苦役列車

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 590
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  • Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103032328

感想・レビュー・書評

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  • 今年も目標クリアの120冊目
    →目標を130冊に変更
    読みやすいが、芥川賞としては駄作

  • 十九歳の北町貫多は人足として働いたり働かなかったりする中卒の青年。その日暮らしの彼にはお金も友達も彼女もいない。有り余る性欲は自分で処理したり、そういったお店でサービスを受けるが、ちらつくのは父親が性犯罪で捕まったという暗い過去。
    友達も彼女も欲しいし、まっとうに生きたいようにも見えるが、彼は何も行動できない。彼にあるのは劣等感、嫉妬心、大きすぎる自意識。やっとできた同い年の友達さえも彼の前から去っていく。

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    『苦役列車』
    救いようがない青年の話だった。これが私小説の世界なのか。暗すぎるような気もするし、最初から最後までずっとじっとりとした劣等感と自意識を感じながら読んだ。
    ”僕なんかどうせ犯罪者の息子だ”という感じを出し続けるくせに、難しい言葉を多用する青年。まさにコンプレックスの塊。こじらせすぎている。たとえばテレビドラマの世界であれば物語が好転していくような場面(フォークリフトの免許を取って倉庫番に格上げしてもらえそうなシーン)でも、彼はポジティブな行動を一切しない。自分から努力しない。人を妬んでばかり。spのくせ、ずっと他人からもらえる何かを期待しているような十九歳の青年、北町貫多。彼に感情移入しないわけにはいかなかった。

    『落ちぶれて袖に涙のふりかかる』
    おじさんになった北町貫多は作家としてある程度は成功しているみたいだった。人間性に問題があるのはそのままだったけど。

    北町貫多シリーズもっと読みたい。

  • 芥川賞受賞作品だけれども、西村賢太の小説でこれが特に優れているとは思わない。
    いつもの西村賢太の私小説だ。

    西村賢太の小説はどれを読んでも同じと言えば同じなのだけれど、不思議と他の作品も読みたくなる。

    くさいものをくさいと分かっていながら、何度も嗅いでしまうかのように。
    クサヤはくさいほど旨いということだろうか。

  • 芥川賞作品なので読んでみた。表題の「苦役列車」は様々な書評の通り、日雇い労働者のその日暮らしを描いた重苦しい作品。救いもなく、共感もできず、読んでいて苦役だった(まあそれば狙いでもあるのだろうけど)。一緒に掲載されている「落ちぶれて袖に涙をふりかかる」の方がユーモアもあり、共感できた。「苦役列車」と「落ちぶれて袖に涙をふりかかる」を合わせて考えるとなかなか良い。

  • 芥川賞受賞作品とはこういう作品なのかということがよくわかる作品

  • 中卒で一人暮らし、その日の稼ぎを得るために荷役作業に出かける。全然先の見えない人生の青春を切り取った小説。
    文章は読みにくいが、この先、彼はどうなるのと物語終了後が気になった。もう一つの短編では40代になった主人公の数日を描いている。引き続き、彼がどうなるか気になりつつ本を読み終えた。

  •  映画がとても面白かったのだが、作者ご本人は気に入っていなかったのを何かで読んだ。小説の方は映画とはやはりテイストがずいぶん違っていて、こっちはこっちでとても面白かった。内面を克明に記述して、その内容が正直なのかな、あまりにひどくて面白い。もう一本の短編も小説の賞がほしくてほしくてしょうがない感じがとても面白かった。他の作品も読んでみよう。

  • 漫画「デトロイト・メタル・シティ」に通ずるものを感じた。リア充爆発しろ的な。
    主人公はロクデナシだけど嫌いになれず。かといって好きにもなれず。
    読後は薄ら寒い寂寥感、諦念、虚しさが残りつつもどこかサッパリとしており不思議な感じ。

  • 主人公は日雇いの労働で煙草と食事と酒と女を刹那的に得ている。そんな主人公の心を記した小説。短編ではあるが、男の苦悩が実に良く表されている。私小説なので著者の体験が生かされているのであろうが、それが的確に文章として表現されている。芥川賞の選評には「読者を辟易とさせることに成功している」なんて書いた者もいたが、全く辟易となぞしなかった。同じく選評で村上龍は「高い技術で書かれており洗練されている、質の高い作品」と書いており、私にとっても共感のほうがむしろ多い。こちらはかろうじて女性にも勧められるかも。

  • 2010年芥川賞受賞作「苦役列車」と、同じ主人公のその後を描いた短編「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」がおさめられている本作。北町貫多=西村賢太ということでよろしいでしょうか。平成の私小説作家、だそうで。
    近代文学愛好者らしく、現代作家とは思えない古めかしい日本語。その行間から血と汗とヤニとそのほかなにやらわからない不潔なものが滲み出てきているような錯覚に陥る、労働者の物語。「苦役列車」の方は、ひたすらに暗く淀んだワーキング・クラスの情景が描かれていて、明るい要素はほとんどないけれども、「落ちぶれて〜」の方は何はともあれ小説家としてデビュー出来てからのお話なので心の余裕というか滑稽味が強く、読んでいてとても楽しかった。
    西村賢太は中卒だそうで、戦後派あたりまで東京帝国大学まみれだった日本文壇は遠い時代になったというか、文学の民主化が進み、あらゆる個人の物語がありそれを語る能力があり物語に付随する切実さがある、という当たり前の事実がほんとうに認められる時代にいまわたしは生きているのだと思った。非常に酷薄な状況、書きようによってはまさに悲劇ともなることを、滑稽味を交えて語ってしまう西村さんの感性がとても好きだ。太宰治言うところの文明の果ての大笑い。他の作品も読んでみたい。

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著者プロフィール

西村賢太(1967・7・12~2022・2・5)
小説家。東京都江戸川区生まれ。中卒。『暗渠の宿』で野間新人文芸賞、『苦役列車』で芥川賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『随筆集一私小説書きの日乗』『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』『小説集 羅針盤は壊れても』など。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂し解題を執筆。



「2022年 『根津権現前より 藤澤清造随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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