欲望という名の電車 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102109069

作品紹介・あらすじ

「『欲望』という名の電車に乗って」ブランチが降り立ったのは、ニューオリアンズの下町フレンチ・クォーター。南部の大農園の娘から身を持ちくずし、妹ステラのアパートに身を寄せた。傷心のまま過去の夢に生きる彼女を迎えたのはしかし、ステラの夫スタンリーらの、粗暴なまでの"新しいアメリカ"の生だった-。1947年初演、ピューリッツァー賞受賞の、近代演劇史上不朽の名作。

感想・レビュー・書評

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  • 出掛けた先で時間ができたので、図書館でボリュームの少ない名作を…と手に取りました。没落地主の娘(元教師)と、労働者階級の荒くれ男(妹のパートナー)との軋轢を描いています。シナリオ形式なので、脳内シアターを上演する感じでしょうか。ブランチ:吉瀬美智子、ステラ:北乃きい、スタンリー:内野聖陽、ミッチ:鈴木亮平… だといいなぁ。
    近代演劇史上、とてもとても大切な作品のようなので、私の脳内シアターがどこかの誰かに嫌な思いをさせることがあったらごめんなさい。

  • ピュ-リツァ賞を受賞した戯曲。ニュ-オリンズの欲望通り(Desire Street)を走る路面電車の名をタイトルにすえ、欲望に生きる人間の持って生まれた悲しい性の有様を、緊迫感に溢れた筆力で綴られた名編。・・・エリア・カザン監督で映画化され、ヴィヴィアン・リ-の気迫の演技に圧倒された。

  •  アメリカの戯曲だった。

     私は、自分の都合のいいように人を騙して生きるブランチがいやだと思ったと同時に、そうしてまで誰かに肯定されていないと生きられないほど弱い人なんだと思った。その中で堂々と真実を突きつけるスタンリーは正しいと思ったし、でも最後にブランチと寝たのはスタンリーの弱さだと思った。またステラはブランチの弱さを理解した上で受け入れ、大切にしているんだと思った。

     難しくて本質を理解できているのかはわからないが、「私はいつも見ず知らずの方のご親切にすがって生きてきましたの」というブランチの言葉が全てだと思った。そらは悪いわけでもなく、でもそれにすがって生き続けることは違う。はっきり何が正しいとかではなくて、人とはそういうものなんだと思った。私はその中で助けられるだけでなく、誰かにとって助けになるような人に成長したい。

  • 現実に対して無力でしか存在しえない人間もいるのかなと、ただただ脱力させられる。
    後半のスタンリーがブランチを襲うシーンはスタンリーでなくブランチの欲望として描かれてるのかなと。
    スタンリー個人に対する云々ではなく
    ブランチはとにかく欲望の対象とされることでしか自分の存在を認識できず、また欲望することでしか相手や生活、対象を認識できない。
    何かを受け入れ落ち着くことができるステラと、自分の妄想以外の何も自分に許すことのできないブランチ。

    • 円軌道の外さん

      680104さん、はじめまして!
      関西出身で東京在住、
      読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
      遅くなりましたが...

      680104さん、はじめまして!
      関西出身で東京在住、
      読書は勿論、映画と音楽と猫には目がないプロボクサーです。
      遅くなりましたがフォローありがとうございました(^o^)

      これ、原作は未読なんですが、
      高校時代に映画を観てかなり衝撃を受けました。
      あの『風とともに去りぬ』のヴィヴィアン・リーが精神を崩壊していく主人公を演じていて、
      アカデミー主演女優賞を穫ったのも納得の怪演だったし、
      主人公の妹の暴力的な夫を
      野性的に演じたマーロン・ブランドが最高にカッコ良かったのを覚えています。

      またオススメありましたら
      教えていただけると嬉しいです。

      ではでは、これからも末永くよろしくお願いします!

