インディヴィジュアル・プロジェクション (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 128
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101377216

感想・レビュー・書評

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  • 大江健三郎の初期作品を読んだ時に感じた、高揚感を味わうようで、懐かしい気持ちにさせられた。

    基本的に軽やかなトーンで、手垢にまみれた素材である渋谷を舞台に、スパイ小説的なハードボイルド状況を描いている。ハードボイルド的状況は、終盤になると律儀で健気なブンガク的味付けで撹拌される運びとなるが、なかなか奥ゆかしい。

  • スパイに憧れる中二病の人 みたいな内容に思えるところもあるけど途中から主人公の記憶が錯乱して、現実と区別がつかなくなっていく辺りで広がった風呂敷を見失ってしまった。ヴィンテージブーム全盛期の話だなあと思うとなんだか懐かしい

  • どこまでが現実で妄想なのかよーわからんかった。かといってもう一度読む気はない…

  • いろんな考察があるようだけど、深く考えないタイプなのが幸いしてすんなりと楽しめた。まぁ読書として「それどうなん?」っていわれたら何も言えねえ。うーん北島康介。以上です。

  • 少し気恥ずかしくなるくらい、90年代の渋谷の空気感は良く出ている。虚ろな世代の虚ろな物語なのかな。ラストは俺には少し難しかった。

  • 氏の作品はグランド・フィナーレに続いて2作目。
    どちらの作品にも、意図的な「外し」があるようで、
    それが透けて見えるようで少々興ざめ。
    簡単には楽しませてやらないぞ、みたいな。
    エンタメ作品として読んではいけないんだよなあと思う。
    でも、嫌いじゃないよ。

  • ☆☆☆★

  • カバーの女の子の写真が良かっただけではないかと思われる。

  • わくわくしながら読めた。巻末に東浩紀が書いているが、様々な読み方ができると思う。

  • 日記形式なのが面白いです。 内容は展開の早いやくざ物?ですかね。 さくっと読めます。最後の下り以外はイメージし易いです。 ずっとこう言う路線で書いてくれればいいのにとは思いました。

  • 5/1/10
    いま読んでる
    友達から借りて。ラストのどんでん返しが面白いらしい。映画畑の人なので描写が映画的で面白いらしい。

    5/2/10
    読み終わった
    素直な感想を。人によってはネタバレに感じるかと思いますのでご了承ください。

    初期の段階で誰が誰だったかよく分からなくなる。でもこれは作者一流のぼかしで、最終的に主人公=他の誰か、みたいなことかと予想。何せ友達に、ラストの大どんでん返しが!なんてことを言われたもんだから。こいつか?いやむしろこいつなのか?等等、ワクワクしながら読み進めて行くと、確かに最後に大どんでん返し。自分の予想の完全に別ベクトルからのオチが待っていた。
    しかし自分としてはこのオチは斜め下方向へのベクトルで、それはちょっといただけないと、違和感を感じてしまった。友達に吹き込まれた風呂敷の所為なのか、作者との相性の所為なのか。

    因みにこういうオチの弱い作品を読むときにいつも陥るのが、物語も終盤に近づいてきた時に次のページにこそ大オチが、次のページこそ、次のページこそ、とずっと思ったまま最後の一行を迎えてしまうということ。今回もそうで、今読んでるところってもしかして核心?それとも…??くらいの核心しかなかった…と思った矢先のどんでん返しで、それはちょっと溜飲が下がった。しかしそれも腑に落ちるものではなかったので結局もやもやは収まらなかった。

    ともあれ、本作品の重要な要素である、あの「スパイの二律背反」を考えた時に、主人公=他の誰か、と考えて読むことは全くの徒労ではなく、むしろ的を射た読み方だと実感した。と考えると、読み方としては悔いが残らないのに内容には疑問符をつけざるを得ない本書は、イマイチ、若しくは自分には合わなかった、という感想を持つしかないんだろう。

    特殊訓練の描写や、主人公のスパイ特有の殺伐とした心理は、何だか原田宗典の「平成トム・ソーヤ」を髣髴とさせた。あれの方がわくわくしたな。

    • ここ花さん
      レビューの中で
      「内容には疑問符つけざるを得ない‥
      自分には合わなかった」という言葉、
      とてもよくわかります。
      芥川賞作の『グランド...
      レビューの中で
      「内容には疑問符つけざるを得ない‥
      自分には合わなかった」という言葉、
      とてもよくわかります。
      芥川賞作の『グランド・フィナーレ』を読んだ時も
      完成度の高さは感じるけど、不快さが残ったので‥。

