- Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101240541
感想・レビュー・書評
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十二国記内で王を選ぶ役割を持つ麒麟。しかし事故のため10年間消息の知れなかった幼い麒麟に王を選ぶという大役ができるのか?麒麟の苦悩と成長を描いた作品。
『魔性の子』の空白期間とも重なるエピソード。シリーズ前作『月の影 影の海』ほど壮絶なストーリーではないものの、幼い麒麟である泰麒が周りの期待に応えたいながらも、どうにもならない様子は読んでいるこちらも応援したくなる愛らしさ。
登場人物たちも魅力的。前作にも登場した景麒が今回も登場していて、前作では彼の内面については深く伺うことができなかったので今作で満足!泰麒の世話をする女仙たちや友達となる武将たちもいい人たちで、だからこそ余計に泰麒の「周りの期待に応えなければ」と苦悩している様子がこちらに伝わってくるのかな、と思います。
だからこそ彼の成長はうれしく、また終盤に味わう彼の辛さも読んでる側にじかに伝わってきました。
詳しくは覚えてないのですが、この後またいろいろあって『魔性の子』につながっていったんだよなあ…そのあたりの流れを書いた話の完全版が出るのが今から待ち遠しいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
魔性の子と繋がりがとてもある内容。高里(泰麒)が蓬莱で神隠しにあったとき何が起こっていたのかが主な内容になっている。また蓬莱に戻ってしまうわけだけども、なぜなのかはここでは分からなかった。他のエピソードで知ることができるのか、それも楽しみです。
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麒麟が王を選び、王が国を統治するというこの世界の仕組みを麒麟の視点から描くのが今作。
そして、天帝が定めたこの決まりは何で残酷なのだろうとも思った巻でした。
泰麒は10年蓬莱という、いわゆる現実世界の日本に流されていたのに、いきなり「人ではない獣。王を選ぶ存在」と言われて戸惑う。彼を育てる女怪や女仙、碧霞玄君玉葉に囲まれて幸せな日々を過ごすが、蓬莱に残してきた家族も恋しい。
しかも己は不完全な麒麟であると思い込んでしまう。そこで慶国の麒麟である景麒が彼を心を通わせる。そこで泰麒は麒麟とは何かを学んでいく。
景麒との心の交流もあって、実際に自らの国の王を選ぼうとするときに、戴国の驍宗や李斎といった「王に選ばれるため」に自分の住まいの山に登ってきた将軍たちと心通わせる姿はとても健気だった。
驍宗にはっきりと感じる天啓を感じずとも、彼と離れるのが嫌だという気持ちが泰麒を突き動かし、ずっとなれなかった麒麟の獣の姿になって駆けつけるシーンは良かった。あれこそが「驍宗こそ王である」という天帝の意思によってなされるものと信じたいけれど、やっぱり天帝の意思を麒麟というひとつの知的生命体の意思を通じて表出させ、その上で王を選ぶというのはとてもリスキーな仕組みだなと思いました。どんなに周りの者に慕われていても麒麟が選ばなければ王にはなれない。麒麟の意思は天帝の意思。麒麟を圧倒的な光とし、この光に従えと示すことで、天帝が支配するこの世の中の成り立ちに誰も疑問を持たせないようにもしている気がするんだな。
うーん。やはり天帝許せませんね。
天帝が作った世界で懸命に生きる人、麒麟、女仙、女怪、妖魔、女神、どれもこれも愛おしいのですが、天のご意志だからこそ推察しなくてはいけないという意識はどうにも発展しないのか。
あまりに制約が多い世界の中でもがきながら生きる者たちの話だと思って読んでいます。
終盤、景麒が「もう少し時間があれば天啓について教えられた」と泰麒、すなわち蒿里に話すところも、延王と延麒が来て泰麒の不安を取り除いてくれるのも良かった。何より驍宗を選んだ己を蒿里が誇らしく思えるところも良かったな。どんな麒麟もどんな王も孤独ではないはずなんだ。
蒿里という名前を驍宗がつけてくれるくだりも良かった。この二人が離れることないようにと思うが、どうして魔性の子に繋がっちゃうんだろうな。
蓬山の様子も戴国の王宮の様子も素敵だった。こういうのが好きなんだ。延王と延麒の二人が戴国を思ってくれるのも良かった。次はこの二人の話と聞いてワクワクしています。
この後のシリーズも読んでまいります。 -
献身な汕子の心の機微が良いよね
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どうしても問いたい。なぜこんな、新しい読者に対しておもいやりのない解説を載せている? 長年のファンに阿っておけばいいと考えているなら甚だ遺憾だ(辞書に載っているそのままの意味で)。解説自体はよいものであっても、すべての読者に対する誠意が失せるなら不要。さて、ようやく読めたシリーズ2作目。けなげな泰麒の様子に終始目を潤ませながら、「麒麟」が麒麟として存在するとはどういうことかを紡ぐ物語を味わった。第1作目でなかなか掴めなかった某登場人物(?)についても理解が深まり嬉しい。鈍行ではあるが、次も楽しく読みたい。
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麒麟が王を選ぶ話。
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魔性の子の主人公、高里の物語。
神隠しにあった彼がその期間どこで何をしていたのか。そして魔性の子の世界線で何が起こっていたのか。答え合わせをするように読んだ。
不気味な剥き出しの腕は優しい存在だったし、感情が希薄に思えた高里は素直で優しい子だった。おまけに怖い人のように感じていた景麒もただ不器用なだけの良い人で、これは登場人物みんな好きになる。
