- Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103047711
感想・レビュー・書評
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国家の外交とはこういうことなのか。必読。
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先日の森ープーチン会談の引き分けについての興味から見つけたのがこの本。2001年のイルクーツク宣言に至るまでの過程が綿密に描かれている。
出だしはムネオバッシングに始まった佐藤優の裁判から。イスラエルのロシア問題権威の教授の日本招聘やテルアビブ大学で開かれたロシアをテーマにした国際学会への派遣を日露支援協定に基づいた支援委員会の資金から拠出したことが目的外支出の背任に当たるということだが、この立件は条約局長の決裁を正当な手続きに沿って進められており意味不明。当時はむしろムネオハウスの方がマスコミを騒がせていたが自民党内や外務省内の権力闘争が領土問題より優先されたことになる。
個人批判にならないようにかなり気を使って書かれているが内容を見る限り2001年3月のイルクーツク宣言の後、ちゃぶ台をひっくり返してしまったのは田中眞紀子で結局それを指名した小泉の失敗なんだと思う。しかし4月の小泉政権誕生、911とアフガン侵攻があり、2002年1月に田中眞紀子更迭、9月に北朝鮮訪問、2003年イラク侵攻と見ているとこの時期に交渉が進展するのは難しかったんだろうなあと思う。
著者が切々と書いているのは交渉は相手があることでありお互いの主張を言い続ける限りは平行線に終わり交渉にならない。受け入れられなくても相手の主張を聞きその中で部分的にでも合意できることを積み上げて行くべきだということ。東郷氏の祖父からの言葉を母親からの遺言として聞いた言葉が51対49。
「交渉では、自分の国の、目の前の利益を唱える人はいっぱいいる。でも、誰かが相手のことも考えて、長い目で自分の国にとって何が一番よいかを考えなくてはいけない。最後のぎりぎりのときにそれができるのは、相手と直接交渉してきた人なのよ。その人たちが最後に相手に『51』あげることを考えながらがんばり通すことによって、長い目で見て一番お国の
ためになる仕事ができるのよ」
プーチンは平和条約締結とその後の色丹、歯舞の引き渡しには同意しているが国後、択捉の引き渡しは考えていないし、平和条約締結後には領土問題は存在しないと言う立場を表明している。 -
最初の方は文体・内容が堅めの印象があって、「最後まで興味を持って読み切れるかな・・・」と心配だったが、読み進めるうちに内容に引き込まれていった。
最後の終わり方もどこかの小説のような感じで、なかなかうまいこと書くなぁ、という感じがしました。
おすすめできますね。 -
仕事上必要になり読んだ本。文庫が出ていることにレビューを書こうと思った今さっき気づきました。しまったわー。
内容は、結局裁判一歩手前まで行った元高級外務官僚、東郷和彦氏の回想とロシアとの交渉記録です。文壇的には佐藤優氏の方が圧倒的に有名ですが、言ってしまえばこちらの方が元締めですからね。解説でも話している通り、佐藤優の本が交渉に関して場面場面の精密で情念的な描写や分析をしているのに対して、東郷和彦の本は鳥瞰図・歴史年表的な描写・分析をしています。個人的には解釈や指針をふんだんに取り入れてくれる佐藤優の本の方が好みですが、多少オラオラ系の匂いもあるので、どちらが読みやすいかは好き嫌いがあるかも。内容に八方隙がない優さんより、一平卒時代、新人外交官時代のちょっとした話、少しだけ背を伸ばせば公務員や官僚としてうまくロールモデルにできると思えそうな東郷さんの方が内容的には共感できるかもしれません。実際はそんなことないんですけどね。
早いところ北方領土関連の話を抜き書きしてまとめたいと思います。 -
北方領土返還交渉担当であった元外交官の回想録。佐藤優氏とともに第一線で活躍した東郷和彦氏の著。彼の祖父は開戦及び終戦時の外相・東郷重徳。
鈴木宗男・佐藤優逮捕事件から始まった内容は、彼の入省時からの流れの中で、ゴルバチョフ、エリツィン、プーチン各政権との交渉経過の醍醐味を余すところなく書いている。
これまでの四島一括返還論ではロシアとの交渉は難しいと判断し、二島先行返還し、残りの二島については、ロシアが受け入れ可能な案でまとめるという東郷氏の現実的対応は評価できると考える。しかし、国内には四島一括返還論の固執する者が如何に多いことか。東郷氏の退官により、そうした一括返還論への回帰が強まり、その後の対ロシア外交は停滞することになる。それはH21年10月現在、とても悪化しているよう感じられる。
交渉で大切なのは、相手の利益を考えること。相手の立場を思いやることができないと、交渉は成立しない。ウィンウィンの関係と言うことか。また、東郷重徳の減として、交渉は51対49で行うべきだという。自分側が49なのだ。それぐらいの気持ちで行わないと、両道交渉という難しい問題は解決しないのだろう。
実務的なことも学び取った。
交渉では相手の言わんとしていることがなんなのか、亜ITネオ質問内容を良く聞き、その意図を良く読み取ることが重要。また、交渉では、自分の主義主張をまずは確認し、それをはっきり示すこと。
東郷氏が外交官として如何に優れていたのか、それがそのような形で退官することになったことに非常に悔やまれる思いだ。 -
外務省にて、ソ連課長、東亜局長など、ロシア関係で十七年を勤務した著者が、北方領土を含むロシア交渉の現場を語る。交渉がまとまりそうな時に、相手にどんなメッセージを送り続けるか。そのために一言一言のニュアンスをいかに大切に文面に取り入れていくか。また相手側からの文章の一語から、どういったメッセージを読み込んでいくか。ひいては、ロシアとの交渉とは一体どういうものなのか。そんな交渉のスリリングな現場の雰囲気を、あくまで淡々と語る文体に酔う!
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長い....確かに国と国の間の交渉は、一字一句こだわり、過去の歴史に基づき進められるとは思うが、読んでいてしんどかった。