- Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103032328
感想・レビュー・書評
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今年も目標クリアの120冊目
→目標を130冊に変更
読みやすいが、芥川賞としては駄作詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
芥川賞受賞作品だけれども、西村賢太の小説でこれが特に優れているとは思わない。
いつもの西村賢太の私小説だ。
西村賢太の小説はどれを読んでも同じと言えば同じなのだけれど、不思議と他の作品も読みたくなる。
くさいものをくさいと分かっていながら、何度も嗅いでしまうかのように。
クサヤはくさいほど旨いということだろうか。 -
芥川賞作品なので読んでみた。表題の「苦役列車」は様々な書評の通り、日雇い労働者のその日暮らしを描いた重苦しい作品。救いもなく、共感もできず、読んでいて苦役だった(まあそれば狙いでもあるのだろうけど)。一緒に掲載されている「落ちぶれて袖に涙をふりかかる」の方がユーモアもあり、共感できた。「苦役列車」と「落ちぶれて袖に涙をふりかかる」を合わせて考えるとなかなか良い。
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芥川賞受賞作品とはこういう作品なのかということがよくわかる作品
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中卒で一人暮らし、その日の稼ぎを得るために荷役作業に出かける。全然先の見えない人生の青春を切り取った小説。
文章は読みにくいが、この先、彼はどうなるのと物語終了後が気になった。もう一つの短編では40代になった主人公の数日を描いている。引き続き、彼がどうなるか気になりつつ本を読み終えた。 -
漫画「デトロイト・メタル・シティ」に通ずるものを感じた。リア充爆発しろ的な。
主人公はロクデナシだけど嫌いになれず。かといって好きにもなれず。
読後は薄ら寒い寂寥感、諦念、虚しさが残りつつもどこかサッパリとしており不思議な感じ。 -
主人公は日雇いの労働で煙草と食事と酒と女を刹那的に得ている。そんな主人公の心を記した小説。短編ではあるが、男の苦悩が実に良く表されている。私小説なので著者の体験が生かされているのであろうが、それが的確に文章として表現されている。芥川賞の選評には「読者を辟易とさせることに成功している」なんて書いた者もいたが、全く辟易となぞしなかった。同じく選評で村上龍は「高い技術で書かれており洗練されている、質の高い作品」と書いており、私にとっても共感のほうがむしろ多い。こちらはかろうじて女性にも勧められるかも。
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2010年芥川賞受賞作「苦役列車」と、同じ主人公のその後を描いた短編「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」がおさめられている本作。北町貫多=西村賢太ということでよろしいでしょうか。平成の私小説作家、だそうで。
近代文学愛好者らしく、現代作家とは思えない古めかしい日本語。その行間から血と汗とヤニとそのほかなにやらわからない不潔なものが滲み出てきているような錯覚に陥る、労働者の物語。「苦役列車」の方は、ひたすらに暗く淀んだワーキング・クラスの情景が描かれていて、明るい要素はほとんどないけれども、「落ちぶれて〜」の方は何はともあれ小説家としてデビュー出来てからのお話なので心の余裕というか滑稽味が強く、読んでいてとても楽しかった。
西村賢太は中卒だそうで、戦後派あたりまで東京帝国大学まみれだった日本文壇は遠い時代になったというか、文学の民主化が進み、あらゆる個人の物語がありそれを語る能力があり物語に付随する切実さがある、という当たり前の事実がほんとうに認められる時代にいまわたしは生きているのだと思った。非常に酷薄な状況、書きようによってはまさに悲劇ともなることを、滑稽味を交えて語ってしまう西村さんの感性がとても好きだ。太宰治言うところの文明の果ての大笑い。他の作品も読んでみたい。