- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101168296
作品紹介・あらすじ
まず原稿用紙の使い方、題のつけ方、段落の区切り方、そして中身は自分の一番言いたいことをあくまで具体的に-。活字離れと言われて久しい昨今ですが、実は創作教室、自費出版は大盛況、e‐メールの交換はもう年代を問いません。日本人は物を書くのが好きなんですね。自分にしか書けないことを、誰が読んでも分かるように書くための極意を、文章の達人が伝授します。
感想・レビュー・書評
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多くの本を読むこと、字引をこまめに引くこと。
基本はここにある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とおってもためになる作文教室です。
ものすごい親切な目次が立てられていて、それを読むだけでこの教室のエッセンスは入っているので、時間のない方はそこを「立ち読み」されることをオススメします。
作文教室である以上、宿題がでます。「自分が今いちばん悩んでいること」を400字詰め原稿用紙で書いてください、とのことでした。
この教室のエッセンスを自分のものにするためには、やっぱり自分も書いてみないとダメだ、と思い書いてみました。以下の文章がそれです。
叔父の入院
くま
叔父が入院した。但し、3階から2階に部屋を移しただけではあるが。老健施設の入所者から肺炎患者へと立場を変えたのである。
叔父夫婦に子どもはいない。親戚付き合いもほとんどない。結果、近所に住んでいた呆けてしまった叔母の甥である私が、夫婦揃っての入所の説得から、入院の手続きまで総てをすることになってしまったのである。ーそこまでは良かった。
入院の連絡に続いて、担当医師という人から電話が掛かってきた。
「実はいつ急変してもおかしくはない状態なのです。ところで、終末医療はどこまでされますか?」
認知症の叔母に判断能力がないことは分かっていた。私が決めなくてはならない。
脳死状態のまま、身体だけは生かすのか?
意識が戻りそうにないのに、死ぬのを遅らせるのか?
それとも、早々に安楽死させるのか?
‥‥人は突然にこういう哲学上の大問題を突きつけられる。
叔父は幸いにも持ち直した。しばらく猶予期間が与えられた。
文字数は488字。原稿用紙一枚に収めるためには、相当削らないといけないのだが、力不足を告白せざるを得ない。
題名は果たしてこれで良かったのか、「読んでみようかな」という題名になっているのか。段落や句読点の打ち方も自信がない。「短期記憶のキャパシティに合うように文章を書」いただろうか。文章に接着剤は出来るだけ使わないようにしました。「但し、」「それとも、」は仕方ありませんでした。「1番最初は核心から入る」ために少し構成を工夫したのですが、なんかダメ出しされそうな気もしています。あゝこの段落長すぎ。すみません。
「いちばん大事なことは、自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書くこと」ホントにそうです。まだまだです。
2013年9月22日読了
これを書いたあとで、また叔父が入院した。実はまた最終医療のアンケートを書いた。私は「一度だけ延命治療を試したあとは、何もしない」ことを選んだ。10日の早朝「息が止まりそうです」という電話がかかってきた。一週間前に十分話もできたので、まったく油断していた。行くと、既に息も止まって心臓も動いてなかった。叔母を今際の際に間に合わすこともできなかった。
悔いが残るのは仕方ない。と、思う。 -
大阪で事務所の引っ越しをしていたときに、話に上がって読んでみた一冊。文章というか、話が飛ぶと言われることの多い自分には参考になることばかりな一冊でした。書き物をするときの初歩にあたる基本的なルールや原則と、使い方に気をつけたい言葉とか注意点が添削のような形で書かれているのでとても読んでいてわかりやすいと思いました。
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作文、嫌いだったな~。でも、それがなぜ嫌いになるのかってところから語り始められる本書は、基本から示される綴り方のポイントも分かりやすく、久しぶりに書いてみたくなっちゃう。
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日本語文法文章読本と読み進めてきたものの、その中でtipsとしてしては、散らばっていてなかなかまとめられていなかった数々の実用的な文章テクニックが講座ということもあって、この一冊にまとめられて大変に重宝した。
しかしあに図らんや最終章の受講生たちの作文のなんと素晴らしいことに驚いた。オースターのナショナルストーリープロジェクトに匹敵する。いや同じ日本人として共感はこちらの方が上だ。もし井上ひさしがあと何年か生きながらえていたとすればこのプロジェクトは恒例になっていたはずである。 -
文を書くことの基本。当然の内容が書いてあります。でも、改めて基本が難しくて、できてる人は少ないんだって感じます。だから高評価。
この本自体ものすごく読みやすくて、作文講座として説得力あるところも高評価。4章構成でそれぞれ「1時間目」とかで題されていて、実際4時間で読めた。
この本は私がアルバイトで勤めている中学校の課題図書となっていて、生徒に「先生も読みなさい(笑)」と言われて読みました。この本をチョイスした国語科の先生はGood Jobだと思います。
最近学校では読書活動がきちんと取られるようになりました。私の頃にもこのような環境が整えられていたら良かったのになぁと勤めていて心から思います。
この本は井上ひさしさんがボランティアで宮城県の一関市でおこなった「作文教室」の講義内容がそのまま本になったモノです。
井上さんの文学者としての日本語の知識がたくさん詰まっていて、作文以外の知識も豊富に学べる一冊。だから読んでいて面白いんだろうな。
日本の国語教育に関する井上さんの考えも聞けて良かったです。 -
本作は、本年4月9日に亡くなられた井上ひさしさんが、中学3年生の時に一時期を過ごした岩手県一関に対する恩返し(正確には「恩送り」※)に行なった作文教室の記録。
「むずかしいことをやさしく、
やさしいことをふかく、
ふかいことをおもしろく、
おもしろいことをまじめに、
まじめなことをゆかいに、
そしてゆかいなことはあくまでゆかいに。」
を信条とする著者が、誰が読んでも分かるように書くための極意を、作文教室の参加者から提出された作文の添削を交えながら、具体的に書かれていて素晴らしい内容です。
原稿用紙の使い方、題のつけ方、段落の区切り方といった作文の作法、「自分にしか書けないことを、誰にでもわかる文章で書く」、あるいは、読み手の記憶に働きかける「長期記憶」を利用するといった作文の秘訣に留まらず、税金の考え方、日本人の「公」に対する意識、戦争に対する考え方、演劇に対する想いなどが遺憾なく書かれており、言葉を味方に日本社会の課題に取り組まんとする人にとって、学ぶところの多い作品と思います。
※恩送り…誰かから受けた恩を、直接その人に返すのではなく、別の人に送ること。恩の送られた人がさらに別の人に渡すことを通じて、「恩」が世の中をぐるぐる回ることを示す江戸時代に使われた言葉。 -
作文教室の講話を文章化した本。読んでいて楽しい。作文を書きたい気持ちになってきた。
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ただの作文教室にとまらない、筆者の思想が大いに反映された読み応えある一冊!
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文章作成の基礎である「作文」をテーマにした短期講座の講義録。
見たものを見たままに書くのが基本、しかしそれが難しく、それを誰も教えない。
作文だけでなく、日本語をどう捉えるかも学べる良書。