第二阿房列車 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101356341

感想・レビュー・書評

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  • 阿房列車第二弾。

    相変わらずの用事もない
    のんべんダラリな列車旅ですが
    何だか面白い。

    今回は雪の東北が多めでした。

  •  第一に続いての紀行文。作者の我がままぶりは、一作と同じだが、
    読むにつれて、その我がままにも、一本筋が通っているように感じる。
     人付き合いは、苦手と言っているようだが、どうしてどうして、単に
    メンドクサイぶっているだけ(こんな言葉はないが)、本当は人の大好きな人。

  • 電車に乗っているのが好き。早起きすると機嫌が悪い。8時間睡眠が必要。朝食も昼食も抜きで、晩餐をひたすら楽しみにする。飲んでいれば幸せ。長夜の飲が大好き。どこであれ飲食のための準備は怠らない。百閒先生との共通点を色々見つけるにつれ、この本が愉快でないわけがない、と納得。

  • 旅でない旅だから

    【内容】
    雪の新潟。雪の横手再訪。新しい特急に招待された。雷雨の九州行。旺文社文庫版は付録いろいろ。鉄道唱歌ぜんぶが入ってたり。長部日出雄さんの解説があったり、ヒマラヤ山系・平山三郎さんの解説があったり。百閒マニアでない人には便利かと。

    【感想】
    《今、うつつに見てゐる窓外の山の姿も、さう云へば夢の中の景色の様な気がしない事もない。》(p.59)いつもそうだが、先生の文は、どこか夢の中のように幻想的ではある。ちょっと違う世界にいる人なのだろう。

    読んだのは旺文社文庫版。

    (2012年10月25日読了)

    ★阿房列車に関するてきとーなリスト

    【アイスクリーム】《家にゐるとさう行かないが、旅行に出れば私はアイスクリームばかり食べてゐる。好きなのだらうと思ふけれど、どこがどういいのか、考へて見た事もない。味もよくわからない。》(第二p.102)
    【阿房列車】目的もなく、予定も立てず、ただ汽車に乗って、行って帰ってくるだけの旅が阿房列車。宿の手配など面倒なことは他の人がやってくれるようだ。
    【甘木君】ヒマラヤ山系の知人で、鹿児島阿房列車のとき、広島で案内役になってくれた。几帳面で遠慮深くて髭面らしい。
    【大手饅頭】岡山のお菓子。先生はこれが好きなようだ。《饅頭に圧し潰されそうだが、大手饅頭なら潰されてもいい。》(第二p.91)。ボクも岡山産だが、お土産として唯一認めているのが、これ。
    【諫子さん】長唄のお師匠さん。
    【駅長室】駅に降りるたびに駅長室に行く。そんなに気軽に寄れるものなんやろか。そしてだいたい親切にしてもらえる。いちおう先生は有名人やから?
    【岡山】先生の鄕里。《ちつとも歸つて行かない鄕里ではあるが、鄕里の土はなつかしい。》(p.116)
    【温泉】先生は温泉に入りたくない。みんなが好きやから。でも主義というほどでもないので浅虫温泉で入ることになった。
    【かもめ】新しく編成された特急。京都〜博多間を走る。先生はこれの一番列車に招待された(招待前から乗るつもりだった)。京都から広島までは機関車を替えずに走るそうで、これは性能の限界に挑戦なのだそうだ、
    【京都御所】この当時は予約なしで入れたようだ。
    【銀河】寝台特急。宮城道雄が乗って先生に感想を述べた。後の彼の事故も「銀河」。
    【懸念仏】先生の教え子のようだ。「東北阿房列車」で登場。身体を壊して酒を断っている。
    【蝙蝠傘】えらい先生は蝙蝠傘を忘れて来る。らしい。辰野隆先生が実証した。
    【産業物産館】鹿児島阿房列車の広島でちらっと出てくる。《天辺の円筒の鉄骨が空にささり》・・・今の原爆ドームのことやろう。
    【失敗】酒の失敗というのは他人に迷惑をかけることではなく、次に飲むときイヤな気分になるようなことやそうや。
    【食堂車】ボクは食堂車でものを食したことはないが、先生はつねに入り込む。そしてやはり飲む。居心地いいみたいや。ボクもいつかちゃんと利用したい。
    【高崎山】たかざきやまと読むらしい。このころから猿の名所になったようだ。農産物への猿害を猿観光で取り戻す目論見だったようだ。近辺では毎日のように記事が出るくらい猿に夢中だったとか。
    【はと】大阪まで行くときに乗った長距離列車。C62が引っ張ってた。
    【バナナ】若い娘がしずしずと売りにきて、食べたいのだがガマン。
    【腹が減る】なまじ食べるからそのあと腹が減る。食べなかったら腹は減らない。う〜ん?
    【ヒマラヤ山系】国有鉄道職員。一人旅のイヤな「私」の相棒兼荷物運びに選ばれる。ボロボロのボストンバッグを提げたヒゲの濃い男。「はあ」という返事ばかり。二編目には「ヒマラヤ山」と短くなってることもある。いちおう、先生の昔からの愛読者らしい。日本全国どこにでも知り合いがいる。正体は平山三郎という偉い人らしい。先生はだいたい本名のもじりて書いてるみたい。雨男だと先生は言う。が、もしかしたら先生のほうが雨男なのかも?
    【ボイ】むかしの列車にはボーイがいて、いろいろ尽くしてくれたらしい。先生のワガママにも平気で対応してくれている。サービスいいなあ。
    【明解国語辞典】金田一京助の編んだ辞典で先生はお気に入り。「きんだいち」ではなく「きんたいち」と読むのだと「東北阿房列車」の駅名を見て決めたようだ。ちょうど渋民のあたり。石川啄木と金田一京助は親しかったと思うが、金田一という姓はこの辺に多いのかもしれない。
    【椰子君】編集者。律儀に見送りにきた。先生にとって物騒な行動をとろうとした。
    【八代鴉】があがあ、があがあ、と声柄が悪いらしい。何度も八代に行った先生の顔なじみのようだ。
    【夢袋さん】国有鉄道職員。見送りにきた。先生にとって物騒な行動をとろうとした。
    【私】なかなか身勝手なオモロイ先生。えらそうなのに細かなことを気にしてうだうだ考えている間にものごとは進んでしまう。雷は怖い。