      阿部和重さんは作品を発表するたびに
      様々な賞を受章されますが
      審査員受けする作品と、
      読者が面白いと思う作品が
      異なる作家ですよね‥
      ここ花。
      2010/05/08
    • YMさん
      コメントありがとうございます。
      安部和重さんは初めましてでしたので、そんなに様々な賞を受賞されている方だとは全く知らずに読んでいました。
      そ...
      コメントありがとうございます。
      安部和重さんは初めましてでしたので、そんなに様々な賞を受賞されている方だとは全く知らずに読んでいました。
      そうですね、安部和重さんの、こういうことを書きたいんだという感じがあまり感じられず、残念に思いました。
      グランド・フィナーレも読んでみようと思います。
      2010/05/08
  • 中毒になる不思議な話。

  • 2009年112冊目

  • かっこいいけど、難しい。。

    読み返したくなる感じではないな・・・。

  • 『シンセミア』内に登場し、レポートを書く上で参考になるかと一読。
    『シンセミア』よりは内容的にも読みやすかったのだけれど、日記形式で進んでいくために主人公に違和を感じてしまうとアウトだと思う。結局何が言いたかった作品なのか良く分からない。構成は少し面白かったけれど、レポートを書く上で特に必要でもなかったために多少拍子抜け。
    奥付についてる著者の顔写真の胡散臭さがある意味いちばん面白かった。まだ40歳か…若いなぁ。

  •  「グランド・フィナーレ」で芥川賞を獲った時から、阿部和重は読んでみたかったのだけども、なかなか積読のまま消化できず、先日ようやく1冊読むことができた。作品紹介に「ハードな文体。現代文学の臨界点を越えた長編小説。」とあって、そう言われればそうなのだが、どこか違和感を感じる。一見ハードに見せていて、設定や起きる出来事や事件も確かにハードボイルドなのだが、読んでいるとそこはかとなくどこか軽々しい、実は正常の判断力を持ってすればそれほど大したことではないことを、錯乱状態に陥った視点から表現することで、大げさに誇張するような印象。最後が近づくにつれて、自分の中では夢オチとか「シークレットウインドウ」みたいな錯乱オチが来るんじゃないか、とドキドキしていたのだが予想はある意味では的中した。

     あまり内容について言及するというのは感想を書く上でやってはいけないことなのだろうが、この最後のオチにはどうしても言及せざるを得ないくらいのインパクトがあった。最後まで読み進めてきた読者に「?」を抱かせるに十分なインパクトがある。おそらく、これがあるかないかで、この作品は全く別のものになる。なければ読み進めたまま、合っているにせよ間違っているにせよ意外とすんなりと自分なりの理解ができたのかもしれないが、最後のオチがあることで、読者は今まで自分で形成してきたこの作品の世界観というものをある意味でぶち壊されてしまい、宙ぶらりんの状態になる。ただ、これはいわゆる夢オチのような一般的にタブーといわれる手法とは一線を画している。

     この何ともいえない気持ち悪さ(作品としての読後の気持ち悪さではなく、自分の理解が追い付かないという意味での気持ち悪さ)を抱えたまま、解説を読んでみると、なるほど、と自分の感じている気持ち悪さを少なからず埋めてくれることとなった。解説でもあるように、この作品について書くのは難しい。しかし、最後のオチとスパイが持つべき多様性、自己と他人の関係性、そして日記部分の最後のシーンから読み解くと、案外すんなりと体に染み入ってくるような気がした。小説を読む際に、「この作品ではこのように感じるのが正解」という国語の授業のような読み方をする必要は全くないし、むしろ学校の勉強の慣習からそのように作品を読んでしまうことはある意味悲劇だ。ただ、この作品のように、自分が作品から感じたことを表現するのが難しい小説を読んだ後の気持ち悪さを、解説という他人の手を借りるにせよ、最終的に消化できたと感じられた時には、本はやはり面白いと思わざるを得ないのだ。

  • これがJ文学か、といった感想。村上竜とか山田詠美がこのカテゴリーに属するのかどうかは知らないけど、(消費される文学という意味では、この2人はぴったりだと思うが。)阿部和重の作品を始めて読んだが、とても構成がおもしろい。シチュエーションやデティールというよりは、全体の仕掛けが楽しくて、解説で東さんが書いていたが、読み返すたびに異なる感想を、テーマを発見する気がした。初めて呼んだときのぼくの感想は、主人公は薬物かなんかで、酩酊しながら日記を書いているのだと思っていた。酩酊と覚醒が交互に入れ替わり、リアルとフェイクが溶け合っていくような不思議な世界を日記という、主観的かつある意味で客観的なフィルターを通して描いているように感じた。そこが面白く、最後のMの感想で締めくくられるあたりは、日記というフィルターの上位にMの感想があり、読み手のぼくの混乱を招く。なんか、かなり薄ぼんやりとした印象を持った。でも、そこにはフェイクならフェイクなりの確かな手ごたえを感じる作品でもあった。渋谷という雑多で、何かありそうで、実はハリボテのような街をを舞台にして、アイデンティティーなんて、適当にその辺に落ちているもんで代用しちゃえよ的な偽者を、いかにホンモノっぽく見せるかという時代のアンチテーゼにも思えた。これを書いている時点で既に、こういう読み方も出来るかな?、と思っているので、近いうちに読み返そう。
    071113読了

