ボトルネック (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101287812

感想・レビュー・書評

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  • ラストが絶望すると聞き、気になって読んだ。個人的にパラレルとか転生の題材はあまり好まないので、進んでは読まない小説に分類されるが、面白かった。
    正直、最後まで読んでも二つの世界の差をリョウが自責する必要はないと本当に思う。仲良いも仲悪いも両親の問題だし、事故るのも兄貴の問題だし、誰かを模造するのもノゾミの問題。それでも、まだ学生でどんなに苦しくても経済的にも精神的にも自立が難しいリョウに二つの世界の差は酷過ぎたと思う。ラストのトドメは痺れる。
    リョウは何も悪くないが、誰かがサキの様に想像して抵抗して引っ掻きまわすことをリョウに見せていたら、やっぱり結果は異なったかもしれない。

  • 少しでも行動に移していたら良くなってたかもしれない未来を突きつけられて残酷だなと思った。お母さんからのメールはトドメを刺された感じで、元の世界に戻ってきたんだという現実をリョウに突きつけてきて苦しすぎる…目の前に東尋坊があればリョウは最後身投げしてしまったのかな…。
    “間違い探し”もボトルネックも意味が全部仄暗くて、北陸の天気も相まって終始憂鬱な小説だった。(そばにいるのが)僕じゃなくて本当によかったと、そう思っているんですよっていう台詞を言わざるおえないリョウの人生が悲しいかったなぁ。

  • パラレルワールドものだったのか。
    読み終わったばかりの今の感想は…病みそう。笑
    思春期に戻った気分。

    「ボトルネック」か。なるほど。しばらく聞きたくも見たくもない言葉になったな笑

    自分が存在する世界と、自分が存在しない世界。
    自分が生まれていなかった世界の方が良いもので、自分が存在してしまっている事で周囲がみな不幸になっているとしたら…ってそんなこと考えたら鬱になるわ…泣 

    考えたらってだけでなく、それをリョウくんのように実際にもう一つの世界で目の当たりにしちゃったら…。無理だ…泣 しかも最後のお母さんの強烈な一言。うん、私には無理だ笑
    現状では誰からも必要とされず愛されず、それでも最後生きていく選択をできたとしたらリョウくん、どうか幸せになっておくれ!!頼む!

    思春期に考えそうな事だな。私も通って来たな、自分なんていない方が…って病みに病んでた時期。

    はぁダメだ。寝る前に読み終えるんじゃなかった。
    病む…笑
    これは私みたいな病んでる人は読んじゃダメなヤツですね。危ない。元気百倍ポジティブさん達向けかも。いやでもポジティブさん達には闇すぎて共感できずハマらないのかな。

    途中まで、軽いラノベテイストであまり好みではないかもと思いつつも、このパラレルワールド物はどう展開していくのかと気になってサクサク読み進め、後半一気にキツくなった。
    多分読み直す事はない笑

  • 主人公(リョウ)がパラレルワールドに行き、そこで元の世界にはいなかったはずのサキ(姉?)に会い物語が進んでいく。元の世界との違いを色々と感じながら、リョウは「自分がいなければ」と思ってしまう。リョウにとって元の世界が「酷い状態」でそれがリョウの性格を形成している。元の世界に戻って、全て良くなっていてハッピーエンド、という安直なものではなく、最後のメールを見てリョウがその後どうするのか読者の想像に委ねられている感じがする。金沢の天気の描写のように物語全体が少し暗い感じであるが、そこにサキの性格の明るさがいいアクセントになってると感じた。この本を読む時の気持ちで、自分なりの解釈が色々変わってきそうな感じがする。

  • 設定が面白く、文章も読みやすいです!
    後半にかけてハッピーエンドを期待しながら読んでしまいましたが...

  • ちょっと私には難しかった。というか、最後まで読んで、読者に考えを任せるって感じが、学校の"国語"ぽくて、あんまりすっきりした感じがなかった。

    けど、リョウ(主人公)とサキ(リョウが生まれなかった世界の嵯峨野家の2人目)がそれぞれの世界の"答え合わせ"をしていく場面は、おもしろかった。スピード感も好きです。

  • 面白かった。気持ちよくスラスラと読めたし、
    先が気になるストーリー。
    登場人物のやりとりがラノベっぽくて読みやすいけど、ちょっと非現実的かな。
    でもその軽さがないと、ものすごくしんどい話になってしまった気がする。
    ラストがあんな形で終わると思わなかったので、突然落とされたかんじ。
    リョウの辛さ絶望がキツい。
    最後のメールの解釈、そんな考えもあるのだなーと感心したけれど、私にはどうしても良い方向に考えられない。そんな簡単に人は変われない。

    その後最後の数ページだけ読み返した。
    ノゾミの望みがわからなかったのが、なんとなくわかった。
    それによって、リョウの選択がどちらになるのかわからなくなった。決められないのよくわかる。
    リョウにとってのハッピーエンドがあり、最後のメールで彼がどちらに背中を押されたのか、解釈によって、本当にさまざまになる。
    ここまでのストーリーも秀逸ながら、最後まで考える余地のある物語、読み手ひとりひとりに結末がある物語、すごいなと感心した。

