- Amazon.co.jp ・本 (138ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101113142
感想・レビュー・書評
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ベースになっているのは別の短編集に収録されている「アポロンの首」。あちらは首っぽく見えても実際には植物でしたが、今回は本物の生首。三島よろしく切腹して介錯された美少年テロリストの首(近未来の医学で生かされている)を預かることになった政治家の孫娘がヒロイン(登場人物がつながっているので桂子さんシリーズでもあるけれど本筋とは関係ないのであまり気にせず)。
生首を愛でる姫君のイメージはサロメか桜の森かという耽美さですが、最初は無反応に生かされているだけだった首が、だんだん意思表示できるようになっていくにつれて、逆にグロテスクな印象を受けるのが不思議。美少年の首も植物だったら満更でもないけど、さすがに本物の生首は欲しくないや(笑)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【あらすじ】時は21世紀、なお権勢を誇る元元首の邸宅に、一人の青年が三十過ぎの男と共に乱入、声明文を読み上げると切腹した。事件の真相は謎に包まれたが、介錯され、胴体から切り離された青年テロリストの首は、最新の医療技術によって保存され、意識を取り戻す。首の世話を任された元首相の孫娘・舞と、首との奇妙な交流が始まった……。
首だけで生きているテロリストの青年の首を預けられた舞が、生まれた時からハイソな暮らししかしてこなかった女子の自分の世界目線で周囲を見る、と言うのが裕福が故の大らかさで逆に偏見がある様でない、と言う、あくまでも自分の興味中心なとことか。高い教養とか当たり前に自分にあるモノで、それを鼻にかけてもいないが隠してもいないとこがいい。でもまあ、個人的には舞が男子であった方がもっと面白かったろうな、とは思う(笑)。ポポイの切腹を介錯してから自害した青年との関係がホモセクシャル的と噂されてる真相が出ると、実は…な気がしていたが、結局何故青年がテロ行為を行ったのかは明かされずに終わってしまったが、とても不思議な感触で読み終えた。
ポポイが何故元首相宅へ乗り込み、声明を述べてから切腹・介錯されたのか…美形なのに印象の残らない大人しい少年時代を送った裕福じゃない家で育った少年が、何故テロリストまがいの行動を起こしたのか、全く謎は解明されないんだけど、解明されない、と言う下りも文中にあるが、関連作はないのか…昨日、色々ぐぐってて首だけの犬を…と言う実験映像(真相はやぶの中だが)見ただけに、テロ行為をして自害して、切って落ちた首に装置を繋いだら頭だけで生きてたからやってみた、ではやっぱやるせない。舞の下した判断は慈悲や人間の非道な行いに対する憤怒などではなく、ポポイが老化し始め美しくなくなっていくからだろうしなぁ。 -
倉橋由美子の「桂子さん」シリーズもの。三島由紀夫の自決を思わせる、非常に知的かつ幻想的な倉橋ワールドを堪能できる一冊です。生命体や思考といった複雑なテーマを扱いつつ、ラジオドラマとして書かれたということもあってか読みやすくお勧め。
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雑誌の紹介で読んだのですが読後怒涛のように倉橋さんのを読み漁った思い出が。ハードは旧仮名遣いで雰囲気が良かったのに文庫だと現代仮名遣いになってしまっているのが残念。