日本三文オペラ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101128023

作品紹介・あらすじ

大阪の旧陸軍工廠の広大な敷地にころがっている大砲、戦車、起重機、鉄骨などの残骸。この莫大な鉄材に目をつけた泥棒集団"アパッチ族"はさっそく緻密な作戦計画をたて、一糸乱れぬ組織力を動員、警察陣を尻目に、目ざす獲物に突進する。一見徒労なエネルギーの発散のなかに宿命的な人間存在の悲しい性を発見し、ギラギラと脂ぎった描写のなかに哀愁をただよわせた快作。

感想・レビュー・書評

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  • それこそ「モツ煮込み」みたいな本だった。

    「モツ」=好きな人はとことんハマるが割と敬遠する人も多い戦後のチョンブラという食材

    「煮込み」=鮮やかな場面展開と豊かな描写で万人が引き込まれやすいような味付けがなされた調理法

    食べだしたらとまらない私の好物でした。

    「まるでちょっとした塵芥山」
    「悪臭を発する都会のひき肉」
    「白内障でつぶれた目のような水たまり」
    と冒頭6項のたった1ページでここまで無様に形容された主人公が、徐々に組織の主要メンバーになっていく成長過程は、生々しく野卑なスラム描写で溢れた文中においてはそれこそ一種の箸休めになっている気がしないでもない。

    あと「フクスケ」という名前が贅沢すぎる。主人公がなんだかんだ本質を掴んでいたり多少有利なポジションを獲得する設定は、開高健の作品に共通していると思う。

    なんていうか別に社会批判の内容でもないだけに読み終わって考えさせられるものもなくあぁ面白かったで終わるあたりスッキリしてていいな。こってりしてるのに実はあっさりというか。

    あと割と驚いたのが文中に「ブレイン・ストーミング」という言葉が出てくること。昭和34年だから1959年か。当時すでにその言葉があり、かつ渋谷あたりに生息する若手ビジネスマンがドヤ顔で使う「ブレストからやろうよ」と正に同じ用法で使われているのに驚いた。新進気鋭の若者たちよ、現代文学を読もう。そして謙虚さを知ろう。とか言いだしたらうるせー先輩扱いされるんだろうな。

  • 大阪城に隣接し、終戦前日の空襲で壊滅的に破壊されたアジア最大の兵器工場・大阪砲兵工廠。そのそばには、長く雨ざらしにされた膨大な鉄屑を盗み出し業者に売って生きる通称アパッチ族が暮らす部落があった。
    前科者や食い詰め者からなるアパッチ族は幾つかの組に分かれ、集団で夜間に守衛たちの目をかすめ、半ば地中に埋まった機械類を掘り起こし、一人100㎏を超える鉄屑を肩に載せて疾走して盗み出す"先頭"や、埋蔵物を探す"アタリ屋"、見張り役の"シケ張り"など組織された集団だった。
    剽悍無類で野放図なアパッチ族の生き様と、その終焉を描いた実話ベースの話です。

    若かりし頃の愛読書。多分、20年ぶりくらいの再読です。
    開高健、すでに忘れ去られようとしている作家さんかも知れません。小説家としては寡作で、むしろ釣りや食に関するエッセイの方が有名かもしれません。しかし、その独特でエネルギッシュな文体やテーマは革新的でした。
    血と分泌液にまみれた牛の内臓、あらゆる物が溶け出し、重く粘っこい窒息性の酸液となった腐臭にあふれる運河。つっかえ棒によりかろうじて立っているバラック。そこに漂着したアパッチ族の剽悍、猥雑、卑陋、濃密、凄惨な男たち。そこには観念的な綺麗さなど欠片もなく、ただ暴発するむき出しの生命力が躍動するばかりです。そして、ある意味その活動が華やかであったが為に、どこか哀愁溢れるその終焉。見事な描写です。
    ただ、そのエネルギッシュな生命力の発露に若い頃に受けた強烈で心躍るような感動は浮かびませんでした。年ですね。

  • 大阪で大学生活を送ってたころ、バックパッカーとして世界を旅してた東京の友人をジャンジャン横丁~飛田へと案内したことがある。
    四天王寺でホームレスの方からもらったた缶コーヒーを飲みながら、世界のどこより衝撃的だった、と感銘を受けていた。

    噂には聞いてたアパッチ族、で噂ではやたらめったら面白いと聞いてた開高健の「大阪三文オペラ」をようやく読む。
    ガツガツとして、生々しく、ぬらりとした表現、汗、モツ煮込み、どぶ川、の匂いがぷんぷんする。うん、これだけ嗅覚に訴える小説というのはすごい。

    「アジール」として理想化されているきらいもあるが、アパッチ族のアナーキーな労働体系は非常に興味深い。だが、それも埋蔵されている資源があってのこと、資源が不足(警察、財務局の管理の強化)により崩れる。
    そういうときに生じるのが「デマ」。この情報をめぐる戦いが非常に面白い。
    埋蔵されてそこにある鉄の塊と捉えどころのない「情報」、この二つがアパッチ族を混乱させる。

    あー、ジャンジャン横丁のホルモンうどんが食べたい。

  • 戦後の大阪に現れて工廠跡から夜な夜な金属を盗み出したアバッチ族たちの、栄枯盛衰を描いた本。とにかく猥雑で、しかしながら、生命力に満ちている。

  • 灯火が消える直前に放つ閃光、それに虚無を見るか、力を見るか。

  • (欲しい!/文庫)

  • 焼き肉のホルモン描写の臨場感で目の前にあるかのように錯覚した。またホルモンを食べたくなった。
    予想される戦後まもないころの大阪の描写は下町感満載だった。
    ホルモン描写と相まって今の鶴橋、京橋あたりを形成してるんやと思った。
    個人と組織の関係かな。主人公は冷静に組織を分析してると思った。
    美しくなくても、小汚くても生きなければならない。けれども生きるには爆発的なエネルギーがいる。

  • 戦後の朝鮮部落の話。みんな賢く生きてました。

  • 大阪。アジア1の生産量を誇った旧陸軍工廠は爆撃によって荒れ野と化していた。荒野には財務省も管理しきれない鉄くずの山が埋まっており、アパッチ族たちは己の力のみでベトンを崩し鉄を切り、そして運ぶ。ルンペンのフクスケは彼らと行動を共にし、その終焉までの一部始終を目にする。

    食への欲求とそれが生み出す禍々しいエネルギーの発散が痛快。七輪で牛の内臓を焼いて洗面器にはいったご飯をかっくらうところで、めちゃお腹空いてくる。

  • おもしろい。高尚な文学っぽくなく、人間の本質をゴツゴツと書いていくのが面白かった。たくさんの登場人物が出てくるが、それぞれ特徴的で「そんな人いるよなぁ」という感じ。

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