  • [1]痛切やけど、読み方によっては別のとらえ方も?
    [2]リョウはノゾミを悼むため行った東尋坊で自分も落下、気がついたら金沢に戻っていたが自宅には存在しないはずの「姉」サキがおりどうやらパラレルワールドのようなのだが二人はディスカッションしながら二つの世界と自分たちとの因果関係を探り少しずつ理解してゆきそれぞれの世界でなにが起きたか、なにが起きるか推理していく(主にサキが)。そして…リョウはサキを知った。それは彼にどんな道を示す? 痛みだけなのか、希望なのか。
    [3]リョウの物語は未完だろう、というかようやく始まるところかもしれないのでリョウとサキを再会させたい気もするが、それはまあ、物語的には余計なことなのでしょう。あと、先に解説読むと興醒めになりそうです。

    ■簡単なメモ

    /恋した人、ノゾミを悼むため彼女が転落死した東尋坊に来ていたリョウもまた転落し目覚めると東尋坊に出発した2005年12月3日の金沢にいたが自宅に戻ると知らない女子高生サキがいた。どうやらリョウの世界では生まれなかった姉であり、逆にこの世界ではリョウが生まれなかったようだ。
    /リョウとサキは互いの世界の違いと自分たちがいることいないこととの因果関係を推理しつつ確認していく。
    /「正確には、弟らしきもんです」(p.93)
    /日の光を浴びたくないときもある。(p.115)
    /そしてこちらの世界では諏訪ノゾミは生きていた。そしてサキと親しく、天真爛漫で傍若無人で、そして幸せそうだった。
    /リョウとサキは東尋坊に行く列車の中で二つの世界のノゾミの差異を語り合う。ノゾミははたしてどういう人物であったのか。
    /東尋坊で、サキはリョウの世界で何があったのか推理する。そして自分の世界で何が起きるかを。

    ■簡単な単語集

    【兄】→嵯峨野ハジメ
    【大雨の日】両親が互いに愛人を作っていたことが発覚した日。この日を境にリョウの世界とサキの世界ではズレが生じたようだ。サキとリョウの行動の差がその違いを生んだようだ。
    【金沢】個人的な話。大阪在住なんやけど、金沢は案外近いんでいっときは月イチくらいで行ってて常連ぽくなった喫茶店もあったりしたけど、だんだん魅力を感じなくなったのはキレイらしくなりすぎたからかもしれません。故郷に近かった倉敷も中学生の頃は週イチくらいで行ってたけど「美観地区」になってからはキレイすぎて気分が削がれ二回しかいってない。シブさが欲しい…
    【金沢駅】例の鼓門はすでに存在するようだ。物語は2005年のようだが、もう存在してたのか。
    【グリーンアイド・モンスター】妬みの怪物。生者を死の世界に誘う。芦原温泉の駅で子供が教えてくれた。
    【嵯峨野アキオ】リョウの父。愛人を作っていた。
    【嵯峨野サキ】→サキ
    【嵯峨野ハジメ】リョウの兄。バイクで転倒して意識不明となり長い時間を経て死んだ。サキの世界ではもっとあっさり死んだらしい。
    【嵯峨野ハナエ】リョウの母。愛人を作っていた。
    【嵯峨野リョウ】→リョウ
    【サキ】嵯峨野サキ。アキオとハナエの娘だと自分では言うがリョウはこんな姉など知らない。なかなかさばけた性格のようで理解しがたい存在であるはずのリョウのことも頭ごなしに否定したりはしなかった。《想像してみてよ!》
    【小京都】金沢駅前広場に「ようこそ、北陸の小京都へ」というポスター。金沢の人はこの呼ばれ方を嫌っていると思っていた。ウチは城下町であって、京都とは成り立ちからして違う、と。もっとも御所を城の一種だと考えれば京都も城下町なのかもね。
    【諏訪ノゾミ】「ぼく」が恋した女性。東尋坊で転落死した。厭世的なところがあったので自殺説も根強いが「ぼく」は事故死だと信じている。ぼくから見ればノゾミはかわいそうな子だったがノゾミから見れば「ぼく」がかわいそうな子だったらしい。《ノゾミ自身はそもそも解釈されていないのだから》p.147
    【辰川食堂】リョウ御用達の食堂。最安なら一食百四十円。
    【ぼく】→リョウ
    【結城フミカ】諏訪ノゾミの従妹。ニンゲンの写真わ撮影するのが趣味? リョウのなにかに惹かれて撮りたがる。
    【リョウ】嵯峨野リョウ。主人公の「ぼく」。高校一年生。転落死した諏訪ノゾミを悼みに東尋坊に行って自分も転落しなぜか自分の住んでいたことは別の金沢にいた。感情の起伏は激しくなく、なかなか他者に懐かず、情報の開示をしたがらないタイプのようだ。《だけどこのとき、不幸なのは自分だけだと思わなかったことは、ぼくのささやかな誇りになっている。》p.119。《何でもなくなれば、いいんじゃないかな》p.119

  • 男子高校生が主人公のパラレルワールドミステリー。
    登場人物のキャラクターになかなか感情移入も共感もできず‥だったのですが。
    ネガティブな感情が渦巻くストーリーと結末に少し心が暗くなりました。
    最後のセリフに本当に嫌な気持ちになり、私もなんだか傷つく。
    その後、彼はどんな行動をとったのだろう。
    そんな余韻の残るミステリーでした。

  • ミステリ小説。
    自分だけがいない世界と比較し自分が周りに与える影響を"間違い探し"によって思い知らさせることになる。その結果、自分は間違いでありボトルネックだった。わずかな希望として兄から申し訳程度に「他の誰にもない個性が誰にだってあるんだ」と言われていたのが印象的。
    自分にはやはりミステリーは合わないのかも。徐々に謎が明らかになっていくが「こういうプロットで話が展開していったら面白そうだな」を外れると興味を失ってしまう。結末は意外性があったものの特段心地よいものでもなかった。

著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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