- Amazon.co.jp ・本 (141ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102023112
作品紹介・あらすじ
自然豊かな島に暮らす女の子は、夢想好きで誰よりも早起き。それで、朝の少女と呼ばれている。夜が大好きな少年は、いつしか暗闇に変身できるようになり、眠る必要がなくなってしまった星の子。対極的な姉弟は、両親の教えや大自然との対話を通して、少しずつ大人になっていく。海や星や太陽に抱かれ、ふたりは幸せだった。運命の日がくるまで-。生命の輝きに満ち溢れた愛の物語。
感想・レビュー・書評
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どこかの島に暮らす幼い姉弟の成長物語。大人になるにつれて忘れてしまう心の柔らかさを思い出させてくれた。波の音、空気の柔らかさを全身で感じながらのんびりと読みたい一冊...
と思いきや、最後の最後で...詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
物語の舞台になっているのは、サン=サルヴァドル島、もしくはそのあたりの小さな島だ。物語の語り手は、朝の光の中で躍動する「朝の少女」と呼ばれる女の子と、満天のあるいは漆黒の闇を限りなく愛する彼女の弟だ。そこでは、彼らの暮らす時間もまた限りなく自由であり、彼らのいた地はいわばエデンの園であった。少女も弟も両親も祖父母も、限りなく無垢であり、そこには悠久の時間が流れていた。あの日が来るまでは。その朝の光景もいつものように輝かしく、朝の少女の心も限りなくピュアに描かれている。終章の不穏な気配、そしてエピローグ。
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「朝の少女」「星の子」などと名前を付けられた子どもたちとその家族の、文字通り自然と一体になった暮らし。非文明社会ではあるが、子どもが大人になる時期の葛藤は私たちが通ってきた道と同じだし、大人の対応には唸らされる。一例を挙げれば、少女が自分を知りたくなった時に、母親は少女と自分の顔を触って比べさせ、父親は瞳の中に映る少女の姿を見せる。五感を最大限に使わせながら、他者との関係の中に自分を見つけさせるのだ。
柔らかな物語をあえて壊すエピローグは強烈だが、物語全体の優しさが心に残るお気に入りの一冊となった。 -
5の自分の顔を知りたい少女にお父さんが瞳に写る彼女を見せてあげるシーンがとりわけ秀逸。
今と違って鏡のない世界で自分を捉えるというのは、こういうことだったのか……。 -
外国児童文学なんて、超ひさしぶり。翻訳は野坂悦子ではなくて灰谷健次郎。140ページの薄い小説。朝型の姉「朝の少女」と夜型の弟「星の子」が、反目しながらも両親と一緒に暮らしていく、なんてことない田舎の島の日常。淡々としてて退屈な印象を受けるが、我慢して最後まで読むと、児童じゃなくても、いろいろと考えさせられる。たしかに一種のサプライズ・エンディングといっていい。裏表紙の紹介文「海や星や太陽に抱かれ、ふたりは幸せだった。運命の日がくるまで──」。予備知識なしに、読めるといい。
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古書店でタイトル買い。
朝を愛し、誰よりも早く目覚めて夜明けの訪れを待つ「朝の少女」、夜の気配に耳を澄ませ、自分の存在すら闇の中に溶けさせてしまう「星の子」。
南国の島に住む二人の姉弟の日々を、一章ごとにそれぞれの視点で描いた作品。
穏やかな朝の陽射し、海辺に光る貝殻、風を受けて椰子の木の葉が擦れ合う音。
みずみずしい文章で語られる彼らの日常は、神秘的で、魅力に溢れている。
両親を始めとする周囲の大人たちも「真っ当な大人」で、彼らとのやりとりに心が温かくなった。
この評では敢えて核心には触れない。私は全く前情報なしに読んでよかったと思った。
興味のある方は何も前情報を入れず、出来れば裏表紙のあらすじも読まずに手にとることをお薦めする。 -
自然の中でのびのびと暮らす家族の優しい交流が描かれた最後、コロンブスを登場させて彼らの生活を破壊する予兆で終わっているのはなんとも苦々しい結末。
