- Amazon.co.jp ・本 (557ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101156439
感想・レビュー・書評
-
山場は大坂冬の陣であり真田丸もしくは家康の大砲でしょ!わかってる!
でも、どう考えても私の中では猫田与助の奮闘劇の結末だよ。
お江ストーキングの最後は猫田らしいオチっていうか落ちっていうかだったな。
真田丸に関しては、随分な横取りなのにそれを許した後藤又兵衛の度量が印象的だったな詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第10巻「大阪入城」
徳川と豊臣の橋渡したらんとしていた加藤清正、浅野幸長が亡くなり、いよいよ両家は抜き差しならなくなります。
そして「鐘の文言に呪詛が」という例のいちゃもんで強引に開戦に持ち込む家康。
秀頼の重臣の片桐且元の苦悩が描かれます。
豊臣家の代表として徳川と交渉にあたっていた且元は、「賤ヶ岳七本槍」の一人でありながら、武芸しか知らず政治にも文化にも疎く、豊臣と徳川の間を右往左往するだけ。
大阪城の意思決定は秀頼の母淀殿とその取り巻き立ちで行われます。
希望を信じたい、嫌なものは見たくない、未来の見通しを持って策を練ったりしない、いままで何とかなってきたのだからこれからも何とかなるだろう、しかし何とかなるための努力はしない…。
大阪側は且元が徳川へ内通していると疑い、且元の命を狙います。
これだけ両家の平穏を願った自分に刃を向けるとは!且元は武装して屋敷に篭ります。
さすがに騒ぎが大きくなったと、且元たちは命の保証をされ大阪城から出ることになるのですが…
且元暗殺計画を立てながら、騒ぎは大きくしたくないという豊臣家臣団と、何年も前から周到に用意を積み重ね人の心を読み操ってきた家康では、闘う前から勝負がついています。
且元が大阪城を出た理由も時代劇ではさまざまに描かれていますね。
命を狙われ苦悩の末の決断と言うものもあれば、
「俺を疑いやがって やってらんねー!!」と飛び出たという描写も(笑)。
しかしこの後且元は大阪の様子を家康に知らせるという「見苦しき武将」になるということで「苦しみながら」という言い訳は通じないのかもしれない。
さて。
ただ徳川への忠節を尽くすことにより真田家を存続させてきた信之(信幸から改名)は、未だ紀州九度山にいる弟幸村のことを考えます。
もしこのまま大人しくしていれば今度こそ幸村は許され自分の元で臣下として暮らせるだろう。
しかし一生徳川の目を恐れ小さくなっていなければいけないだろう。
それが弟に耐えられるか。
弟は必ず大阪城に入り家康の首を狙うだろう。
関ヶ原の合戦はあまりにもあっけなさすぎた、負けるにしても納得できない負け方だったのだ。
そして幸村は紀州九度山を抜け出して大阪城に入ります。
妻子の行く末は気にしません。戦いたいから戦います。
それでも妻子は(どこかに逃がしてもらうのでなく)幸村と命運を共にすることを明言します。
大阪城での戦い方を考える幸村は、故昌幸の言葉を思い出します。
そして現実的な戦い方は、自分だけの砦を持つことだと考えます。
大阪城に入った幸村はさっそく失望します。
秀頼は淀殿により世間から隔離され、
大阪城内を取り仕切る大野治長は机上の戦のみを唱える、
そしてなんといっても城全体に覚悟がない。負けたくない、城を出たくない、戦なんて籠城してればいい、秀頼にちょっとでも何かがあったら困る。
今までも何とかなってきたから今度も何とかなるんじゃないか?という甘い考え、しかしその何とかするための具体的積極的手段はなにも講じない…。
こんな様相ではとても勝てないと思った幸村は、さっそく自分が思う存分指揮をとれる砦”真田丸”を作りにかかります。
…どうもこの大阪城のみなさんはみんなが勝手気ままに作戦を立てて決行していたようで、”真田丸”作りも勝手に始めています。
ここで先に砦を作ろうとしていた牢人の後藤又兵衛元次と縄張り争いを経て、互いを認め合います。
しかし大阪城の指令系統はまるで滅茶苦茶です。
牢人たちは勝手にやりたい戦をやる準備して、豊臣家臣たちは籠城で時間稼ぎしか考えず、男女の風紀は乱れ、徳川側の忍者出入り放題、作戦会議もまとまらず…。
