小鳥たち (新潮文庫 ニ 3-1)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102159217

作品紹介・あらすじ

妻の反対を押し切って引っ越した屋根裏部屋から近くの学校の女学生の姿を楽しんでいた画家は、やが小鳥を飼い始めた。それを口実に少女たちを部屋に誘うが、自分のものを見せたい衝動を抑えられない-表題作ほか全13編収録。ヘンリー・ミラーとの奔放な愛に生きた美貌の女性作家ニンが、一人の老人コレクターの楽しみのために匿名で書いた、繊細で脆く、強烈で妖しいエロチカ。

感想・レビュー・書評

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  • アナイス・ニンは初読。本書はエロティックな13の短篇を集めたもの。本書は老人コレクターの楽しみのために匿名で書かれたものであるらしい。だとする、男性の読者を想定していたことになるが、視点はやはりあくまでも女性作家のものだ。おそらくはエロティシズムの位相が違うのだろう。読者の想像力にエロティシズムを喚起するという点では、バタイユやレアージュには遠く及ばない。もっとも、女性の読者からすれば、そうした点での評価あるいは変わるのだろうか。また、物語のいずれもが幾分表層的であり、背後に観念の深みのないのが残念だ。

  • 滲み出るエロス。
    短編であるところがまた味をだす。

    著者の生き方がまるまる表出しているように思う。
    しかしそれは「エロス」だけのことではない。その「哀しみ」が同様に溢れ出ている部分を読み手としては察知するべきだろう。その両方を感じることができてはじめて彼女の描く「エロス」の物語に到達できるのだから。

    残念なのは解説。
    ニンの作品に対する思いと繊細さに比べ、日本女性作家の解説が妙に軽くて情けなくなった。堪能するのは訳者の解説のみまででよい。

  • エロスに哀しみが付き纏っていました。滑稽さもあるけれどそれより哀しみや寂しさが強いです。表題作はどうかしていたけれどその他は好きな空気です。
    「お金のために」書いたと明記されてましたが、女性の観点や置かれた立場がはっきりわかるこのお話たちに遣る瀬無い気持ちになります。娼婦や絵画モデルでなくてもなんだか。。
    「話の途中過ぎる…」と思った「シロッコ」や、「マハ」「モデル」が良かったです。女性も振り回されてるけど男性も振り回されるんだな、性愛に。性(さが)です。
    矢川澄子さんの訳書を読むのは2度目だと思うけど好み。矢川さん自身の作品も読もう。

  • 2006-03-00

  • 4〜5

  • 13編からなるアナイス・ニンの官能短編集。まるで「千夜一夜物語」のようなエロ満載でした。ただエロッテイックな表現を期待していたので、直接的な表現だったため、ちょっと肩透かしを食らった気分。気に入った作品は「サフラン」で、導入部が少女向けライトノベルを彷彿させられた。

  • 【本の内容】
    妻の反対を押し切って引っ越した屋根裏部屋から近くの学校の女学生の姿を楽しんでいた画家は、やが小鳥を飼い始めた。

    それを口実に少女たちを部屋に誘うが、自分のものを見せたい衝動を抑えられない―表題作ほか全13編収録。

    ヘンリー・ミラーとの奔放な愛に生きた美貌の女性作家ニンが、一人の老人コレクターの楽しみのために匿名で書いた、繊細で脆く、強烈で妖しいエロチカ。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    女流作家が生活のために書いたエロティカ。読んで驚いたのは、恋愛の過程や、SMなどの趣向が排除され、肉体、とくに性器の直接的な描写に重きがおかれていることだ。

    直接的な描写はエロスを通り越して無機的になりそうなものなのに、原作の筆力に加えて翻訳が素晴らしいのだろう、ただ性器を描写しただけの文がとても官能的だ。

    日本の官能小説にありがちなねっとりした性ではなく、あかるく牧歌的なのになまめかしい、という不思議なエロスをかもし出している。

    心理描写もさらりと書かれることで、熱情だけが強調されている。

    愛や恋の縛りがなく、ただ無邪気に交わって身をゆだねる様子が、どこか可愛らしいような、それでいて色っぽいような奇妙な感じ。

    何も考えずに文章に酔う、という体験ができる一冊だと思う。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 官能小説といえどアナイス・ニンと矢川澄子の手にかかれば絹糸のように繊細で上質な性愛文学に。サラ・ムーンの写真のような妖しい幻想感。映画「ビリティス」も想起した。性を秘めた女性の美しいこと。うっとり。

  • 先日発掘された未読本を消化。買った経緯は三浦しをんさんの紹介だと思われる。「フランス映画の原作本です」って顔をしてレジの書店員に堂々と出せるエロ本として解説されていた。けっこう実用的だとか(笑)。詩人の著者が大金持ちのご老人に依頼されて生活のために書いた官能小説集らしいが、何というか、どれもアブノーマルであまりエロチシズムは感じられなかった。宮木あや子の『花宵道中』の方が実用的だと思う。

  • つつましやかなお話たち。

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著者プロフィール

アナイス・ニン(Anaїs Nin)
1903年、フランスはヌイイ・シュル・セーヌで生まれ、1977年、闘病の末、癌でロサンゼルスにて生涯を終える。11歳の年に母親と弟たちとともにアメリカに移住した。1930年代初頭に夫の転勤に伴いパリに居住し、作家活動を始める。40年から50年代のアメリカにて小説を発表し続け、60年代半ばに日記の出版で名声を得る。74年にダートマス大学より名誉博士号を授与される。日本へは小説『愛の家のスパイ』が河出朋久によって紹介され、66年来日に際し大江健三郎、江藤淳らとの会談が『文藝』に記録されている。89年に実弟ホアキン・ニン・クルメル、カリフォルニア州立大学バークレー校音楽学部名誉教授は来日して、関西の大学での講演やピアノ演奏会を果たす。

「2023年 『四分室のある心臓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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