かたみ歌 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 2433
レビュー : 436
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101337715

作品紹介・あらすじ

不思議なことが起きる、東京の下町アカシア商店街。殺人事件が起きたラーメン屋の様子を窺っていた若い男の正体が、古本屋の店主と話すうちに次第に明らかになる「紫陽花のころ」。古本に挟んだ栞にメッセージを託した邦子の恋が、時空を超えた結末を迎える「栞の恋」など、昭和という時代が残した"かたみ"の歌が、慎ましやかな人生を優しく包む。7つの奇蹟を描いた連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 7編の連作短編集。
    心霊現象的なものをからめながら、人間の生き方がちりばめられています。
    特に最後の「枯葉の天使」はこれまでの謎がすべて明らかになります。
    全体の構成がよいので、どんどん引き込まれていきます。
    とても面白い本でした。

  • いやゃぁぁ、それはずるい…

    あちらとこちらの世界の境界線が曖昧な下町の商店街。ノスタルジックでミステリアスで少し怖いような気もするけれど、人と人の想いが交錯するどこまでも暖かくて少し切ない短編集。

    で終わると思ってたのに、ラストのあれはひどい。それはずるい。暖かすぎて切なすぎる。彼はあんなにひどいことをしたのに。


    要は幽霊と呼ばれるものが現れたり超常現象が起きたりするお話ばかりなんだけど、それがなんでもないことのように描かれていて面白いと思った。

  • これ全く期待していなくて、例によって表紙がいいなあと思って買いました。家で読んでいたら何故か嫁が反応しました。この表紙の版画作家さんのファンらしく、コレクションを色々見せてもらいました。なかなか面白い偶然でした。

    さて、表紙から想像するに3丁目の夕日的なものを想像すると思うのですが、実際はホラーだったりするんです。
    昔ながらの商店街で色々な人々が不思議な体験をするのですが、その核になっているのが町の神社ととある古本屋さんで、その不思議な体験は全てが霊体験。連作なのに全部霊体験なんですよ。全然予想していなかったので正直びっくり。
    話し的には切ない話が多いのですが、中にはぞくっと来る話も有って飽きることなく読めます。
    「なんだよほんわかしたかったのに、ケッ!」
    とか思いながら読んでいたらば、どれもこれも懐かしい風景と、胸に迫る情感が素晴らしくて、結局は大感動してしまいました。
    商店街なので、一つ一つの話しがさりげなくリンクしていて、ああ、そういえば昔は誰かが誰かに関わってみんなすこしずつ数珠つなぎだったなあと思いだしました。

    都内ですが僕も商店街の生まれだったので、優しい人々に見守られて大きくなった子供でした。商店街を歩いて買い物するとみんなが声かけてくれて、えらいな!買い物か!とか言っておまけしてくれたりしました。
    虫捕まえて餌が欲しくて果物屋さんの前ででかい声で「腐った果物下さい!」と叫んで「うちには腐った果物なんて無い!!」と怒りながら色の変わったバナナくれたり、畳屋さんで一日畳作るの見ていたり、喫茶店のおねえさんにチーズケーキごちそうして貰ったりと思い出してもみんな優しかった。
    なのでダメ親父は全然家に帰ってきませんでしたが不思議と寂しくなかったです。

    話し逸れましたがこれは心に残る本になりました。

  • 昭和40年代、現世と死後の国とを繋げる道があるというお寺のある、アカシア商店街という如何にも郷愁をそそる町が舞台である。
    3話の『栞の恋』は以前テレビドラマで観たことがある。
    本物のサリーが出演していて、オチが原作とは違った記憶がある。どちらも有りだと思う。
    5話の『ひかり猫』、これは愛猫を失ったからこそ感じる切なさがある。
    『世の中には―寂しい思いをしているものが、たくさんいる。』
    現世で寂しい思いをしていたものは、死後も寂しいのだろうか。いや、思い出してくれる人がいればきっと寂しい思いはしないですむのではないか。
    全篇、生けるものと死者が交差する不思議な話だが、恐怖感とか絶望という負の感情はなく、穏やかに自分の来し方、行く先を想像するゆとりを感じる物語である。
    こんな小説を書く作家に興味がわいた。