幸村の心情を通して著者もイラついているようです(笑)
いや、豊臣家が「籠城!」と決めているならそれを正式に牢人たちに通告したうえでそれに向かって一丸とならなければいけないだろうに、各自がてんでんばらばらやりたいことを勝手にやってるんじゃ話にならんん…。
幸村とともに大阪に出入りしている草の者お江さんは(すでに50歳後半!)「思い切って闘うためには、今のうちに秀頼公のご母堂淀殿と、側近大野治長を暗殺いたしましょう」と提言するくらい。
しかし幸村は、この戦には勝ち目はない、ならば望むのは堂々と徳川家康と決戦すること…と心を決めています。
著者の大阪の冬の陣の描き方は、軍記資料や人物伝から戦の状況を構築していきます。この人物はこういう話が残っている、この時はこういう心情で戦に及んだのだろう。
大阪の将たち、後藤又兵衛基次、薄田隼人正兼相(ススキダハヤトノショウカネスケ、別名岩見重太郎)、木村長門守重成たちのエピソードが語られます。
そして真田幸村についてはその明るさ、他人への心遣い、極め細やかさと大胆さを優秀な上官だとして、「著者は太平洋戦争時代に海軍にいたが、”この人となら一緒に死ねる”という上官には二人しか出会っていない。兵は直属の上官次第で、愚劣な上司のもとでは喜んで死ねないのである」と書いています。
ラストでは真田丸での幸村の大活躍を描き、しかしその裏で進められる和睦を書いて十巻終わり。 -
九度山を抜け出し、真田丸を築き、いよいよ幸村が世に出た巻でした。個人的には与助が惨めな死に方をした事に安堵した巻。いかに男が傲慢すぎる時代だったかを想像させる言動の数々が嫌い過ぎました。女からは奪うだけ奪っておきながら。お江、佐平次、佐助、角兵衛あたりの描写もなかなか読み応えありました。秀頼はきっと本当に有能だったんだろうな…周りが無能だとこうなるのか、ととても残念な気持ちになります。
-
幸村もすごいな
-
2011.9.12
-
大阪冬の陣。豊臣方のダメダメさが強調され、幸村がもどかしく思う展開。読んでいてややストレス。
-
真田丸にて、幸村隊の知略、一瞬の閃きを見せる!!
池波正太郎の描く真田家の知略の根源は、主に相手の心理を読んでこれを操る点にあるようだ。
そして、複数の選択肢を常に考えておく。
今作では徳川家康と大野修理の格の違いについても言及される。
戦将としての経験が違いすぎるのだから、格の違いは当然の話。
であれば、せめて後藤なり幸村なりに指揮をアウトソーシングしてしまえばよかったのかも知れないが。
言っても仕方のないことか。
大阪の陣自体、始まってしまった時点で、戦略的には豊臣家は負けていた、ということか。 -
名作「真田太平記」の全貌が視えてきた、素晴らしい!どこをどうとっても「素晴らしい」!このシリーズは昭和時代の発行であるが、令和の今、歴史ミステリーとしてよく上がる題材や、最近の大河ドラマに出てくる名シーンが表現されている様な描写!歴史の流れという本流をしっかり捉えた上で細かな支流の澱みまで描かれている。読み応えの骨太さは流石に驚かされる。これまでの感想にも残してきているように当時の価値観や倫理観また死への意識をそのまま理解することは不可能であるが、今では考えられない常識が普通であったのだろうと、想像することは出来る!このシリーズを楽しむ上でどうしても「大義」を意識して読んできたが、やはりハッキリと見えてはこないが、家康の激情、勝利への拘り執念!幸村の草の者達の支援の元、環境や人間関係まで予測した戦への拘り。東西それぞれの動きがハッキリ見えてくる大坂城入場から冬の陣までの策謀、内通そして戦闘どれをとっても特級品。
お江が幸村にある提案をするシーンに惹かれた、少しのやりとりの中に、私は「目から鱗」大変面白いと感動さえした、この後の展開が非常に楽しみであり最終巻まで同時に買ってしまった。 -
大坂冬の陣の有様。
真田幸村、後藤基次などの優秀な武将の進言がことごとく豊臣方へ通らない。
豊臣方の大野治長、淀君らの愚かな対応。
曖昧な停戦交渉をして、大坂城の外堀を埋められてしまう。
そして、豊臣家滅亡の大坂夏の陣へ……。
NHK大河ドラマの「どうする家康」などで描かれている徳川家康は聖人君子
だけど、そんな良い人ではない。世に言われている狸親父がぴったりだと思う。
他に大坂の陣を描いた、司馬遼太郎の「城塞」も読む予定。