- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101115016
感想・レビュー・書評
-
役名:汐見茂志
成功率が限りなく低い手術をわざわざ受けるのは、自分を死刑にするため。理知と繊細ゆえに友人との友人を超えた愛も実らず女性との恋も実らず、病に倒れる。超絶知的デリケートな美しい小説。主人公の名前も好き。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
凡作。
-
昔、哲学に進む人は自殺する人が多いから怖いと思ったことがある。また興味を覚えたこともある。青年期には、生について思索し、自我を覚え、孤独を感じる。汐見はその思いの強い覚めた男性だった。また千枝子は感受性の強い女性だった。二人が結ばれていたら幸福だったか不幸だったかわからないが、大きな転機になったかもしれないと思うと、汐見の最期はやはり残念だ。2017.4.14
-
忘我の境地で、とまでは言わなくとも、多少はバカにならないと人を愛し通す事は出来ないんだな、と感じた作品。
藤木も千枝子も僕を愛さなかった、と汐見が述懐するのですが、もう見当違いの絶望がやるせなくてやるせなくて…。
そんな物悲しい話の中で、夜船でのひとときは涙が出るほど美しかったです。あそこが間違いなく汐見達のターニングポイントだったのに。 -
叶わなかった2つの愛の記録。
弱くて、繊細に理想を求めてあがきつづける青年の心がいたいたしい。
p.112
「愛していれば苦しくもなるよ。」
「でも僕にはそれが重荷なんです。(略)
僕の孤独と汐見さんの孤独と重ね合わせたところで、何が出来るでしょう?」
「孤独だからこそ愛が必要なのじゃないだろうか?」
「僕はそっとしておいてほしいんです。」
「僕は厭だ。」
全然かみ合わない、現実を見ていない汐見。それでも運命の方向が変わらないけれどちょっとした偶然が、煌めいて感じる。
上引用からの
p.150「だって一人きりで死ぬのはあんまり寂しいもの。」
との落差に心を打たれる。 -
相手の姿そのものを見ず、自分の理想を重ねてしまうと評される汐見。彼の記憶として2冊のノオトを辿るとき、春日や立花など、その傍らを通り過ぎた人々が与えた影響が見え隠れしていく。
また、しがらみに囚われ、汐見の理想のような愛に疲れて拒絶を続けていた藤木忍が、一瞬間のみにおいてその愛を許容しようとしたときに見せたエゴイズムがある。この小説の中で最も美しい箇所だと思う。ヒトは誰でも、相手に理想の姿を見出す。第二の手帳における千恵子のように幻滅を恐れもする。汐見が孤独に美を見出したのは明らかに春日の影響だろうが、彼が、若さの潔癖のままに美を求めなければ、人生の中では納得するわうな「幸福」は存在しただろう。戒めとして何度か読み返したい。 -
大学時代の友人の紹介で読む。紹介がなければ読まなかった作家。
-
偶然知っている手に取った本だったが、この出会いに感謝する。孤独と愛という、人間の永遠のテーマについて扱った傑作だと思う。
人間は孤独だからこそ愛することができるというのはよく言われていることだけれど、主人公茂思は孤独であるがゆえに愛していながらも肉体的な意味での愛を達成することができなかった。これは彼がおかしいという話ではない。彼があまりにも孤独を確固なものとしていて、そしてそれゆえ
に純潔であったからだ。
難しいことなど考えずにただ愛すればいいともどかしくもなるが、理解不能というわけでもないから切ないやら悲しいやら…。
茂思と藤木兄妹2人は思い合っていたのにすれ違った。そのことにもより一層悲しくさせられる。
結局のところ真には分かり合えないということなのか、それとも。 -
『地獄』に似てる。
-
サナトリウム話