- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101309712
感想・レビュー・書評
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読み始めて、しまった…と思った。ヒリヒリするような恋愛の追体験をしているような。けれど、やめられない。他人から見ると、どうしてそんな関係を続けるの? と言われるような恋愛も、そのさなかにいるときは、きっとこんな気持ちなんだろうなぁと、生き生きと伝わってくるような筆致。
激しく、強く、痛みさえ感じたあとの最終章で訪れる回想のとき。穏やかで、でもまだ痛みがあって。
「すべてを手に入れてもなお不幸な人間がいるように、すべてを失ってもなお、幸福でいられる人間もいるのだ」「愛を知るためには、愛さなくてはならないのだ」
この境地に至るまでの主人公の想いに、最後は静かにうなずかされてしまった気がする。
嵐のあとのような読後感は、悪くない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
他者と幸せな関係を結べない深い孤独を抱える人の恋愛の話。世界の端っこでポツンと一人取り残されつつ、自分の記憶と共に生きることで自らを救済し得た主人公だった。
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文字が迫ってくる。次々と畳み掛けるような言葉はパッと映像が浮かぶようだった。
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初めて愛した”男らしい人”と
今愛している”優しい人”との恋愛を淡々と赤裸々に、
恥ずかしげもなく絞りだして遺した
かもめという一人の女性の恋愛小説。
”男らしい人”を一途に愛して、待って、
仕事すらもしないでただ傍にいてほしいと無謀に願うかもめ。
その何年もあとで、
”優しい人”に希望を見出して、絶望を感じて、
一週間の中で生死を繰り返していくかもめ。
情念がすべての恋愛です。
かもめが最後の選ぶ道と
その道の入り口で感じるものとは?
激しい。
虚しい。
その二言に尽きます。
そしてちょっと腹が立ちました。
それぐらい作者の小手毬さんが
「プライドのない全裸の女性」を見事に描きすぎです。
あたし好みのストーリーではありませんでしたが
恋愛エキスを凝縮した物語に浸りたいなら是非どうぞ。 -
07年7月。
支配欲をむき出しに、時に力で組み伏せる「男らしい人」と、家庭をもちながらもひたむきに愛してくれる「優しい人」。
主人公かもめは言う。「私は不完全な死体として生きている。二つの恋を思い返すときだけ、私はつかの間の生者となれた。」と。
何が欲しかったの?
自由でもなく、後悔でもなく。孤独感を逃れるための束縛かい。
第12回島清(シマセ)恋愛文学賞受賞作 。
☆印象に残った文章。
わたしたちはホテルの一室にチェックインした。
「こういうところに来たからといって、何かしなきゃならないってことはないんだよ。服を着たまま、ふたりでこうして横になっているだけでも、僕は安らぐし、あなたがいやなら今夜は何もしないで、しばらくしたら帰ろう」と、優しい人は言った。決して開けられることのない窓のそばに置かれた、よそよそしいベッドの上で。
わたしが恋に落ちたのは、まさにその瞬間だった。
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まさに、若い頃の自分が経験した恋愛。
あの頃の、息ができないような苦しみ、孤独、絶望、苛立ち……
自分で自分をコントロールできないほどの感情が常に自分自身を支配し、天国と地獄を行ったり来たりするような大きすぎる振り幅に心底疲弊しながらも抜け出せなかったかつての大恋愛を、嫌でも思い出す。
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小手鞠さん2冊目。全選考委員が絶賛した島清恋愛文学賞受賞作とのことで胸がキュンとなるような純愛小説かと思ったら全然違いました。
かもめちゃんが19歳の時好きになった「男らしい人」は支配欲が強くて暴力的。任侠映画の子供は見てはいけません!というシーンを見せられてるよう…。そして29歳の時に好きになった不倫相手の「優しい人」は妻とはもう何年もいたしてません…と言いながら妻のお腹に3人目が!!
男性を見る目がないのか?どうしたって相手に問題あるような…。でもかもめちゃの恋は一途過ぎて狂気すら感じられるから普通の恋愛は無理なのかもしてませんね。 -
感想
誰か別の人を見つける。生涯をかけられるような趣味を見つける。今まで好きだった人を忘れる。だけどどこまで行っても逃避行でしかない。 -
好きになった人はぜんぶ覚えてる。