      あっ、コメントや花丸ポチいただければ
      必ずお返しに伺いますので
      こちらにもまた気軽に遊びに来てくださいね。
      (お返事は仕事の都合によってかなり遅くなったりもしますが、そこは御了承願います…汗)

      ではでは~(^^)



      2015/05/31
  • 欲望という名の電車から降りたったのは、恐ろしい程美化された自意識に固執する、孤独な女の狂気だった。過去との決別が、または過去としての線引が逆に、過去に子供のように追いすがって己の甘えを正当化しているかのように見える。
    現在を飾り立て、虚栄心の毛で覆われた偽物の毛皮をステイタスにしなくてはならない彼女の哀切さがまた、滑稽である。

    題名と過剰な会話がとても好き。
    煙草の灰で焦がしたかのような表紙のチープさも、とてもよく合ってると思った。

  • アメリカ南部、ニューオリンズの街、ダウンタウン。「極楽」という名の街路(paradise か?)。うらぶれた路地にあるアパートメント。そこが舞台。食堂と寝室の二間だけの間借り。
    時代は、第二次大戦直後らしい(ちなみに本書刊行は1947年)。
    ステラとスタンリーの若い夫婦のもとに、ステラの姉ブランチがやってくる。ブランチは、スタンリーと彼の友人、ポーカーに集う労働者の男たちを下品だと見下す。そしてブランチは、自分は上流の女性なのだと「お高くとまる」。

    音の演出が興味深い。ブランチの気持ちを枠づけるように、遠景の音と近景の音が、ONに立ち上がったりOFFに遠ざかったりする。このへんの演出は、実際の舞台で味わいたい感じである。

    ところで「欲望という名の電車」という表題について。
    これは、作者テネシー・ウィリアムズが暮らしていたニューオリンズの街のある通りに、かつて「欲望」と「墓場」と書かれた2系統の電車が走っていたことに由来するという。
    …いったいどういう電車だ?!と、そこに興味津々。
    まさか、実際にそういう路線名とも思えず。
    「欲望」や「墓場」と落書きされた電車だったのかな…。


    <以下、おおいにネタばれ>*****

    ブランチは、ダラスの石油王の男性と知り合いで、いつか彼からお呼びがかかるはず、と語る。
    だが、やがて、ブランチは前の街で男漁りを重ねていた落ちぶれた女であることが明らかになる。
    ブランチは心に傷を負っていた。そして、どうしようもない現実を直視せず、眼前に夢のみを見つめている。
    ブランチの姿はなんとも痛々しい。スタンリーは、そんな彼女の心の傷に塩を塗り込むごとく、追い詰める。
    そして終章、ブランチは、精神病院の看護師に迎えられ去ってゆく。
    そんな、なんともやりきれないストーリー。
    戯曲なので210頁少々のライトな分量でさらりと読み終えたので、重いどんより感の深手を負わずに済んだけれど。

  • これは実際に舞台で俳優さんたちの呼吸や表情を見て味わったほうがよさそうな感じ。テネシー・ウィリアムズの女性の描き方は、彼がゲイだったこともあるのか、男性目線というより周縁化された同じ人間としてのまなざしが感じられるのが良くて、だから暗い話でもじわっと心が慰められるのだろう。彼自身の人生についてもくわしく知りたくなる。
    あと、諸々の設定に、これブルー・ジャスミン?と思ったけど、ちょこっと検索したらば、それは誰もが思うことのようだ。

  • なんかもうちょっとこう段々崩れていく話なのかと思ったら、割と冒頭から崩壊しかかっててそのまま進行していっちゃうというなんだかなあ。それぞリアルなのか。

  •  ナショナルシアターライヴでお芝居を見て読みなおした。映画にも何度も(?)なったし、舞台でも、翻訳で取り上げられているらしい。初めて見た英語の舞台は素晴らしかった。感想はこちら。
    https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/201904060002/

  • 劇の台本はあまり読まないし舞台は見に行ったことがないが、文庫化されたものを読むと当たりが多い気がする。
    これも面白かった。
    普通の小説とは違った面白みがある。

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著者プロフィール

1911-1983。アメリカ合衆国ミシシッピ州生まれの劇作家。約60の戯曲と2冊の詩集を出版している。1944年に『ガラスの動物園』がブロードウェイで大成功を収め、1948年には『欲望という名の電車』で、1955年には『熱いトタン屋根の猫』でピューリツァー賞を受賞している。

「2019年 『西洋能 男が死ぬ日 他2篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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