わが友マキアヴェッリ 1 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181387

感想・レビュー・書評

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  • 「君主論」や「政略論」を描いたマキャヴェリを描く一冊。
    この第一巻では、マキャヴェリが生まれた時代の前後のフィレンツの政情を中心に描かれる。フィレンツェ人とはどのような民族であったかやロレンツォ・イル・マニーフィコと称されるようになるメディチ家の君主やその子孫たちが描かれている。
    名君とされるロレンツォが君主論のモデルとなったからこそのこの背景かと思っていたら、そうでもないらしい。
    一巻で特に気になったのはマキャヴェリが官僚を追放された時の心情。他者からはたわいない物に見えたとしても本人は大切に思っていた。それを奪われた時の絶望感たるや想像できないし、一般人には、現実味がなさすぎる出来事に思えてしまった。ただ、起こっている以上は、誰にでも起き得るし、彼みたいに乗り越えた時には歴史に名が残る人物へとなるのだろう。

  • 全3巻の1冊目
    1冊目はマキャヴェッリはあまり登場せず、彼の足跡を土台としつつも主役は15世紀のフィレンツェだった。
    コジモ・デ・メディチからサボナローラまでのフィレンツェの物語を生々しく、面白く読ませてくれる。
    マキャヴェッリが歴史の表舞台に出るのがサボナローラの処刑後のようだから、2冊目以降が本番だろうか。
    この本の前に高階秀爾さんの『フィレンツェ』を読んだが、政治史については塩野さんが断然面白い。
    欲を言えば、ルネサンス芸術の紹介と図版がもう少し(できればカラーで)掲載されていると嬉しい。

  • 第一巻の主役はロレンツォ・デ・メディチ。フィレンツェに君臨したこのメディチ家の偉人の来歴と生涯,そして彼の死後にメディチ家がフィレンツェを追われるまでを,マキアヴェッリの視点を中心に描いている。
    中でもロレンツォが窮地に陥り,弟を失ったパッツィ家の陰謀事件(暗殺によってメディチ家を排除しようとした事件)が,印象深かった。事件については漫画『チェーザレ』で知っていて,その上で読んだので一層理解が進んだと思う。時代背景も人名もなじみ深いとは言えなかったので,『チェーザレ』の前に本書だけ単独で読んでいたら途中で脱落していたかもしれない。塩野七生ってそのあたりわりと不親切なので,こういった関連本と合わせて読むのが吉かも。

  • マキアヴェッリとその世界を描いたシリーズ第1巻。マキアヴェッリの説明と言うよりは、この巻ではフィレンツェの歴史の説明に文が割かれています。どのような時代であったのか?フィレンツェはどのような発展をしたのか?これだけ見ているのも十分楽しいんですが、その中でマキヴェッリがどう生きて、何を書き記したのか、次巻以降に期待大です。
    フィレンツェはヴェネツィアとは正反対な成り立ち・政体なことがよくわかりました。

  • 1988年に第27回女流文学賞を受賞。塩野七生氏の歴史小説。マキアヴェッリの視点からフィレンツェの存亡を描きます。全三巻の一巻目。

    いやはや。歴史小説にチャレンジも轟沈。かなり苦戦して読み終えました。選んだのが世界史だったので、日本史よりも取っ掛かりにくく、また時代も良くなかったのでしょうか。

    本作自体は評価も高く良い作品だと思うのですが、如何せん15世紀イタリアと言っても、高校時代に勉強した内容すら頭に全く残ってないのだからどうしようもない。なぜにこの作品を選んだのかというところに尽きますね。はい、Twitterでbotから「おすすめ」と言われたからというだけの理由でございます。

    一巻では、マキアヴェッリ視点というより幼少期の出来事である、メディチ家の追放やサヴォナローラの神政・失脚などの出来事が、良くも悪くも淡々と描かれています。
    文章からは力強さを感じました。(が、前提知識がなく史実にはついていけなかったのは言わずもがな)

    次の二巻へのチャレンジは、もうちょっと歴史小説に慣れてからかなと。初心者でも理解できそうな三国志とか、司馬遼太郎とかを先に読んでからにしたいと思います。

  • 1巻
    ほぼマキャベリ出てこず。マキャベリが活躍する前の話。マキャベリが活躍する前の背景がしっかりと書かれているので、とても面白かった。2巻以降が楽しみ^_^

