エディプスの恋人 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171135

感想・レビュー・書評

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  • いやぁ、なんか、ねぇ。なんだかなぁ


  • 『家族八景』『七瀬ふたたび』に続く、俗に言う七瀬シリーズの完結編。
    異能SFの雰囲気は影を潜める、というよりかは作者の中で“異能”というものをより深く推し進めたであろう本作は、形而上的な色合いを帯びる。
    生物の上位存在の様なもの..宇宙意思..定まった呼び方の無いこういったものに対し、本作はかなり突っ込んだ、かつ文字化に成功している作品かもしれない。七瀬シリーズの幕引きに寂しさもありつつ、個人的には支持したい締め方。

  • 既読本

  • 『七瀬ふたたび』のラストからどうなって本作に繋がったのか疑問に思いながら読み始めるも、次第に、そんなことは忘れ読み進める。ラストでなるほど納得の理由でうまく前作と繋がった。これにはまんまとやたれたという感じ。図形的な文章表現も出てきて前衛的。他の小説では見たことがない「赤字の文字」は極北と言えるのではないかと思う。

  • 「七瀬シリーズ」の第3弾。

    高校の事務員として働くことになった七瀬は、香川智広という男子生徒に向かって飛んできたボールが、とつぜん粉々にくだけ散るという異変に遭遇します。彼女がテレパシーの能力をつかって智広の心のなかをさぐると、ほかの生徒たちにはけっして見られることのない絶対的な自信があり、やがて七瀬は彼が神のような強大な「意志」の力に守られているという確信をいだくことになります。

    智広と彼を守る「意志」の源をさぐるために、七瀬は絵描きである智弘の父の頼央の故郷を訪ねます。やがて彼女は、頼央から「意志」にまつわる秘密を教えられますが、しだいに彼女は自分の智広に対する関心も、それどころか自分自身の存在ですらも、「意志」の力にもとづくものではないかという疑問にたどり着くことになります。

    最初は、前作である『七瀬ふたたび』とのつながりがわからず、前作とはべつの世界線のストーリーだと思って読み進めていましたが、最後のほうで前作とのつながりが示唆され、本作の壮大な仕掛けが明らかにされています。ここまで舞台装置が大掛かりなものになると、SF的な世界観の根幹となる問題につながっていくことになりますが、これもシリーズの締めくくりにふさわしいテーマといえるのかもしれません。

  • 七瀬3部作の最後。この世界、そして七瀬自身も神に操られた存在であると気付く。太母の意思で、七瀬は復活し、存在し、行動する。現実存在とは、そのような「神」的者のシナリオによって演じさせられているのだ。それを受け入れるしかない。七瀬は、エディプスの恋人を演じるしかない。

  • 前作の内容をほぼ覚えておらず、最後の方でああ、そんなこともあったなあ、って思い出したが。全体的に暗いよな。筒井さんならくすりと笑えるところもあるかなあと期待したが全くない。本文の中で時代を感じさせるところがあるので、十年早く読めばよかった。



  • 2作目の「七瀬ふたたび」を飛ばしての作品だったけど楽しく読めました。生まれて初めて恋心を抱いた相手が高校生。超常現象の行方を追った結果それが全知全能による亡き母親によってであって
    それに従い認めざる負えない中、自己の存在自体にも悩む。しかし、最終的にはこのタイトルを超えて七瀬が幸せな方向へと向かったので良かったかな。

  • 「今年の謎は、今年のうちに…」ということで、読みきりました七瀬3部作!イエィ。
    3部作通しての☆は3つをつけさせていただきます。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    私立名門高の教務課事務員として働く火田七瀬は、テレパスをもつ超能力者だった。
    その高校の生徒・香川智広は、幼い頃からなに者かの「意志」により守られている存在だった。
    「意志」の存在に脅威を覚えた七瀬は、智広の周囲を調べ始めるが、やがて自分のなかに突如芽生えた、智広への奇妙な「恋心」に気づき…

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    2作目「七瀬ふたたび」のラストで、大変なことになってしまった七瀬だったけど、3作目の本作ではさらっと登場してきてびっくりしました。
    2作目とまったく違うパラレルワールドの話??と思うくらいの話運びでしたが、ラストではやはりつながっている世界であり、2作目でラストの背景も説明されます。

    「エディプスの恋人」というタイトルから、エディプスを調べた方でカンの良い方は、「意志」の存在の正体にも薄々気づかれるのではないでしょうか。
    智広にまとわりつく「意志」は、最初は得体のしれない不気味な存在感ですが、その正体があきらかになったあとの「意志」の行動は、なかなか生理的にきつかつたです。

    テレパスである七瀬が、自分の能力が露見するのを恐れているが故、智広のまわりに起きている「怪異」とその原因について調べ始める、という理由はわかります。
    ただ本作は、前作・前前作に比べて七瀬が「テレパス」であるという面が、後半に行けば行くほど薄くなってしまっていたようにおもいます。
    また、理性的な七瀬であっても、少しずつ「意志」の力に取り込まれていく姿は読んでいてもどかしく、「意志」なんかに負けないで!!!と強くおもいました。

    この作品は1977年出版とのことですが、この頃からこんなにも先進的な表現手法をされていたの?!と読んでいてとても驚きました。 (29ページ、124ページ、249ページあたり)
    先進的手法については、2作目までを超えていました。

    3部作完結としては、すっきりする部分ともやもやする部分(主に生理的に)もあったので、☆3つとさせていただきました。
    「今年の謎は、今年のうちに」を達成できた(3作を2022年中に読み切れた)点は、とても達成感がありました。

    というわけで(?)皆様、どうぞよいお年を!
    また2023年でお会いしましょう!
    (2022年12月末日)

  • 1作目とも2作目ともまた違う作風。

    「宇宙意志」まで話が飛んでいってるけれど、神の依怙贔屓な展開はあまり面白くない。

    ただ前作との繋がりが示されたシーンは、3作品目が作られた理由であり、伏線の回収であり、圧倒的な絶望感を叩きつける結末そのものになっていて凄かった。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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