カンバセイション・ピース (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 60
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  • Amazon.co.jp ・本 (498ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101449241

感想・レビュー・書評

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  • とてもつかみどころのない、ふわふわとしているストーリー。
    でも、とても居心地の良い時間が流れている、そんなお話。
    ぬるいお湯に浸っている、そんな気持ちで読むことのできる作品です。

  •  いま私はこの文章を自宅の古い家(本当に古い。冬はめちゃくちゃ寒い)のかつて店だった場所で書いている。私の本や自転車などを置いているが、もちろん商品はない。 だが、現在いるところが、すべてじゃない。 小説家の「私」は、小学校にあがる前の二年間住んでいたことがある家に妻と猫と暮らすことになる。のちに一階を友人が事務所として借りることになり、離れには大学生の姪が住むことになる。 ここは、叔父叔母が住んでいた家で兄弟同様に育った従兄姉たちとの思い出がいっぱいある。 この古い家でほとんど物語が進んでいく。 熱を出し二階で寝ていて階下から声が聞こえてくる。庭で花木に水をまく。お盆で従兄姉たちが集まりとりとめのない会話をする。横浜球場でベイスターズを応援する。あとは三びきの飼い猫に餌をあげたり遊んだり。 これだけで一冊の本を書き上げてしまう読ませてしまう作者はすごい。 それが「私」の現在の生活だ。しかし、しょっちゅう意識は現在を離れ、過去へと飛ぶ。 4年前に死んでしまった猫のチャーちゃん。子どもの頃登った庭の木。仕事もせずに寝てばかりいた叔父。 今住む家はただの古い家ではなく、かつて住んでいた家で、部屋や庭木一つ一つに想いがある。 いっしょに暮らす三びきの猫もただの三びきの猫ではなく、チャーちゃんが死んでボッコとジョジョの二ひきになったところに新しくミケが加わったのだ(これらの猫の描写がいい)。 つまり、過去というか自分が見てきたもの聞いたものがあったうえで、現在を見ている。 猫は、部屋のあちらこちらの臭いを嗅ぐ。それは、ここに今あるものだけではなく、かつてあったものの臭いを嗅いでいる。 こういう場面がある。お盆で従兄姉たちがかつての実家に集まったとき、人見知りをする猫たちが比較的早く従兄姉たちに馴れる。それは猫たちがこの家に彼ら彼女らが暮らしていたときの臭いを嗅ぎ取っていたからではないかと「私」は感じる。 現在いるところが、すべてじゃない。 ここはかつて、祖父というか、じいちゃんが店番をして、小さい頃の私が本を読んだり遊んだりした場所なのだ。 ここはただ古いだけのかつて店だった場所だけとしてあるのではない。 思い出してしまったよ。

  • 巧みな時間描写と、思考の流れの連綿性がえがかれていて、こういう見方もあったのかとうなずかされる作品。

  • 久々に、ものすごく退屈な本に当たってしまいました。とにかくダラダラとしていて飽きます。

  • 小説家の私が妻、猫三匹と暮らし始めた東京・世田谷にある築五十年の
    一軒家。友人が経営する社員三人の会社が間借りをし、妻の姪も転がり
    込んだ。にぎやかだがゆったりと流れる日常のなか、お盆にやってくる
    陽気なイトコたちの昔話や、同居人たちとの会話から、かつてそこで暮
    らした人々の記憶が立ち上る。濃密な時間が流れ、過去と現在がつなが
    り、生と死がともに息づく長篇小説。

  • 2006/10/3購入
    2012/8/13読了

  • 2006/09 何となく面白い。何の事件も無い何となく進む本。

  • 現時点での『文章』がなし得る領域の最も深い=高いところに位置するのがこの人だと思う。この人の他の本(『残響』)の解説で「ハーモロディック」に触れてるのは嬉しかった。小生も同じ感慨を抱いている。

  • 冗長な文章(生意気ですみません)と猫の話が好きじゃないのに、懲りずに最近読みました。

  • 保坂和志苦手なんだよね。何冊かチャレンジしてみるんだけど、なかなか読みきれない。リズムがちがうのかな。

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著者プロフィール

1956年、山梨県に生まれる。小説家。早稲田大学政経学部卒業。1990年『プレーンソング』でデビュー。1993年『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、1995年『この人の閾(いき)』で芥川賞、1997年『季節の記憶』で平林たい子文学賞、谷崎潤一郎賞、2018年『ハレルヤ』所収の「こことよそ」で川端康成文学賞を受賞。主な著書に、『生きる歓び』『カンバセイション・ピース』『書きあぐねている人のための小説入門』『小説の自由』『小説の誕生』ほか。

「2022年 『DEATHか裸(ら)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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