花紋 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104072

感想・レビュー・書評

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  • 主人公に仕えた老碑の回想を中心に、徐々に冒頭に提示された謎が紐解かれていく。場面によって語り部の視点を切り替えるなど、著者の作品には珍しい型式が見られるが、全体の構成ががっちり構築されている点は相変わらずで、ストーリーにぐいぐい引き込まれ、ラストも見事に収まっている。読後の満足感は充分で、ミステリ要素があるから読み返したくもなる筈。ヒロインは歌人だが、同時に大地主の総領娘でもある。そこが物語のキーになるが、舞台背景になっている、多分に封建的な戦前の地主と小作人の関係やしきたり、そして因習は、現代の我々には馴染みがない分、作中で取り交わされる短歌よりも、むしろ作品の根幹になっている。でなければ、登場人物たちの思考や行動は、小説の世界とはいえ、あまりに浮世離れしてる事になるだろう。日本にまだ江戸時代的なにおいが残っていた頃のお話。

  • 2016/6/10読了
    大きな地主の惣領娘と言うことで、家の重みと、また誇り高い性格が、主人公を追い詰める。
    現代とは異なる、「家」の格式や身分制度が、こんなにも人々を苦しめるのか。

  •  早逝が伝えられていた一人の女性歌人が、実は生きていたーーおもろないわけない。期待を裏切らず、真相が明らかになっていくとともに加速度的に興味も増し、ページを繰る手が止まらない。時代背景ゆえに調べ学びながらの読書となったものの、見事に引き込まれ僅か2日ほどで完読してしまった。

     早逝したという略歴を訂正する、その過程で紐解くことになる一人の女性の人生は、あまりにも壮絶だった。
     葛城郁子は農地改革以前の大地主の総領娘として生まれた。
    「畑を借りている人って、お米を作ってもお麦しか食べられないの?そんな可哀そうな人から、どうして地主がお米を取ったりするの」
     僅か6歳でそんな疑問を抱く彼女は、しきたりや世間体よりも「自分の心」が大切だと考え、それ故に多くの苦しみを抱えることになる。彼女の前には、家のために生きなければならず、自らの意志をまったく無視される人生しか選択の余地がなかったからだ。
     これは、侍女のよし、郁子が恋に落ちた国文学者荻原秀玲が語る郁子についての物語だが、夫が語り手となった場合まったく違う作品になりそうである。郁子さんは可哀そうな人だけど、その夫もまた、全く愛されない妻を持ち、最期は世間の目を忍ぶ地獄牢のような場所で狂人に仕立てられ死に征くなんて、いくらなんでも可哀そうかなと・・。何よりも、この時代の"常識"が諸悪の根源だと思う。こんなに女性が生きづらい時代は真っ平御免だけど、こうして読む分には非常に興味深く、炎が燃えるように強く生きる女性の話はたまらなく好き。

  • 粘着質で濃厚な世界観がたまらないです。
    情念の描かれ方が良いです。

    現代からは想像もつかない、戦争と旧態依然として家に殺される女流作家。

    想像がつかないだけに重く、知らない価値観に蹂躙されます。

  • やはりこの人は白い巨塔以前と以後にわけることができるな、筆のタッチが違うような、話も女性にスポットをあてたものが多いように思う。
    大地主の家にうまれ、300年の家の風習に雁字搦めにされながら生きた女性の話。
    ミステリタッチの部分もあり謎を解きながら読めた。
    ろくな男がいない苦笑

  • 河内長野出身なので、地名など懐かしく読みました。現代シーンはいらない気がしましたが・・
    この時代の女性の生き方、葛藤、興味深く読めました^^

  • 河内長野の大地主葛城家の総領娘として多くの人にかしずかれて育った郁子。やがて歌人として花開きながらも、その人生はあまりにも激しく過酷で悲しいものだった…。
    明治の大地主の因習と、複雑な家庭環境。一概に誰が悪く誰が正しいとも言えず、郁子でさえも時に悪魔となり時に悲劇のヒロインとなる。
    解説では結構辛口に評されていたが、これはこれで趣も感じられる、深みのある作品だと思う。

  • 2014/4/25

  • 『大地の子』『沈まぬ太陽』で知られる作者だけに、ヒューマニズムあふれる救いを期待したのだが、救いようがない。旧家の総領娘でありながら歌人としての才をもつ貴婦人の半生。てっきり初恋の学者に懸想して家を傾けた内儀の話かしらんと思っていたが、そっちの淡い想いは軽く、むしろ夫との泥沼の愛憎劇がとにかくひどい。女性の権利が制限されていた時代の悲劇なのだろうなと思う。解説では養子婿に同情的であったけれど、いちばん人間として外道なのは、この人だろう。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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