素朴な幸せを壊す文明ってなんなのだろう。キリスト教には身勝手さと傲慢さを感じずにはいられない。 -
自然と向き合う中での人間んらいの輝き、成長とは何を考えさせられる。歴史フィクション。
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あの忘れてしまうような一瞬の輝いたとき。自然の中に住んでいた少年と少女がいた。
作者はインデアンの血を引くアメリカの方で、もう亡くなっているが、人類学や先住民研究者だったそうだ。
舞台はアメリカの未開の地。そこで暮らしている少女は早起きが好きなのでモーニング・ガール(朝の少女)と名づけられている。
弟は夜が好きなのでスターボーイ(星の子)という。
朝もやから始まる昼の一日を自然の一部になって楽しむ少女と、夕暮れから海の音を聞いたり体を岩にしたりして遊ぶ少年がいる。
読んでいると、昔気づかないで過ごしてしまった、私の一時期、まだ人になっていなかった優しい頃に戻ることができる。それが僅かな一時期だったり、もう忘れてしまっている、人によっては経験することもなく通り過ぎてしまったそんな時があったのだろかと振り返るような、優しい時間が思い出される話。
少しずつ成長していく子供たちの心の動きもさわやかで、書かれていることは、今では難しい分野に通じるような、言葉にすれば難解なことになりそうな、自然と人のかかわりがやさしく子供向けに書かれている。
名前というものは不思議な、かけがえのない贈り物だ。人が自分につける名前、世の中に向かって示し、すぐに忘れられてしまう名前、いつまでもずっと残る名前もある。その人の歴史や足跡からきた名前、周りの人たちから贈られて受けとる名前もある。
あたし(朝の少女)の弟が、むかしハングリー(腹ぺこ)という名前だったことはだれも忘れないだろう。けれども今日みんなは前とはちがうあの子の言葉に耳をかたむける。星の子も、自分が大きくなっていて、もう子供みたいにはふるまえないことを知るだろう。名前がほんとうに身についたとき、人は名前どおりの人になる。(略)
「もう、いいのよ」
あたしは小声でいった。
「いって」
弟はやっと離れていった。でもそのまえに、あの子はあたしにだけきこえるような声でいった。これから先、あたしたちがふたりだけでいるときに、いつもあたしをそう呼ぶようになる名前を。あのこは小さくこういったのだ。
「ザ・ワン・フー・スタンズ・ビサイズ(いつもそばにいてくれる人)」
と、こんな風に素朴な、そして深い魂の物語が優しく語りかけてきます。
そこへやってくるものがあります。文化に触れた人たち、その将来は難しい問題をはらんでいます。
薄い本ですが詩集を読むような言葉から、自然の声が聞こえてきます。 -
島に暮らす女の子の話。幼い頃、私が知りたかったことはなに? 教えてもらいたかったことは? 優しく語りかけてくれる物語です。
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なんか詩的で夢見な感じだから
読んでられないかな…と思ったけど
ラストの衝撃ってレビューを信じて我慢したら
だんだん心地よく楽しめた。
と思っていたらのエピローグで
愕然とした。 -
確かに人が生きていく上で大切なことが書かれており、子供たちの「成長」ならわかるが、裏表紙の解説にある「大人になっていく」というのは少し違うと思う.エピローグも視点を変えるのは上手いし考えるべき重要な内容であるが衝撃はなかった.
時は流れていく。決して元には戻らない.
*2015.12 -
わたしも。
衝撃的なエピローグは大事かもしれないけど、このお話の良さはエピローグに拠らない。
昔私は朝の少女だった。たのしみがいっぱいで、朝より先に起きていた。 -
う〜わ〜。
コメント難しい。☆評価し難い。
帯〜。安易に感動感動言うなや。
コレ児童文学ですか?ジワジワくる系?
教育ですか?戒めですか?
呪いですね。いえ、祈りでしょう。
哀しいよ。打ちのめされるわ!
灰谷さんの訳 -
ブロともさんの紹介で読みました。
・・・。
本当に衝撃の最後・・・。
衝撃を表現する言葉が見つからない・・・。 -
ラストの衝撃!
