ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと (新潮文庫 お 113-1)
- 新潮社 (2023年4月26日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (388ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101045719
作品紹介・あらすじ
ボルネオ島の森で、狩猟採集中心の暮らしを営む人々、プナン。彼らは借りたものを壊しても謝らず、礼も言わない。感謝や反省の概念がないのだ。所有感覚も希薄で、食料は皆で分け合い、子どもも実子養子の区別なく育てられる。長年フィールドワークを続ける著者は、資本主義にとらわれないプナンとの生活の中で、人間の生の可能性を思考していく――。常識をひっくり返す、刺激に満ちた一冊。
感想・レビュー・書評
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プナンの人々との生活のなかで、私たちが当然とか、美徳としている価値観をあらためて問い直すところが面白い。
「ここまでのところ、反省することと、反省しないことに関して、学問の中で何が論じられてきたのかを調べることで、何が分かったのかというと、けっき、今の時点では、何も分かったとは言えないのである。情けないことである」
プナンの人々が感謝や反省をしないことについて、でも、そうした社会が機能している事実が面白い。
反面、我々は、よりよい社会と願いながら、どんどんと病んでしまっている。
便利でありながらも、不満が消えることはない。
そうした根本を見つめると、自分と他人の境界線を、もっと曖昧に保つような。
つまりは、皆で生きていくことがベースにある生活に、ヒントが隠されているようにも思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
共同体としての社会が密というどころか、
現在の日本に住む我々が想像できないぐらいの、共同体として生きることが当たり前で「1人はみんなのために」が暗黙の了解として全員に了承されている社会
贈与の霊とか
とても面白かった。。
ただ、なんか読み物としては、星一つにしてしまいました -
先日読み終えた原ひろ子の名著「子どもの文化人類学」(ちくま学芸文庫)にひじょうに親切な解説をつけてくれた(手にとって読み始めるきっかけになった)文化人類学者の、タイトルからしてずっと気になってた本がちょうど文庫になったので迷わず買った。
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感謝しましょう、反省しましょう、ボルネオ島の少数民族ブナンにとってこれは間違った思い込み。そんな価値観の生活に興味がわく
#ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと
#奥野克巳
23/4/26出版
#読書好きな人と繋がりたい
#読書
#本好き
https://amzn.to/3oDyzB7 -
先に「人類学者と言語学者が森に入って考えたこと」奥野克巳氏と伊藤雄馬氏の対談本を読んで、とても面白かったので、こちらの文庫版を購入。前途の対談本のおかげで、知識があり、非常にスムーズに読めた。
人類の特性は何なのか?という問いに対し、我々はあまりにも資本主義に侵蝕され、中々メタ認知できないが、この本はとてもよくリフレクションをかけてくれる。
ありがとうもごめんなさいも無いとはどういうことなのか?日本社会に生きるものとして、中々想像し難い文化だが、この本は順序立てて、我々にその文化をアプローチしてくれる。
プナンは個人としての集団ではなく、個は消され、集団としての人類の強さや生き方を教えてくれる。所有ではなく共有、そして贈与へ。
また、デスネームという文化も、過去や未来に囚われず、今を生きる事に集中する慣しのように感じる。過去や未来があるから、我々は所有欲を持ち、思い悩む。マインドフルネスは、今のこの状態と向き合う事である。プナンないし、他文化を学ぶことは、人生を俯瞰し、内省を促す事になり、人類への理解が深まるのかもしれない。 -
人間のコミュニケーションから私が最も大切な言葉のうちのひとつだと考えてるありがとうとごめんなさいを抜いたらどうなるのか気になって購入。
最初は自分の中の固定観念にとらわれすぎていたため読んでて「これで本当にコミュニティ成立してるの?」、「これはプナンの方達が気づいてないだけで本当はあんまり良くないんじゃないか?」といった考えが頭の中に浮かんでくることもあった。
でも読んでいくうちにそれは現代日本の考え方でしかなくて、彼らには彼らの考え方や生き方があると受け入れられるようになった。
個人の責任を全然追及しないプナン人たちの社会はある意味では日本よりも精神的に楽そうなので、案外日本よりも暮らしやすそうと思う人もいるかもしれない。
現地の文化や自然環境、プナン人の現代文明との折り合いの付き合い方など幅広い情報が書かれていて読んでいて面白かった。
本編もいいけど個人的にはあとがきの方が興味を惹かれた。
(本編がつまらないという意味ではなく、あとがきは文庫化にあたって追記されたものなので、より今現在に近い状況であるコロナ禍やそれ以降ののプナン人の様子を知ることができて面白かったから。) -
ボルネオ島に暮らす、人口約1万人の狩猟採集民のプナン。その中でもサラワク州ブラガ川上流の500人ほどのプナンと文化人類学者である著者は暮らした。本書は、著者が森の民プナンと暮らした中で実際に見聞きしたことから考えたことをつづったもので、「ありがとうもごめんなさいもいらない」というのはどういうことなのだろうとの思いから読んでみることとした。まあ、ほぼタイトル買い。
(まだ途中) -
日本人とか、文化的な生活をしている人の感覚で読むと、その感覚を壊してくれる。こうあるべきとか、普通こうだろう、とか言ってることが陳腐に思える。それぞれの世界で精一杯生きる。正解なんてない。すべき、なんて言葉は、軽いな!
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ボルネオ島の狩猟採集民、プナンの文化に関する本。
その日暮らし、原始的な暮らしに加えて感謝の言葉や謝罪、反省がない、死者の名前を呼ばない(動物にも死んだ時用の名前がある)、学校に行かないなど独特な文化について綴られている。
特に反省をしないことについて、反省しなければ誰か・自分を責めることはないので精神的にには良いものの、全く反省せずに同じことを繰り返すこともどうなのだろうと思う。
プナンにはほぼ「今」しかない一方、日本人は反省(過去)、不安(未来)が多い印象がある。
個人的には過去・未来のことを考えすぎているので適度に「今」を生きる意識を増やしても良いと思った。