  • 渋谷・公園通り。風俗最先端の街に通う映写技師オヌマには、5年間にわたるスパイ私塾訓練生の過去があった。一人暮しをつづけるオヌマは、暴力沙汰にかかわるうち、圧縮爆破加工を施されたプルトニウムをめぐるトラブルに巻き込まれていく。ヤクザや旧同志との苛烈な心理戦。映画フィルムに仕掛けられた暗号。騙しあいと錯乱。ハードな文体。現代文学の臨界点を超えた長編小説。

  • う〜〜〜〜、正直期待外れかな。
    男の子が読んだら面白いと思うのかな。
    文体が少々幼稚に思えてイマイチ入り込めなかった。

  • 読み始めは「性と暴力」のにおいがプンプンして「嫌いなタイプの小説だな…嫌だなぁ。と思いながら読み始めたけど、中盤、ミステリー的な要素が出てきてからは先が気になる展開に引き込まれた。結末はグチャグチャしていて期待はずれ。村上龍っぽい雰囲気だと思いました。男性が好きそうなゴリゴリした雰囲気の作家だった。

  • 途中まではすごくよくて、食い入るように読んだのですが、ラスト近くになって、主人公が混乱しだしてから、私も混乱してしまった。

  • オビの狂人日記の煽り文句に納得。<br>
    読んでるこっちも焦ったりハードボイルドな気分になったり混乱したり。<br>
    <a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4101377219/ieiriblog-22" target="_blank">インディヴィジュアル・プロジェクション</a>

  • 阿部和重、「グランド・フィナーレ」で芥川賞受賞した作家である。

    この作品で2冊目の読書だが、特に隙というわけでもないのに買って読んでしまう吸引力みたいなものがある。でもまあ、文庫でしか買わないけど。

    なので、感想もはっきりとしたことが中々いえない。

    まずもって、文学作品ってよくわかんないし(笑)

    ファニーとして読んでいるミステリーやラノベとは、読後に感じるものがやはり違う。

    結局なんだったのか?という思索が、宙ぶらりんと垂れ下がって、時間があったら読み返そうということにして、頭の中の引き出しにしまってそのまま放置…、そんな感じだね。

    最後の章であるところを読んでしまうと、それまでの緊迫した日々の日記は何だったのか?と、急にこれまで読んできた内容を攪拌する。

    こういうオチのある作品は多いのだが、それらと明らかに違うのは決着が全て曖昧であること。

    文学作品って、そういうのが多いので読後が非常に困るんだよね(笑)

    まあ、それがブンガクらしいけど。

    日記形式で書かれた文章は、読み終わってから気付いたけど、このブログという形式を連想させる。

    確かに、人の日記なんか読んだって釈然としないやね。

  • やりたいことはわかるけど、小粒。

  • 阿部和重氏を渋谷系作家として名をはせさせた一作。ポップな僕たち90年代世代の小説。
    ラストの大どんでん返しもなかなかいい。

  • 阿部和重の作品がJ文学と呼ばれていることをこの本の解説を読んで初めてしったのだけれど、確かに的を得ている気がする。物語中に主人公がおかれている状況の深刻さというのがいまいち伝わりきれなかった部分はあるけど、最後の展開は面白い。でもやっぱ『シンセミア』とかと似てるなあ、展開が。

  • ありえないはずの設定なんだけど、小説を読みすすめているうちに自分自身が、その倒錯した世界(と言っていいのかな?)に入り込んでしまうような気がする。これって作者の意図にはまってしまったことなのかしら?

  • こういうの好き。テロルっぽいの。でも「半島を出よ」の方が好き。

  • 内容は知らんが、表紙がエロい。ジャケ買い。

  • 読んだ時はおもしろいと思ったんだけど・・・

著者プロフィール

1968年生まれ。1994年「アメリカの夜」で群像新人賞を受賞しデビュー。1997年の『インディビジュアル・プロジェクション』で注目を集める。2004年、大作『シンセミア』で第15回伊藤整文学賞、第58回毎日出版文化賞、2005年『グランド・フィナーレ』で第132回芥川賞受賞。『シンセミア』を始めとした「神町」を舞台とする諸作品には設定上の繋がりや仕掛けがあり、「神町サーガ」を形成する構想となっている。その他の著書に『ニッポニアニッポン』『プラスティック・ソウル』『ミステリアスセッティング』『ABC 阿部和重初期作品集』など。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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