目覚めよと人魚は歌う (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・本 (152ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101164519

感想・レビュー・書評

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  • MDのような物語。ひとつのディスクの中にたくさんの人格があって、それぞれが依存し協調しハーモニーをつくる。そして語りかける。

  • キヨとあなと糖子さんの話。あんまり、印象に残らなかった。

  • 書店で題名買い。作家については前情報はまったくなかった。
    ともかく、ゆらゆらと漂うような文章が印象的。それも喩えるなら川のような流れる水ではなく、真夏に容器にためられたまま温くなった、どこか退廃的なよどんだ水。
    特徴的なのが地の文の書き方だ。糖子の一人称で始まった物語は、ヒヨについて語る時は三人称になる。
    そしてそのまま読み続けると、三人称で描かれる文章中でいきなり何の前触れもなく糖子の一人称に切り替わり、また三人称に戻る。
    正直最初は面食らったものの、その文章構成自体から夢と現実の境界が曖昧に溶け込んでいく様を感じさせて、素直に感心してしまった。
    だがこれは文章の基本がしっかりしているからこそだろう。本来なら私が嫌がる書き方なのに、この作品に関してはすっと受け入れられたのもそのためだと思う。

    内容については、何とも難しい。共感するかと言うと全くそんなことはなく、心は凪いだまま最後のページを迎えた。強い痛みも、喜びもなく。
    そのため、「面白かった」という言葉は出てこない。「楽しかった」も違う。強いてあげるなら「読んでよかった」。
    ただ美しい風景を眺めるように読み終えた。解説の中で、この作家の作品に触れることを「異国を旅する」と喩えてあったが、まさにそういった感じだと思う。
    不思議な読後感だが、これがこの作品だからなのかこの作家だからなのか。また機会があったら別作品を読んで判断してみたい。

  • 赤土の台地に立つ家に住む女と子供、血のつながりのない男。そこへ日系ペルー人と恋人がトラブルから逃げ川崎からやって来て滞在するという話。家は実在しているとは思えないような土地にあり、現実からの隠れ家として機能している。
    章ごとに三人称と一人称を行き来する語りだがたまにそれがするりと移動している。面白かった。

  • 星野智幸の言葉は、いい。ただもうその一言につきてしまうくらいに。まず、書き出しの一段落に、しびれた。白熱球のような月、プラチナ色のススキ。思えば、それらは深海のイメージだ。タイトルの意味をずっと考えていたけれど、最初の一段落を熟読するうちに、少し分かったような気がした。深海のイメージをもって語られる、糖子の住む家とその周囲。そこで、夢だか現実だか、過去だか現在だか分からないような生を営む人々。現実へ踏み出せ、目覚めよ。間違っているかもしれないけれど、私はそんなふうに解釈した。最後は唐突に終わったようにも感じたけれど、そう考えれば、これからヒヨはタケリートを止めに、現実の中へ入っていく、というふうに受け止められる。
    ここで語られているのは、たくさんの自分。一人の人間として繋がっていかない、自分。繋がっていかない、出来事。過去が現実で、現実が過去で、混乱の中、逃げようとするけれど、逃げる場所などどこにも無い。だから、その一つ一つを考えて、理解して、繋げていかなければいけない。たくさんの、語られる言葉。人は理解するために言葉を使うけれど、その言葉は現実とはズレているかもしれない。でもそのズレを少しでも埋めるために、さらに言葉は重ねられるのだ。そんな言葉の洪水が、いつか真実を語り始めると信じて。

  • 自分、好きです。この人の文章。文字をただ追っていくことより、ページに並ぶ文字を見てるだけでも心地よくさせてくれるから。

  • 文章が所々好みだったのに、眠かった。
    解説が角田光代だったのに、眠かった。
    どうしてかわからない。

    幸せは長くは続かないこと。
    気がつけば壊れていること。
    そこから一歩踏み出さねばならないこと。

    珍しい、カメラの視点がこまめに入り交じる文体。
    ヒヨと糖子の視点の入れ替わりは予期なく起きることも多いのに、すんなり読める。

  • 2010 4/20

  • 「昔のこと話すと嘘ついてる気分になる。
     自分じゃない人のこと話してる気分になる。

     ほら、それがなま身の自分よ。
    話の中でだけ生きていられる自分があるのよ。
    なまの自分なんて、いつだって他人行儀なもの。
     なじむためには今すごしてる干からびた夢から覚めて、
     遠い自分によりそうように話すことが大事。」

  • 逃亡中の在日ペルー人、日曜人(ヒヨヒト)と恋人のアナはメキシコの赤砂漠に似た厚木にある糖子の家でかくまってもらう。

    これを読んでさっそくアラビアータを作った。
    愛する人と家族をつくるのは難しいことなのかなぁ。タイトルが超すき。 さとこ

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著者プロフィール

1965年、 アメリカ・ロサンゼルス市生まれ。88年、 早稲田大学卒業。2年半の新聞社勤務後、 メキシコに留学。97年 「最後の吐息」 で文藝賞を受賞しデビュー。2000年 「目覚めよと人魚は歌う」 で三島由紀夫賞、 03年 『ファンタジスタ』 で野間文芸新人賞、11年 『俺俺』 で大江健三郎賞、15年 『夜は終わらない』 で読売文学賞を受賞。『呪文』 『未来の記憶は蘭のなかで作られる』 など著書多数。

「2018年 『ナラ・レポート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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