影武者徳川家康(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (640ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101174174

感想・レビュー・書評

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  • 20170320読

  • 全3巻完結編。面白かった。執着を持ち続けられなくなった二郎三郎。未だ執着(妄執かもしれないが)から逃れられない秀忠。老いと若さといういつの時代にも繰り返された相克が、下巻で描かれている。心を残しながら何もなすことができない老境にある人の諦念について、これまでにも様々書かれてきたが、本書はその中でも特筆に値し、滅びの中の美が丁寧に描写されている。風魔対柳生の忍者戦の描写もうまい。

  • 家康

  • 徳川家康が「関ヶ原の戦い」時に暗殺され、それ以降影武者が成り代わって天下を収める物語。歴史の流れに則り、話が構築されており、物語が目に浮かび楽しい。私の歴史観に膨らみをもたらしてくれた一冊。
    風魔(家康方)、柳生(秀忠方)、猿飛佐助(真田方)など忍の活躍も楽しく、男子心をくすぐられる。

    【学】
    思えば応仁の乱以降、世の中は長い長い戦乱の直中にあった。下克上思考、天下は回り持ちという武士の思考がこの長い戦乱を生んだのである。

    魚を焼いて絞って油をとり、火の灯りの元にした。

    秀吉は朝廷の権威を借りて天下を治めようと下ので朝廷にもつくしたし、京の町にふんだんに金銀をばらまいた。大阪に至ってはほとんど秀吉が作った町だ。ゆえ、大阪人の太閤贔屓、徳川、江戸嫌いは少しのことでは変わらない。

  • 関ヶ原の戦いの合戦中に、徳川家康が、西軍石田三成の配下の忍者に殺されたため、その影武者がその後15年に渡って徳川家康に成り代わって生きていくという、設定で書かれた歴史物語です。

    関ヶ原の戦いを前後して、徳川家康の趣向が変わっている等、この本の中には、影武者に変わっていただろうと思われる証拠が多く散りばめられています。

    上中下の3巻、合計二千頁にも及ぶ大作を、あしかけ数か月、主に出張中の飛行機の中で楽しみながら読みました。楽しかった数か月でした!

    以下は気になったポイントです。

    ・慶長14年には、第九子義直と紀伊37万石浅野幸長の娘、第10子頼宜と肥後52万石加藤清正の娘と婚約させている(p9)

    ・二郎三郎の目からみると、キリシタンは驚くほど一向一揆の門徒衆に似ていた(p177)

    ・吉原が元和3年(1617)にできる前の遊里は、麹町、鎌倉河岸、元誓願寺前の3か所(p182)

    ・フランシスコ会は、神への奉仕だけに身を捧げる教団、伝道のためには戦争も辞さない戦闘的な布教集団イエズス会とは対照的(p329)

    ・関ヶ原でとりつぶされた大名は90家、438万石、
    厳封4家、221万石、他の理由で除封されたものが35家、317万石で、合計一千万石が除封となり、牢人が乗じた。その上にキリシタン武士がいた(p343)

    ・軍役表によれば、一万石で235人、騎馬は10騎(p379)

    ・本来、豊臣方がやるはずであった工事(三の丸と二の丸の掘と柵を破却)だけでなく、堀まで埋めてしまった(p402)

    ・大阪夏の陣において、大野道犬率いる一隊は、堺の町を残らず焼き払って、堺滅亡の原因を作った(p451)

    ・小判200万両の重量は約一万貫、運ぶには370頭の馬が必要になる(p561)

    ・家康は駿府を東西に対して難攻不落の地にした。年貢は江戸経由でなく、直接駿府に来るようにした。清水港を南蛮船の来る港にした。朱印状は駿府でのみ発行し、自由独立都市にしようとした(p605)

    2015年10月31日作成

  • やっと読めた。男の中の男。

  • 関が原の戦いで家康は死に それ以降史実の「家康」は影武者だった、というお話。
    ものの見方でストーリーはまったく異なって捉えられるものだと改めて感じた。
    生まれたときから戦国時代の武将となるべく生きてきた家康ではなく、その日暮らしで厳しい世界を生き延び 影武者となった次郎三郎だからこそ平和を願い そのために争い、太平の世を残したいと思ったのかもしれない。
    平和のために争う。今の時代もどこかで紛争が起きているのもそれぞれの平穏な生活を求めているからなのを 忘れないようにしたい。
    7月から読み始めたのに今までかかってしまったのは読み始め当初はイスラエルとガザの紛争があり、関が原の戦いの生々しい表現に拒否反応があったから。 読み終えた今日も日本人として苦しい出来事があった日であり、その地も傍から見たら平穏には映っていない。 この悲しい出来事がいつか報われますように。

  • 桜の、花びらが開け放した窓からの風に吹かれて舞う様をただ眺めているだけの、ただただ心を無にしてその瞬間に浸っていられる幸せに胸が熱くなる。
    隣には愛する人、また命を共にした仲間、そこで飲む酒の味を思いながら激動の生を生き抜いた二郎三郎に乾杯。

  • 影武者の追いかけた壮大な夢は半ばに破れるも…という下巻です。

    自由を愛しながら、ひょんなことから影武者になり、さらに影から武士の頂点という表舞台、およそ自由人とは間逆の立場になりながら、あえてその立場を利用し、本当に自由な世を作るべく人生を賭けていく、という話に、当時高校生であった自分にとって、大人のカッコよさを感じたのを覚えています。影は光になれるか、でも夢破れ、でもいいじゃないか、というほろ苦い感じも好きです。うまく言い表せませんが。

  • 上中下の三巻を漸く読み終えた。面白かった。最後はもう終わるのが寂しくて、しばらく積読にしてしまった。

    下巻には多少キリシタンの事がでてきて、キリスト者としては興味があった。

    それにしても著者の推論、(関ヶ原以後は家康が死んだために影武者が家康を演じたと言う説)は説得力があって面白い。秀忠が陰湿な男として描かれているが、それはこの推論により納得できる。史実とされている家康の関ヶ原以後の陰湿さと、豊臣家への暴虐の陰謀は、実は家康のものではなく秀忠の者だったのかも知れない。本当にそうなのかもしれないと思わされるほど、小説の内容がしっくりと着て面白かった。

    星五つ。

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