そして、アンジュは眠りにつく (新潮文庫 し 29-8)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101187082

作品紹介・あらすじ

なぜ私の世界には光が差し込まないの-。様々な言葉や音楽、そして匂いがアンジュの世界を創造する表題作。伊東君ち、クルド人ゲリラのテント、そしてマサイ族と、世界中を飛び回る「茶の間を旅して」。営業成績抜群の豊臣秀吉に蔑まれ、得意先の徳川家康社長のもとに日参する、サラリーマン明智光秀の物語「カタストロフの理論」。ある日起きると鼻でモノを見ていた「奇蹟の鼻」など、九編を収録。

感想・レビュー・書評

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  •  1995年くらいに書かれた短編が9点、収録されている。一編、一編、読んでいくにつれて、どんどんナンセンス感が深まっていくような感じがした。独特で摩訶不思議な世界観。でもわたしはやっぱり長編の方が好きかも。長い長い島田雅彦ワールドにズブズブに浸り尽くしたい。

  • 島田雅彦の中では結構好きだな。おっさん臭くなくて。特に「茶の間を旅して」は良かった。三部作を読んでからアンジュは眠りにつくを読んだので、スピンオフ感があった。

  • 少年時代の友人たちの茶の間から、日本中、ひいては世界中の茶の間にお邪魔するのを生きがいとした人のストーリー「茶の間を旅して」をぱらりと見て気に入り、手にとった一冊。「神は不合理だから祈るしかないのよ」「私は糞で作った茶の間で、糞の接待を受けたのだった」/殺す覚悟で強く関係を求める女性から、いのちからがら逃げ出す「イヴの植民地」。元テロリストの息子と承知の上で買ってくれた、帝国を支配する”元帥の妻”、その日々を描く「ばらの騎士」。「後悔しても空しいだけなのについ考えてしまうものなのよ。もしもあの時そうしていなければって」/明智光秀と名乗るサラリーマンが、徳川という取引先、豊臣というやり手の同僚、マクベスばりの魔女に翻弄されつつ、最後は破滅的な道行き、「カタストロフの理論」。などなど。

  • 読み始めはエッセイかと思った

  • 不思議なテイストの物語。
    島田雅彦の過去をどのように、再現し物語化するのか
    に取り組んでいるような気がした。

    茶の間を旅して

    冒険するところは 高いところや寒いところではなく
    ニンゲンが生活している 『茶の間』にある。
    その茶の間を旅する中で 自分の茶の間とヒトの茶の間は
    違うことに気がつき、そして、そこから、自分の生い立ちが
    はっきり浮かび上がってくる。
    伊東君のオヤジがものがなしい。

    ダイヤモンドヘッド

    レコード針のことだった。
    オランダ人のヒュースケン氏が、刀の代わりに
    レコードプレイヤーをくれたのだ。
    それで 人生が大きく変化したのだった。

    七歳の男

    ズボンを下げ、股間にぶら下がる小指大のものを見せる。
    落とし物のギャグである。
    将来何になりたいということが、わからない時代だった。

    赤い服の女

    記憶の中にある赤い服の女を、たぐり寄せていくと
    それは 母親だった。

    イヴの植民地

    フランスで日本人が イヴに出会った。
    いつの間にか 自分は 植民地とされていた。

    バラの騎士

    よくみえない 物語。
    不仁は権力を持っていて すべては子宮に入ってしまうほどだ。
    カンカンは 巨根らしい。それで、女装もする。
    最後は 切り取られてしまうのだが。

    奇跡の鼻

    嗅覚の鋭い女のは 何を求めるのだろうか?

    カタストロフの理論

    明智光秀、豊臣秀吉、徳川家康。
    それぞれに、イメージがある中で、物語を構成し直す。
    こういう物語はおもしろい。素直ではなくひねくれているから
    成り立つのかもしれない。

    そして、アンジュは眠りにつく

    光のない世界で生きているアンジュの世界を描く。
    見えないことで、見えるものがある。
    つまり、眼に頼りすぎてきたことへの文明批判

  • 九編からなる。
    「ばらの騎士」は、R・シュトラウスのばらの騎士のストーリーだが、カンカンの視点で書いてある。俗っぽい話をさらに下ネタ満載にし、最後はぶっ飛びの展開。
    「ばの騎士」のパロディーとして、面白くて笑える。

  • はるか昔に文庫本で購入し、そのまま積ん読で書棚に埋もれてしまっていた(ごめん)。この度iPad用にPDF化してそれを機に読了。

    で、引用欄にも書き出したけど、島田雅彦の脱力感と緊張感の狭間を突く言葉遊びが心地良い。とくに気に入っているのは「今度は道が三つに分れて、ぼくを迷わす。どの道を行けばいいか教えてくれなかった薄情な友達への恨みがζみ上げてくる。どうにかしなくちゃ。天神様のいう通りにしなくちゃ。」の部分。

    ポストモダンな頃にデビューして、肯定否定どちらの立場にせよそれを意識しなかったわけはないと思うんだけど、その頃からの経験が面白く消化されているような感じ。

    出版から読了まで間が空きすぎてはいるんだけど、今読んでもとても面白い小説。

  • 短編集。
    タイトルは忘れたが中にとてもちゃちなホラーの短編がありがっかりした記憶あり。

  • 電車に乗って、日々を憂いた。そして、あいも変わらず島田雅彦のセックスとペニスとオナニーばかりのお伽話を読んでいると、よけいに電車の中にいる私は夢なんじゃないかとほのかな期待を持ってしまう。だけど、ふと顔を上げてみるとその目の前にたっていたのはタダの現実だった。<br>
    私はただ、夢の世界に入り込んだふりをしていたかっただけだった。
    <br><br>
     あいも変わらず状況は変わらず、月曜に起きた事も、今日の明け方に起きた事も、中央線で2往復している事も、全てが消えて、2年前にもどっている事なんてない。
    <br><Br>
    今は、2年前にもどりたい。<br>
     今の自分が嫌いだって訳じゃない。<br>
    でも、後悔してる。<br>
    <br>
     <Br>
     この帝国では一体どれだけの人々が取り返しのつかない過去を嘆いている事やら。<br>
    ......後悔しても空しいだけなのについ考えてしまうものなのよ。もしもあの時にそうしていなければって。<br>
    でも、その時の選択はたぶん正しかったのよ。その時の動機や目的は忘れられているけれど、何年も後になって「どうしてこうなってしまったの」という疑問は永遠に消えない。
    <br>
    (無断借用 『そして、アンジュは眠りにつく』 島田雅彦 より「バラの騎士」の一節)

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著者プロフィール

作家

「2018年 『現代作家アーカイヴ3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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