芥川症 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101203423

感想・レビュー・書評

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  • 芥川龍之介の作品題名を捻って、医療ミステリーに仕上げた現役医師ならではの、ブラックユーモア的な医療ミステリー。
    『藪の中』をもじった『病院の中』は、医療現場で如何にもありそうな・・・
    『芋粥』をもじった『バナナ粥』は、切実な介護問題を描きながら、最後は落語的なオチが。
    『地獄変』をもじった『極楽変』は、シュール気味で、ちょっと敬遠。
    その他4編も、それなりに楽しめた。

  • 著者のデビュー作『廃用身』に度肝を抜かれ、その後のいずれの作品にも衝撃を受けました。いちばん最近読んだ『嗤う名医』で初めて短編を読み、その腕にも唸りました。本作はそんな著者による芥川龍之介作品のパロディ。登場順に(括弧内が芥川の元ネタ)、『病院の中』(『藪の中』)、『他生門』(『羅生門』)、『耳』(『鼻』)、『クモの意図』(『蜘蛛の糸』)、『極楽変』(『地獄変』)、『バナナ粥』(『芋粥』)、『或利口の一生』(『或阿呆の一生』)。最終話の『或利口の一生』に「パクリ」という項があり、そこに著者の本音がそのまま記されているようです。「小説というものは自分で筋を考えなければならないものだと思っていたのに、芥川の短編に『今昔物語集』に想を得たものが多いと知り、ならば芥川が『今昔物語集』からパクッた小説から、さらに自分がパクッて書いてやろうと思ったのだ」と。パクるといえば聞こえが悪いけれど、想を得たのだといえばいいんでしょと。その言葉からもわかるように、かなり人を喰ったような話で、かつグロテスク。この著者のことですから、相変わらず上手いし飽きずに最後まで読ませることは確かですが、どれもこれもバッドエンドで、パロディのわりに読後感が重い。しかも医者としての知識を存分に使っているからグロいのなんのって。同じ重さならばいつもの医療系の小説を読みたいなぁ。

  • 芥川の原作(地獄変やクモの糸など)のパロディーです。
    あと、医療・介護現場を扱っているのでその辺の知識があったほうがいいなあ。

    ブラックユーモア満載ですね。かなり黒い。スパイスもだいぶ効いています。
    極楽変はこわかったな~。
    20170131

  • 芥川龍之介の作品にインスピレーションを得て、医師らしい皮肉とユーモア、そして毒を一盛りした短編集。医師目線が効いている。

  • 芥川龍之介が、いかに優れた小説家であったとはいえ
    残されたのは基本的に小粒な作品ばかりだった
    だから、そのスキャンダラスな死への憧憬を抜きにしては
    こうも長年読み継がれる存在となりえたものか
    少々疑わしいと思われる向きも、けっこう多いと思う
    半ばは真だ
    しかし、芥川の凄まじさは
    その死に至る準備段階からの副産物として
    「歯車」などの壮絶な晩作を次々と生み出してきたところにあるのだ
    自らの意志により死を捉えた人の明晰さ、というある種のロマンを
    芥川は、いちはやく体現してみせたのだ
    …とはいえ、むしろ本人としては
    「阿呆」と呼ばれて笑われることを望んだのかもしれないけれど

    久坂部羊の「芥川症」は、作者の専門である医療をテーマとしつつ
    芥川龍之介の代表作をオマージュした短編集
    死におびえる人々、それに死を相対化して安心する人々の
    罪のない(こともない)平凡さから
    生きることのありがたみを抽出しようとする一方
    死への抗いを不自然なこととしても描いている

  • 芥川龍之介の作品をもじったタイトルの短編集。どれも皮肉っぽい内容で「病院の中」「或利口の一生」あたりを読むと、病院で医療を受けることが怖くなってきました。

    ただ、内容に分かりづらいところがあって、結末を読んでも「?」となった話がいくつかありました。まぁこれは自分の読解力に問題があるのでしょうが…

  • 芥川作品になぞらえた短編集。芥川作品を読んでからのほうがいいかも。
    久坂部作品はフィクションなのかノンフィクションなのかわからなくなる。「病院の中」の最後、DNAで寿命が分かるっていうのはホント?
    ブラックユーモアというかひねくれてるというか、読んでて気持ちの良いものは少ない。

  • 往年の筒井康隆を思わせるブラックなバタバタ。

  • 芥川龍之介の名作をパロディちっくに模しているが、内容は結構真剣。医者との距離が近づく。2017.3.27

  • 【収録作品】病院の中/他生門/耳/クモの意図/極楽変/バナナ粥/或利口の一生
     ブラックユーモア。現場を知る医師が書いただけに、笑えない。

著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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