  • アカシア商店街の古書店を核にどこか懐かしい不思議な出来事を描く連作短編集。この世とあの世の境界なんて無いのかな。なんとも優しい登場人物だろうか。まるで長岡弘樹や内海隆一郎を彷彿させる作品だ。

    昔はもっと不思議が身の回りに多かったような気がする。最近は現実だけで手一杯。年を取るとは、こういうことなのか。

  • ・短編がストリーリーとして繋がり、その展開がとてもうまいと思った。
    ・ミステリーというよりも、「死」にまつわる哀愁、想いを身近で日常的な生活をモチーフにうまく描いている。ひとつひとつのストーリーの読後に「ホロっ」とくるのは、忘れがちな人と人との繋がりを感じさせるからだろう。
    ・昭和40年代の時代設定も懐かしく、自分自身共感性を得られた。「アカシア商店街」のような、時間がゆったりと流れる商店街も少なくなってきたなぁ・・・

  • 直木賞受賞作家の実力発揮の好著です。
    7つの連作短編集は、個々の作品は独立していながらも最後の作品を読めば全体がつながるという趣向ですが、1960年前後生まれの読者ならさらになつかしさとほろ苦さが倍加されること必定です。
    タイトルの「かたみ」とは形見のようですが、結構悲しい話もありながらも陰鬱に終わらない優しい小説です。
    とはいえできれば、行方不明になった秀則兄ちゃんの元気な姿がこの小説のどこかで登場してくれればという私の願いは欲張りすぎでしょうか?
    涙腺の弱い人には要注意です。

    最後に、小説のPR告知です。
    不思議なことが起きる、東京の下町アカシア商店街。殺人事件が起きたラーメン屋の様子を窺っていた若い男の正体が、古本屋の店主と話すうちに次第に明らかになる「紫陽花のころ」。古本に挟んだ栞にメッセージを託した邦子の恋が、時空を超えた結末を迎える「栞の恋」など、昭和という時代が残した"かたみ"の歌が、慎ましやかな人生を優しく包む。7つの奇蹟を描いた連作短編集。

  • 昭和が色濃く残る東京下町の商店街とその周辺で起きる不思議なできごとを描いた連作短編集。商店街にほど近いお寺のどこかに、あの世と繋がっている場所があるらしい。孤独な死者たちの魂の彷徨『夏の落し文』『栞の恋』は読むほどにせつない。「世の中の悲しいことのすべてを見たようなあんな目が、わずか十歳の少年だった兄になぜできたのだろう」会いたい人に会えない、待ち続ける時の何と長いことか。最後には予想外の展開が待ち受けている。

  • 昭和40年代半ばの東京下町にある「アカシア商店街」で起こる摩訶不思議な物語。
    アーケードのついた長い道に、様々な店がぎっしり連なる昔ながらの商店街の一角にある、ある有名作家似の古本屋の主人を中心に人々と物語は交錯する。

    奇妙な「栞」の文通をしたり、あの世と繋がるお寺があったり、突然懐かしいあの子が「お使い」に来たり……。
    どのエピソードもとても切なく、じわりじわり涙を誘うものばかり。

    時代も変わり、流行る歌が変わっても、人が感じる幸せって昔も今も同じようなものなんだな。
    不思議な懐かしさと、温かな気持ちになる物語。

  • 切ない短編集。幸子書房で繋がっていて、最後に幸子さんの種明かし。ちょっとだけ、幸せになった。

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著者プロフィール

朱川湊人(しゅかわ みなと)
1963年、大阪府生まれの作家。『都市伝説セピア』が直木賞候補。05年『花まんま』で直木賞受賞。ノスタルジックホラーというジャンルを開拓した。小説業のかたわら『ウルトラマンメビウス』の脚本も手がけるなど活動は多岐にわたる。著書に『サクラ秘密基地』『月蝕楽園』『冥の水底』『キミの名前』など多数。
2018年9月、『アンドロメダの猫』を刊行。

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