短編のほうが楽しめたように思う。このバージョンの目玉だろう「続」は、ストーリー展開に強引さが感じられ、無理やりに”終らせた”という雰囲気が漂っていて、あまり個人的には楽しめなかった。未発表に終ったのも解る気がした。

  • とにもかくにも登場する食べ物がおいしそう。一番味方でいてほしい女性に対して食べ物でつるのは、ダメ男の常套だよね!単発ローコストで許しを得やすいうえに、自分(ダメ男)をかわいく見せられる。

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著者プロフィール

一九一三(大正二)年、大阪生まれ。小説家。主な作品に小説「夫婦善哉」「世相」「土曜夫人」、評論「可能性の文学」などのほか、『織田作之助全集』がある。一九四七(昭和二二)年没。

「2021年 『王将・坂田三吉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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