泰麒の罪は苦しくてどうなるのかと心配した。周りが当たり前に出来ることが出来ない。理解できない葛藤は辛い。この後また蓬莱に戻るのは何故なのか。まだまだ謎多し。
魔性の子から読んだのに私はどうしても陽子に会いたくなってしまう。 -
二作目は一転して戴の国の麒麟である泰麒の話。プロローグを読んであれれ。これ魔性の子じゃん。というわけで幼くして神隠しにあった高里少年の空白の1年のあちら側の話とわかるという仕かけ。大半は独り立ちするまでの蓬山での生活のようすが描かれる。子供だとはいえちょっとなよなよぐずぐずし過ぎだし、周囲の女官の過保護ぶりはそれを助長していると思えるが、最後は最強の妖獣饕餮を指令に従えて無事獣体への転変も成し遂げてとりあえずはめでたしめでたしとなる。肝心の王選びのはらはらもののエピソードもなかなかうまく効いている。ただしこのあといったん蓬莱へもどって高校生まで過ごすことになるはずだけど、それはあちらの世界ではどう描かれるのだろう、というのは先のお楽しみなのかな。
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面白かった。
最後の解説で、えっ、この子があの「魔性の子」の高校生?あ、確かに名前が高里だった、と分かったり、最新刊で行方不明になってた王との出会いはこうだったのね、と感心したり、李斎もここで出会っていたのねと納得したり。読む順番が発表順ではないので、まるでこちらが外伝のような楽しみ方をしてしまった。それはそれで楽しめてよいもの。
陽子に出会う前の景麒もいいな。
シリーズの残りも満喫しよう。 -
麒麟の運命を持つ10歳の子供の成長とその宿命と葛藤。
この世界の設定は独創的であるが、現代世界でも、何一つ見えないものを手探りで決めていかなければならない場面も数多い。失敗の選択肢など、ないのだと… -
魔性の子より。たい国の物語のよう。
泰麒が可愛いと勧められたけどごめんよくわからなかったよ。
世界観の根元が気になる。トウテツや九字は道教だっけ?
続きが気になるものの次のたい国の話はオールスターズだから、最初に戻ってけい国の話を読めと勧められる。短編集除く全巻お買い上げ~。 -
ファンタジーだが大きな盛り上がりがない。主人公の不安が淡々と続いて最後に一気に好転したことで、主人公の世界がパァと明るくなるのが伝わってきた。今作の主人公は繊細でか弱く、読んでいるこっちも「あんまり酷い目に遭わせないであげて」と思わされる。
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ERバローズ『火星シリーズ』の“生命の樹”のアイデアを借りてか高貴人は貴木に成る。ダライラマをパンチェンラマが補佐するように『国王』を『麒麟』が指名し補佐する体制。そういう世界を『天帝』が作ったのだという。汕という人獣一体の女妖怪(表紙絵)も木に成る。生まれたとたん基本的なことは知っている都合の良い設定。麒麟たる者の唯一の使命を「人情に負けた」と言われてもなあ。ちょっと伏線不足ではないか。『魔性の子』では怖かった白汕子が泰麒=泰国の麒麟を守護する役割。徐々にわかるはずを解説の井辻朱美さん、ネタをバラし過ぎ
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誠実さとは、ということを考える。苦悩と結びつく、結果を引き受ける覚悟でもある。登場人物の心のうち、特に揺れを描くのが見事だな、としみじみ思う。
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風の海 迷宮の岸十二国記2新潮文庫
小野不由美
我がこそはと名乗り挙げたものたちを前に、この国の命運を担うべき王を選ぶことが出来るのだろうか?
タイムライン
https://booklog.jp/timeline/users/collabo39698 -
このシリーズの中では読みやすい本だった。
魔性の子より時系列が前の話。
このまま魔性の子へ話が繋がっていくのかと思ったら、途中で途切れてしまった。
きっと、先に続編があるのだろう。
非現実的な話なので、物語の設定を理解するのが少し大変だった。 -
魔性の子の続きと言える、泰麒の話。
泰麒と一緒になり、不可解な世界を味わえます。
前作より少し遡った時期の話です。 -
主人公にあまり感情移入できなかったために、シリーズ物の中の1巻、という印象で読み終わってしまった。
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幼い麒麟、泰麒の成長の物語。
この一冊全体で、世界観を説明するためだけの伏線のような役割があるんじゃなかろうか。
泰麒は可愛らしいが、しょたこんじゃないので萌えないねぇ。 -
泰麒の話。
シリーズ中の他の話では終わりが短く終わるので、話の締めは麒麟になって終わるのかと思っていた。他のシリーズと違って主人公の心の成長があまりなくて話としては面白かったが感動はなかった。 -
ここからどう魔性の子に繋がるのかが、すごい気になります。
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先に有線放送のアニメで事の顛末を見てしまったため、読者の不安を煽る泰麒の心理描写を充分に楽しめず、泰麒が苦悩する過程もけっこう陰鬱としていてしんどかったため、読み進めるのに時間と根気を要した。
十二国では麒麟がそもそも天意の体現者であるはずだが、泰麒はその自覚・自信をなかなか持てない。その背景に説得力があってぐうの音も出せない。
あまり関係ないが、蓬山での泰麒の日々が芥川の『六の宮の姫君』に、あの場面は中島敦の『山月記』に微かに重なった。