城塞(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101152202

感想・レビュー・書評

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  • 大坂の陣から400年。大河ドラマ真田丸でも描かれるしってことで、平積みになっていたのを手にした上中下の上巻。
    真田丸だったら有働さんのナレーションでぶった切るような大坂城内の動き、東西の駆け引きが司馬遼太郎の文体で細かく描かれている。400百年前の出来事を描いておきながら、時々出てくる、筆者の現在の目線。嫌いじゃないです。
    真田丸も最終章に向かいます。中巻、下巻もさっさと読まないと。

  • (関東の様子をみれば、わかるはずではないか)
     と、勘兵衛はおもうのである。家康は自分の老いにあせっている。子孫のために太閤の子孫を根絶やしにしておくということを当然ながら考えている。その程度の家康の意中は、大坂城の楼上に住んでいても、すこし頭を冷やし、子への盲愛という囚われ心を去って考えてみればわかるはずのことではないか。
    (それがわからない)
     ということは、勘兵衛にとって、新鮮なおどろきであった。自分自身の運命について、この程度にごく明白な、理解しやすい、ごくあたりまえの思考の条件が、とても理解できないほどの愚人が世の中に存在しているということにおどろいたのである。それが、この城にいる。しかも権力の頂点にいる。
    (淀殿は、お頭がたしかか)
     とおもうのだが、べつにあほうであるというわさはきいたことがない。要するに愚かというのは智能の鋭鈍ではなく、囚われているかどうかだということを勘兵衛は思った。淀殿は一個の恐怖体質である。
     彼女にあっては、あらゆる事象はすべて自分のなかに固定してしまっている恐怖を通してしか見ることができない。秀頼のためのみを考えすぎ、それにとらわれ、それを通してしか事象を見たり判断したり物事を決めたりすることができない。

    「ここはおとなしく退去させておしまいになるのが上分別と申すものでしょう」
     というと、修理はうなずき、
    「わしもそうおもっていた」
     と、勘兵衛の案の尻馬に乗った。修理のくせであった。勘兵衛がいくら妙案を出しても、
    ――ああ、そのことはわしも気づいていた。
     と、いう。勘兵衛の案を採用してくれるのはありがたいが、返事にはかならずそのひとせりふがつく。すこし構えている。勘兵衛のみるところ、古往今来のよき大将とは、配下に意見を出させると、そのことを大将みずから考えてはいても、
    「何兵衛、よう気づいた」
     と大ほめにほめるのである。であればこそ配下の者どもは智恵を絞って策を考え、それを上申することをよろこぶ。修理のようでは、よき幕僚はできまいと勘兵衛はひそかにおもったが、しかし勘兵衛はみずから構想することに芸術的なまでの衝動とよろこびを感じているため、修理がどうであろうと、思いついたことは今後もすべて修理に話すつもりであった。

  • 秀吉の作った'城塞'、すなわち大阪城の陥落を描いた長編。真田幸村、後藤又兵衛をはじめとする稀有の武将たち、潜在的な可能性を秘めた豊臣秀頼、何より天下の城塞たる大阪城の存在にもかかわらず、淀殿を中心とする人間たちがことごとく足を引っ張る様子が本当にもどかしい。秀頼の両側に幸村、又兵衛がつき、全体が統制された行動をとっていれば、大坂の陣はどうなったのかと、どうしても考えてしまう。その中でも、先の真田、後藤のほか、木村重成、毛利勝永など、部下が共に死んでもよいと思えるほどの漢達の生き様、死に様は、男として感動せざるをえない。

  • また正純か?

  • 家康の駆け引き

  • 家康って、やなやつ。

  • 上巻 読了

  • 司馬遼太郎
    (小説)

  • 家康による大阪城攻略の顛末を描く長編。司馬遼太郎の得意なストーリーテリング展開として、複数の登場人物の視点を同時に使うが、特に小幡勘兵衛とお夏というキャラが一番絵になる。

    当時70歳を越えた家康がかつての主家豊臣家を滅ぼすために矢継ぎ早に行う政略がえげつないのに対して、淀君のヒステリーっぷりが痛々しい。

  • 大坂城をめぐる当時の空気が臨場感を持って伝わる。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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