十字軍物語 第四巻: 十字軍の黄昏 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181479

作品紹介・あらすじ

「玉座に座った最初の近代人」と呼ばれる神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒ二世の巧みな外交により、イェルサレムではキリスト教徒とイスラム教徒が共存することに。しかしその平和は長続きせず、現代では「聖人」と崇められるフランス王ルイ九世が率いた二度の遠征は惨憺たる結末を迎え……。「神が望んだ戦争」の真の勝者は誰なのか──。『十字軍物語3』を文庫第三巻、第四巻として分冊。

感想・レビュー・書評

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  • 十字軍の活躍と没落を描いた最終作。イスラムの軍勢に囲まれた海洋都市アッコーでの最後の籠城戦における騎士団の生き様と死に様が切ない。

  • 地中海貿易の覇者ヴェネツィアの海軍主導による第四次十字軍と「ラテン帝国」の樹立、戦闘をしないで聖都イェルサレムを共同統治することをイスラム圏と約して帰国した神聖ロ-マ帝国皇帝フリ-ドリッヒ二世、〝聖都イェルサレムの解放は、異教徒との話し合いによるのではなく、キリスト教徒が血を流すことによって成し遂げられる〟の十字軍の末路は、聖都奪還失敗の責任をテンプル騎士団に着せた「でっちあげ裁判」で弾圧、ローマ法王のテンプル騎士団の解散宣言をもって「神が望んだ戦争」の幕が閉じられた。十字軍の惨憺たる歴史は、現代のイスラエルとパレスティナとの紛争のみならず、戦争の災禍を招いてしまう愚かな人間の悲しき業なのかも知れない。

  •  第六次十字軍は、カトリック的には無かったものとされている。
     神聖ローマ帝国皇帝フリードリッヒは全く戦わなかったのだ。
     フリードリッヒはイスラム側のスルタンとの交渉によって、聖墳墓教会はキリスト教、岩のドームはイスラム教というイェルサレムの分割統治という方法で聖地を奪還した。

     しかし、戦わず講和によってイェルサレムをキリスト側に取り戻した功績を、ローマ法王が許さなかった。
     キリスト教、イスラム教それぞれが互いを不信神の徒と罵り合っていた中で、その不信神の相手と講和するなどもってのほか。
     聖地イェルサレムはキリスト教徒の血によって解放されねばならぬ。

     その信条を貫いたフランス王、ルイ九世が第七次十字軍を率いる。
     フリードリッヒとアル・カミールの間で結ばれた講和だったが、イスラム側は王朝が変わっていた。
     サラディンから続いたアイユーブ朝は、奴隷兵士出身の王が新たに開いたマムルーク朝に代わり、キリスト教に敵対していた。
     そして第七次十字軍はルイ九世含め、一万人以上の軍勢全体が捕虜となる大敗を喫する。
     そして十字軍国家唯一の都市アッコンの陥落により、200年弱続いた十字軍は終焉を迎える。

     国の興亡史は参考になる。
     栄枯盛衰、兵どもが夢の跡である。

  • 聖地イェルサレムを巡るキリスト教徒とイスラム教徒の攻防(興亡)の200年史。「神が望んでおられる」の言葉だけで砂漠の街に価値を見出す人間の信仰と宗教がもつ力に感じ入る。つくづく宗教とは、感情を動かし、多くの人々を結束させる信念と行動の仕組みであると思い至る。

  • フリードリッヒ二世の奔放ぶりが楽しい。フリードリッヒ二世はリチャードと気が合いそう。塩野さん的に親分肌の真のリーダーなんだろう。カエサルやアレクサンドロスを語っている時のテンポを感じる。

    てもそれ以上にこの巻で印象に残ったのはテンプル騎士団。何のために闘ったのか?その存在意義を否定されることほど辛いことはないのでは?本人はおそらくいい人なんだろうけど周りにとっては迷惑千万なルイ9世が聖王で、十字軍国家に尽くしてきたテンプル騎士団が異端裁判とは何ともやるせない…

    これで今度はロードス島とかの話にも興味が出てきた。塩野さんの思う壺だなww

  • 王座に座った最初の近代人と呼ばれる神聖ローマ帝国フリードリッヒ二世の巧みな外交により、イェサレムではキリスト教徒とイスラム教徒が共存することになった。

  • 2019/5/4読了
    令和になって、最初に読んだ本であった。
    十字軍は、聖都エルサレム奪還を目的とした、武力を伴う巡礼という扱いだったとの事。とは言え、200年くらいの十字軍の歴史の中で、エルサレムに近付けもしなかった事(第2次)もあれば、お付きの枢機卿がエルサレム再復のチャンスをブチ壊したり(第5次)、フリードリッヒ2世が外交交渉のみでエルサレム再復した(第6次)のを一切認めず、ルイ9世を送り込んでブチ壊したり(第7次)――そもそも、戦争はロクでもない事だが、神の名を借りて行われると、更にロクでもない事になるのだな、と思わざるを得ない。

  • 「十字軍物語」の最終巻。大きくは第六次(皇帝フリードリヒ)、第七次(聖王ルイ)、アッコン攻防と進んでいき、ついに「十字軍」はその役目を終える。第一次から一貫して指揮系統一本化の困難に悩めされており、それは諸国参加型であるが故、あるいは海軍をイタリア諸都市に外注するが故と語られる点が印象に残った。昨今でもコンサルや非正規社員に頼りがち...というのはよくある話で中々に思うところがあった。

  • 登場人物の中で教皇が一番血の気が多い。
    数世紀後にイラク戦争やアラブの春がどう扱われるのか。
    今後オリエントの復権はあり得るのか。

  • 処分

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