まさに、奈落の底に突き落とされた感じ。 -
夢想好きで誰よりも早起きな“朝の少女”。その弟、夜の暗闇に同化し、星を「見下ろす」ことが好きな“星の子”。昼と夜のように対極的で相いれず、けれど誰より寄り添い合う姉弟が、自然豊かな島の小さな社会のなかで両親に見守られながら大人になっていく様子を描く。
既に失われた、これから生まれてくる、今まさに生きている。あらゆるいのちの輝きに満ちた世界では、みんな幸せだった。
そう、あの日海の向こうからやってきた見知らぬ人々に“朝の少女”が最初に出会うまでは――。
エピローグのあとの物語が語られることはないけれど、その必要はなく、おそらく誰もがその後の物語を察することができます。 “朝の少女”や“星の子”の運命も。
美しく幸せに満ちた少年少女の成長の物語であると同時に、流れる時間、運命の残酷さを描く物語。 -
読み始めたら止まらなかった。一気に20分くらいで読んでしまった。朝の少女と星の子。対称的な二人が自然の中で学び大人へ成長していく。平易な文章で綴られているがその実奥が深い。心に投げ掛けてくるものがあった。子ども向けだけど、大人が読んでも感動できる作品。素晴らしい。2011/105
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衝撃のラスト。
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何で読んだんだっけ
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絵本のような描写で進む物語。
お父さん、お母さんも、朝の少女、星の子という四人家族の生活が柔らかく優しい描かれているが、最後の2ページで思わぬ背景が明らかにされる。
内容や文体は児童文学と言えるが、最後の最後で大人こそ読むべき物語だと思い知らされる。幸せとは何か?本来あるべき人間の姿とは何なのか?を問いかけてくる。結末を知ってから、最初に戻って読み直すと印象の変わるお話。
文庫版は挿絵も鮮やかで、オチも含めて何度も読み直したくなる -
アメリカインディアンの血を継ぐ先住民族研究家のマイケル・ドリスが描く、文明を持たず大自然で生きる家族の物語。
早起きが好きな朝の少女と夜更かしが好きな弟の星の少年が成長とともに愛のなかで学ぶ出来事は、今の日本ではたどり着くことさえ難しいと思うほど眩しく豊かな輝きの中にある。
最後の一文で、現代人の愚かな過ちのすべてを叩きつけられるような衝撃。
中古でしか買えないなんて信じがたい良書です。ぜひ再版してほしい。 -
今年読んだ本の中では暫定1位でおもしろかった。
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朝の少女は私だ。そう思って読み始めた。あまりにも現代社会を生き過ぎている私には、嵐の夜が来るまで、この物語のシチュエーションが全くわからなかった。
こんな風に、自然の中で、着飾らなくとも、現代人と同じように、人はみんなおなじなんだ。
この物語は、こころの中の目で、好きなように読めばいい、最期には納得できるもの。 -
作者の等身大の言葉で、深い自然観、人間観が語られているのがすごく好き。朝の少女、星の子が、それぞれに自分の好きな生きる時間を持っている事も。自分だけの時間。自分と世界が、一対一になる時間。こういう時間の感覚は大事だと思う。灰谷さんの訳も素晴らしいです!
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灰谷健次郎さん和訳ということで読んでみました
最後が衝撃的。。
そういう展開かいっ
私たちの生活は文明によって支えられているけれど...
それと引き換えに、大切なものを沢山失っているような気がする。
いや、本当は目の前にあるはずなのに、気付いていないだけなのかもしれない。
自然を愛する"朝の少女"と"星の子"。
家族の愛情や、豊かな自然に包まれながら暮らす彼女たちが本当に羨ましい
人間って、憐れだなぁ
短編なので、すぐに読めちゃいます
水彩の挿絵も、とっても素敵です -
さわやかな朝の風を感じら、途中まではすごく素朴な気分で読めますが
急激にやってくるラストがあまりにも悲しく、
しばらく考えさせられるお話です。