ハンニバル(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (466ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102167045

感想・レビュー・書評

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  • この物語の最初にクラリスは「理解と共感は違う。その違いを知ることが大人になるということだ。」と言っていたけれど、前作の若い頃からクラリスはレクター博士を「理解」できていて、それが今作の最後では「共感」もできてしまったということなのかな。

    クラリスにとっては父親、レクター博士にとっては妹という心の大きな空洞があって、陰と陽が見事に噛み合ってしまった。もともと最初から自分たちは同族といった「理解」はあっただろうし、才色兼備な女性にありがちなクラリスの表層的な社会的鎧をレクター博士が薬と時間で溶かしてしまって、こういうラストになったのでしょう。

    共通の敵となって殺されたサディストが、食肉加工会社の経営者というところからもクラリスは屠殺される側の恐怖から精神的に救われて、「羊たちの沈黙」は見事に伏線を回収したように思いました。
    だから、この物語は『羊たちの沈黙』を読んでから読もう!

  • 作風が変わったのかな、と読み始め、しかし一気に読了のおもしろさ。おもしろさ?麻薬の中毒ににているかも。毒されながらもやめられないという。

    第一章の「ワシントンDC」なじみ(主人公たち)のゆくえが興深く、活劇のスピードを読み終わると、第二章「フィレンツェ」

    実際フィレンツェに観光で行ってるものだから、なんとも魅力的な章。ヴェッキオ宮殿!思い出した、思い出したドゥオーモ、ウッフィーツィ美術館、そしてアルノ川。しばし自分の追憶に浸ってしまう。

    トマス・ハリスのうまい作家技。それだけでなく描かれているのは、悪業を追う女性捜査官に降りかかる同職たちの出世、野心、エゴの波。正義に立ちはだかる不条理も味わってしまう、共鳴をよぶ。

    もちろんストーリーの展開にもあっと驚いた。

    だんだん気持ち悪くなってくる描写もあるにはあるが、そこはそれ麻薬的の魅力があるんだね。ちょっと恐い。

    続く『ハンニバル・ライジング』は評判よくないようだけれど、『レッド・ドラゴン』『羊たちの沈黙』『ハンニバル』と各独立の一書と思えば興味わく。

  • 終盤に近づくにすれ、どうなるのかとハラハラして読んでいました。
    しかし、クラリスの最期が意味不明。がっくりしました。
    操られたのか、薬漬けにされたのか、よく分からない最期でした。

  • 原題 HANNIBAL

    7年の時を経て(作中で)再び回り出す歯車。

    レクターとスターリングは、たぶん二つの隣り合うパズルのピース。認識してるかしてないかの違いはあるけども…というのが最後の第六章「長いスプーン」を読んだ(ショックから立ち直った)後の、行き着いた感想。
    レクターもスターリングも、なぜそうなった?ではなく、もともとそういう〝存在〟だったと考えれば腑に落ちる…かな。

    それにしてもここで長いスプーンとは…天国と地獄、どっちだろ。

    なぜハンニバルという名前にしたかも気になって調べてみた。バアル(嵐と慈雨の神)の恵み、という意味があるみたい。悪(嵐)と善(慈雨)の恵み、としてみると、二人を象徴してるようで面白い、かな?

  • 再読。映画のラストシーンも記憶に鮮明に残っているのにハラハラドキドキ。もう読みたくないほど気持ち悪い場面も多いのに読む手を止められない。おそらくレクター博士のイタリアでの生活や山の中での生活様式が優雅で穏やかだからなのかなぁと。悪人というのは本当に魅力的で、だからこそ本当に危険。またどこかで読み直すであろう作品。

  • 感想は上巻に

  • クレンドラーの脳を食べる(食べさせる)シーンはゾッとした。
    上流の暮らしを描くシーンにはうっとりさせられた。
    しかし結末がふに落ちない。薬の影響なのか?あと、クラリスの「ヘルメットのような髪型」はどんなものなのだろうか…笑

  • 映画とは少し、いやまったく違う。

  • わぁーっ!クラリスぅ〜!!!

  • クラリス…、そのラストはないだろう。
    こうなったら、もう一度グレアムに出張ってもらうしかないんじゃないの。

  • 連続殺人犯バッファロー・ビルの逮捕から十年後。FBI特別捜査官クラリス・スターリングは部下と共に麻薬組織との銃撃戦のなか、赤ん坊を抱いた組織の女ボスを射殺した。この事件でマスコミに叩かれ、上官ポール・クレンドラーの嫉妬と執着も加わり、FBI内部で窮地に陥る。
    傷心のクラリスの元に、ハンニバル・レクター博士から慰めの手紙が届いた。イタリアのフィレンツェが博士の居所と知り、逮捕に備えて密かに調査を始める。
    一方、レクター博士に恨みを抱く大富豪メイスン・ヴァージャーは、高額の懸賞金をかけて復讐を企てていた。
    フィレンツェ警察のパッツィ刑事は、ひょんなことからレクター博士を発見し懸賞金に加えて手柄を立てようと試みるが、逆に博士に見破られ非業の死を遂げる。
    イタリアから逃亡した博士とクラリスが必ず接触するであろうというメイスンの予想は的中し、博士を拉致する。捕らえられ拷問を受ける博士は痛みを堪えるべく色鮮やかな記憶の回廊に逃避する。そこへ博士を救出・逮捕すべく現れたクラリス。彼女の奮戦によって博士は窮地を脱するが、クラリスは怪我を負い博士の治療を受ける。
    博士を殺害し損ねたメイスンは、博士によって心の枷を解かれた妹によって、性的虐待を受けた恨みで殺される。
    メイスンと通じ、クラリスを窮地に追い込んだクレンドラーは博士の手に落ち、クラリスと博士と会話しながら、自身の脳を二人に食べられて知能が低下していく、という罰を受けて殺される。
    クラリスは博士に治療を受ける中で、父の死という心の傷を博士によって癒され、博士も幼少時に失った妹の存在をクラリスに重ねることにより、彼の心の傷も癒された。クラリスは博士から二度と解けることのない暗示をかけられ、そのまま2人で暮らし始めるのだった。
    [隠す]