  • 再読。マキアヴェリに行くまでに1/3使っていたとは。

  • マキャベリっていうより、ロレンツォだね。
    物語の長い導入って感じでしょうか。

  • 『君主論』で知られるニコロ・マキアヴェッリの生涯をたどる全三巻の第一巻。

    マキアヴェッリは1469年にフィレンツェ共和国で生まれた。この当時のフィレンツェは、イル・マニフィーコの尊称をつけて呼ばれるメディチ家の当主ロレンツォ・デ・メディチが活躍した時代である。

    この巻では、「マキアヴェッリは、なにを見たか」というタイトルで、このロレンツォの時代のフィレンツェを描いている。

    メディチ家の隆盛と花の都と呼ばれたフィレンツェの基礎を作り上げたのはロレンツォの2代前の当主であるコジモ・デ・メディチであろう。しかし、そうして作り上げられた舞台で、共和国の内政やイタリア各国との外交で華々しく活躍したのは、ロレンツォだったと言えるのではないかと思う。

    イタリア半島が比較的平和な時代であり、フィレンツェでも多くの芸術家が活躍した。またメディチ家は、市民に対する気前の良い振る舞いで絶大な支持を受けていた。

    ロレンツォと弟のジュリアーノの兄弟の人気も高く、メディチ家がフィレンツェの僭主として、共和国の統治を担っていた時代と言える。

    このようなメディチ家の独占を好ましく思わない一部の勢力がローマ法王と結託して起こした暗殺事件である「パッツィ家の陰謀」事件においても、生き残ったロレンツォは市民からの大きな喝采を受ける。

    また、この暗殺事件の失敗後に、強硬策を諦めないローマ法王がナポリ王フェランテを味方に引き入れてフィレンツェ攻撃を始めた際にも、ロレンツォは単身ナポリに乗り込み、フェランテとの直談判で休戦に持ち込み、ローマ法王をさせることに成功する。

    このようにロレンツォは、やることなすことがすべて絵になり、ドラマになる人間だった。時代に愛された人物と言ってもいいのではないかと思う。

    筆者も、ロレンツォが「力量」を持っていたことに疑いはないが、同時に「好運」にも恵まれていたことを指摘している。この2つを兼ね備えることで、彼は歴史に名を残し、フィレンツェも隆盛を極めた。

    ロレンツォの死後、フィレンツェは修道士サヴォナローラによるメディチ家追放とフランス王との連携を経て、次第に勢いを失う。そして、イタリアの共和国間にあった勢力の均衡も、ローマ法王やフランス、ドイツ、トルコなどの外部の勢力の影響により、失われる。

    マキアヴェッリがフィレンツェ政庁の書記官として活躍し始めるのはこの衰退したフィレンツェの時代である。

    イタリアの勢力均衡の鼎の一つとしてのフィレンツェを見て育ちながら、自らは外国を含む大国に翻弄される小国としてのフィレンツェで働かざるを得なかったという落差が、マキアヴェッリの思想にも影響を及ぼしたのではないかと思う。

    政治・行政の現場でのマキアヴェッリの働きについては第二巻に描かれることになるが、表舞台に登場する前のマキアヴェッリがどのような時代の空気を吸っていたのかが生き生きと描かれていた。

    また、イタリアの各共和国にもそれぞれ違いがあったということも、この時代のイタリアを知る上でとても興味深かった。

    議会を中心とした共和政体を徹底していたヴェネツィア、王の権限が強かったナポリ、事実上メディチ家が僭主として統治しながらも、形式上は多くの名家の協議体により統治されたフィレンツェなど、政体に多様性があることが、マキアヴェッリのような政治思想家を生む一つの土壌になったのではないかと感じた。

  • マキャベッリ本人の伝記的な記載は極力控え、
    彼が生きていた時代背景や地理を
    説明することによって、
    人物像や著作を浮かび上がらせている。

    さすがだな、と思った。


    佐藤優さんの解説は要らなかったかな。

    解説というより、自分と自著の宣伝みたいに
    なっているし、気負いすぎ。

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