    ★引用

    少し早目に乗り込んでゐて、さうして発車を待つ。なんにもする事はない。その間の時間が実にいい。神聖な空白である。(p.14)

    凡そ長さのある物は、長い程えらい。(p.16)

    肉感の中で一番すがすがしい快感は空腹感である。(p.34)

    預けられない大事な物は、弁当の包と二本の魔法瓶である。(p.35)

    唄や三味線や踊はよく解らないにしても、その芸全体の味と気品は解る。(p.52)

    今のところ私は、差し当たつて他に用事はない。ゆつくりしてゐるから、ゆつくり話す。読者の方が忙しいか、忙しくないか、それは私の知った事ではない。(p.65)

    車内には私に接触し関聯する社会はない。(p.123)

    何を考へるかと云ふに、なんにもする事がないと云ふ事を考へる。さうしてその事の味を味はふ。何もする事がなければ、どうするかと云ふに、どうもしないだけである。(p.123)

    今時分ここへ這入つて飲み食ひしてゐる連中は、皆お行儀の悪い人人だと思ふ。しかし私に限つて、さうではない。(p.124)

    そこへ註文の料理が出た。料理と云ふ程の物ではない。何を食べたか思ひ出せない位である。(p.126)

    小さなテーブルの上の銀器や杯がいやに明るくなつた頃、窓の外はもう暗かった。(p.133)

    所在がないと云ふのが一番難有いのだが、難有いけれど所在がない。(p.170)

  • 2012/3/7

  • 弟子の山系君になって旅のお伴したかった!夜行列車で快適に酒を飲む術を伝授してもらおう。大分の竹田駅の情景描写が印象的。乗り物好きにはたまらないマニアックな視点と、旅好きにたまらない旅情感が同居する紀行文学です。

  • 第一阿房列車を読んだ後、絶対第二も買おう、と意気ごんでいたのですが最寄駅の古本屋に立ち寄ったらなんと百閒先生3冊発見。コレは買わなくては!と買ってまいりました。

    まったくもって面白い旅行記(と言うのか?)です。段々、先生がいらした旅館や宿屋が自分のなじみになってしまったような親近感があって面白い。山系君も良くまあこんな大変な人と付き合って旅行したなあ、と。長時間の列車の旅行。大変だったろうなあ…

    昔、学生時代に青春18切符を買って、千葉から金沢まで行ったり、神戸まで行ったりしたよなあ~。青春18切符は特急に乗れないので良くて快速どまりで色々と駅があるなあ、と感心しつつ乗ったのを覚えております。

    なんとなく旅に出たくなる本です。でも一人旅ではなく、気の置けない(出来れば山系君みたいなよく動いてくれる)友人と電車に揺られてみたいものです。

  • 2009/3/5購入

  • 『第一阿房列車』のほうが面白い。

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