- Amazon.co.jp ・本 (605ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101368771
作品紹介・あらすじ
魔が差したのだ。術後の昂揚した気分によって起きた指導医とのまちがい。それは女医柿沼東子を奈落へと突き落とした。彼女から幸せな結婚生活と最愛の娘を奪いとった。失意の彼女は東京を離れ、伊達湊市の病院での再出発を期す。そこには陸奥という天才的な外科医がいた。彼女は陸奥の元で腎移植の手技を錬磨する。やがて、病気腎臓移植の熟達者となり、斯界に名を馳せていく。順風に見えたその時、腎移植の分野の権威、大倉東夫という東京の医大の教授が立ちふさがった。東子の病院で採用していた病気腎を修復して用いた移植は倫理に反すると指弾される……。マスコミは臓器売買の汚名を東子に着せる。根も葉もない噂が彼女を包み込み、遂に東子は警察で尋問を受けることとなる……。病気腎移植の倫理問題と東日本大震災を背景に運命に翻弄される女医の姿を感動的に描く医療長編。『禁断のスカルペル』改題。
感想・レビュー・書評
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タイトルから想像して、てっきり医療ミステリーと思っていのだが、裏切られた。作品発表時、世間を賑わせた病腎臓移植手術をテーマにしているものの、それはごく一部。基本的には主人公の女医がこれでもかと翻弄されるヒューマンドラマだった。
それにしても主人公の身の回りに起きる出来事がハンパない分量。不倫と離婚にはじまり、母の死、実は生きていた父の登場。不倫相手と離縁した夫と娘も再登場。さらには恋人も作るし、アメリカにも行く。医師としても生体肝移植などの先端医療を学び、医療裁判にも巻き込まれる。そして、とどめは東日本大震災。
これだけの盛りだくさんの内容を破綻することなく、600ページの文庫本でまとめてしまうベテラン作家の力技に感動。その分、各エピソードは薄っぺらくて、ご都合主義が目立つのはしょうがないか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
女医を主人公とした医療小説。病気腎移植、東日本大震災を題材に、次々と訪れる波に翻弄されながらも成長する姿を描く。2021.4.6
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23冊目。2015年「禁断のスカルペル」改題文庫化。
2006年《宇和島徳洲会病院での腎臓移植手術を巡る事件》がモチーフとあって興味。非常に面白かったです。
腎移植を待つ患者は数多いがドナーは中々現われません。一方病気で摘出され捨てられる腎臓は年間2000個余もあり、これを修復して移植してしまおうってのが病気腎移です。
冒頭の主人公の女医東子が上司と不倫をして離婚されるところが長く挫折しかけましたが東北の病院に再就職するところから本来の物語が始まると、俄然面白くなってきます。
最後はやや知りすぼみかな。