- Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101294025
感想・レビュー・書評
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読んでて息を飲んじゃうような、
何でもない日常のなかのこと。
人の心を良く書いているなぁ詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
風景の描写やちょっとした瞬間を言葉で表すことで、たくさんのものを語ってくる。
日本文化ってそういうもののような気がする。 -
水上勉の解説の言葉がまさにその通りなので引用させてもらう。
“たった三時間くらいの、ありふれた夕刻の日常に人の生も死もぬりこめようとする力があって、なるほど、そういう時間を、われわれは生きているのだということを、この小説から語りかけられる。”(p.220)
普通に暮らしていると、綺麗なところばかりみてしまいがち。
人の心のなかの“黒い芽”に気づいてハッとして、ゾッとする。 -
日常には、小さな嘘や誤魔化しを積み重ねて成り立っているような危うさがある。そういう人間の暗さが絶妙に描かれている。大人の文学だとおもう。
年齢を重ねてから読むと、共感の仕方も変わってくるんだろうな。 -
何とも暗い気分になる小説。
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とても30年程前の作品とは思えなかった。遠い日本の家族の肖像画を
みせられているような短編13編.直木賞受賞作品
この本の中で主人公が戦後の記憶をたどる時、日本人はとても貧しかった、みんな飢えていた
肩が薄かった。そして生きるのに必死で、必死である分そこはとない
哀愁が漂っているようだった。
そしてとても手の込んだ工芸品のようで、彫りが深く、奥が深い、襞が幾重にも
重なっている
人間関係が今より密であるぶん、おとす影の色も濃い。
黙々と草を食むような穏やかなくらしをしているつもりが、ふりかえると
肉がつき脂がついている。それにはっと気づく時がある。きっかけは
記憶、匂い、音、空気が呼び起こす。その筆さばきが冴え渡っている
その中には誰にもいえないこと、後ろめたさ、よわさ、狡猾さも含まれる
それを人の愛しいものとしてきりとってある。
1行の中にいくつもの比喩がかくされている。
1編だけ男女のたとえばなしで私にはわからない個所があったのだけど
知りたいような、知らない方がいいのか
また何年後かに読み返してみよう。読む度にああそうだったのかとおもわされてしまう程新鮮さは失われない。 -
13話を収めた短編集。どこにでもいそうな「普通の人」の、これもまたどこにでもありそうな「普通の事」がつくりだしている、心の鬱屈や屈託。
鬱屈や屈託や、その他もろもろの、考えてしまうと憂鬱に捉われてしまうようなことを出来る限り考えないようにしている僕のような人間にとって、こういう小説は、イヤなものだ。
イヤなものなのだけれども、最後まで読んでしまうだけのものが、この短編集の中にはあるように思える。 -
初めての向田邦子。
日常は平凡なものごとの積み重ね、などではなくて、特異なことに慣れてやり過ごす時間の連鎖なのではないのか。
忘れてしまっている小さな符号が、とても重要な何かだったのかもしれない。
そんな風に、身の回りに対する感覚が少し緊張するのを感じる。
短編集だけれど、とても重厚感がある。
鮮烈な印象がザクリと斬り込んできました。
もっと読みたい。 -
しんみりと、やるせないような、ちょっと不気味なようなお話の短編集。
日常って意外とコワイよね。自分の記憶のかなたにもこんな「思い出」が実はあるのかなぁって思ったりした。
もう一回時間を置いて読みなおしてみたい。 -
終始淡々とした内容だった
皆んな他人には理解できない心の傷を背負いながら生活してるんだよなー、なんて思いながら読了