  • クラリスとレクター博士の関係性の終着点。メイスンの最期はショッキングなかたちだったけど、これがカルマなのか。決してハッピーエンドではない。

  • これは知識人じゃないと世界観が楽しめない。教養がないと細部まで穿つことができない。表層だけ滑ってしまうと、ただの人喰い博士のグロ話。そんなB級作品としてしか読めなかったのは、はい、私です。

  • アメリカに帰還したレクター博士をおびき出すためにクラリスをおとりにした作戦を始める。
    レクター博士は、賢くて一般常識あるため、通常に生活するのであれば、犯人だとわからない。
    ラストは(薬の影響か?)クラリスがレクタ-博士と一緒になる結末だが、ハッキリしない。
    次回を見据えているのか。

  • クラリスが地道な捜査でレクター博士を追うが、メイスンが横槍を入れて、レクター博士を拉致する。クラリスの突入により、レクター博士は難を逃れ、麻痺したクラリスを催眠療法でいじりつつ、人肉ディナーを行う。ラストは、オペラ観劇をする、レクター博士とクラリスで締め。
    メイスンがレクター博士を豚に食べさせようとするくだりは、どこまで本気なんだかと思うが、その後の展開から人肉ディナーのくだりは、ゾッとして良い。

  • 2015.8.24

  • 終わりは映画の方が好き。

  • 2015/2/22

  • 第三部 新世界へ

    第四部 恐怖のカレンダーの注目すべき出来事

     レクター博士はホーキングの業績を高く評価しており、数学の専門誌に発表される彼の論文を可能な限り綿密に読んできた。この宇宙はいずれ拡大を止めて再び縮小に転じ、エントロピーも逆転するかもしれない―ホーキングがかつてそう信じていた時期があったことをレクターは知っている。しかし、ホーキングはのちに、その説は間違っていた、と公言したのだ。

    第五部 肉、一ポンド

    「いいか、博士、約二十分後に、われわれは今夜のディナーの最初のコースを豚どもに振る舞う予定だ。それはお前の両足なんだがね。それがすんだら、おまえとおれで、ちょっとしたパジャマ・パーティーをやる。そのときにはおまえの背もかなり低くなってるだろうから、子供用のパジャマで間に合うだろう。コーデルがおまえにちゃんと生かしつづけてくれるはずだから、心配無用だ―」

    第六部 長いスプーン

    「いいかね、クラリス、お父さんはきみの幸福と安寧のみを願っていたんだよ」

    「きみのお父さんはすでに亡くなっているな、クラリス。それは、だれよりもよく、きみが承知しているはずだ」
    「ええ」
    「さあ、入って、お父さんに会いたまえ」
     ツイン・ベッドには、クラリスの父の骨が並べられていた。肋骨に長い骨が組み合わされ、それがシーツで覆われていた。白い布に覆われた遺骨は、雲の上に子供が仰臥してつくった天使の押し型のように、浅い輪郭を描いていた。

    感謝の言葉
     ニッコロ・カッポーニは、フィレンツェとその芸術に関する深い知識を私に分け与えてくればかりか、彼の私邸であるカッポーニ宮をレクター博士が使用するのを許してくれた。

  • レクターがメイスン一味に捕まり、その危機を脱する巻。
    しかし、上巻から出て来ている人を喰う「豚」ってどういう豚なんだろう。
    イノシシみたいなものなんでしょうか?

    映画は最後の脳みそ食べるシーンしか覚えてないんだけど、終わり方が全然映画と違って驚きました。
    確か映画は、飛行機に乗ったレクターが、クレンドラーの内臓を隣の席の子供に食べさせる場面で終わっていたような気がします。

    原作を読んで思ったのは、レクターがこんなにクラリスに執着していて、妹のことを反芻していたのだということ。
    映画の「ハンニバル」でミーシャについての描写があったのかは覚えていないけど、レクターがこんなにミーシャへの気持ちを持ち続けているのだということにすごく切なくなりました。

    やはりレクター大好きです。
    クレンドラーが最後に食べられて本当にすっきりした!

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著者プロフィール

ウィリアム・トマス・ハリス三世(William Thomas Harris III)
1940年テネシー州ジャクソン生まれ、テキサス州ウェイコのベイラー大学(Baylor University)卒業。地方紙記者を経てAP通信社でレポーター兼編集者に。この期間中の知見が小説の機縁となる。
著作は現在5作。映画化もされた『ブラック・サンデー』をはじめ、「ハンニバル・レクター」シリーズの『レッド・ドラゴン』、ブラム・ストーカー賞を獲得した『羊たちの沈黙』に、『ハンニバル』、『ハンニバル・ライジング』。

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