- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103054528
作品紹介・あらすじ
物乞いが憐れみを誘うべく抱いた赤ん坊は、月日を経て「路上の悪魔」へと変貌を遂げていく。執筆に10年をかけた渾身のノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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目を背けたくなるような話。でも、どこか知らない世界の自分に関わりのない話ではない。忘れちゃいけないのは、ここで書かれてる子どもたちは私たちとまったく変わらない同じ人間だってことだ。
私が人を殴ったり貶めたりしないのは、私が彼らより偉いからじゃない。
私が今日寝る所や食べるものに困らないのは、私に能力があるからじゃない。
ただそういう環境に生まれて、それを享受してなんとなく生きてるからだ。
10年かけて少しずつ環境は良くなってるように見えるけど、単に見えないところに掃いてすみっこに寄せてるだけにすぎない。
神がいるから大丈夫と彼らは言うけれど、彼らが言う神ってなんなんだろう。
私が思う神とは違う人のような気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
かなり危険で強引な取材であったと思う。物乞いにて少しでも多く稼ぐために目をつぶしたり手足を切り落として生き延びる、戦場のような現実。作中は取材年ごとに3章に分かれており、少しずつ環境の改善はみられるが、それゆえの新たな苦難も発生している。
あまりに絶望的な現実に、自分はこの本を読んで一体どうしたいのかといった虚無感すら覚えた。 -
インドと言えばカレー、ヒンズー教、ガンジス川、経済発展、映画、そしてカースト制
カースト制に代表されるインドの差別の歴史は、学校の勉強で習っただけでも僕の心に暗い影を落としています。生まれた瞬間から既に差別が始まっていて、そこから抜け出すという事自体が容易ではなく、日々食べるだけで精一杯なひと達が沢山居ます。これは国家が貧しい訳ではなく、インドという発展著しい国であっても、そもそも人権という考え方が希薄である所から始まる貧困だと思います。
この本では「レンタルチャイルド」という衝撃的なテーマを中心に据え、ドリーミーにインドを賛美する人々ののど元に鋭い刃を突きつける重さ100万トンのルポタージュです。
マフィアたちは、物乞いの成功率を上げる為に、子供の目をつぶし、手足を切り落とし、熱した油をかける。幼児を女乞食に貸出し、その上前を撥ねる。
そして、大きくなって稼げなくなった子供を放逐し、そんな子供たちが徒党を組み、さらに弱い女性やヒジュラ(いわゆる心が女性の男)を襲い暴力の雨を降らせる。
負の連鎖は断ち切られる事は無く、弱い所へとその矛先を向けていくのでありました。
既に15年ほど前の事を書いていますので、今はどうなっているのでしょうか。
発展しているとはいえ被差別階級、不可触民がいなくなるとは思いません。しかもこれは誰かがボランティアでどうのこうの、寄付でどうのこうのではなく、経済発展著しい大国の内部の事なんで、国ぐるみで変えない限り変わらない事柄なんだと思います。
この重苦しく辛い本を読むと貧困というものの本質というか、人間というものがいかに環境や境遇で決まってしまうかが詳らかにされているようで身に染みます -
物乞いをするとき、より悲惨に見えるほうが恵んでもらえる額が多くなる。
五体満足な者よりも障害や怪我がある方が稼ぎがよかったりする。
また、女が一人で物乞いするよりも乳飲み子を抱えて「この子のミルク代を」と手を伸ばす方が喜捨は増える。
そのため、子供がいない女は仲間から子供を借りて道に立つ。
そこに目をつけたのがマフィアで、親を騙して預かってきた子や誘拐してきた子を物乞いたちに「レンタル」する。
旅の中でこの「レンタルチャイルド」の存在を知った石井さんは、マフィアとも接触しながら数年の月日をかけて三度のムンバイ取材を行い、レンタルチャイルドについて調べる。
この数年の月日の中でレンタルチャイルドたちは成長し、犠牲者だったはずの彼らは凶暴な悪魔となっていく。
大人たちの金儲けのために誘拐され、手足を切られ、使い物にならなくなったら捨てられる子供たちが、その後どのように成長していくのか。 -
インドのスラムに住む子供たちを追ったルポルタージュ。
一度のインド行きではなく、何回もインドへ行き、ずっと同じ子供ではありませんが、子供たちの境遇と生き方について語っています。
なんとなく知っていましたが、物乞いをするために自分たちの身体を傷つけたり、親やその他の大人に身体を傷つけられたりして生きている子供たちの多いこと…。発展していくインドの影で彼らがどう生きていくのかが気になります。 -
ノンフィクションです。
梁 石日さんの『闇の子供たち』を読んだ時もとてもショックを受けましたが、これも衝撃的でした。
貧しさとは何なのか考えさせられます。
【福岡教育大学】ペンネーム:猫 -
インドの乞食に焦点を当て、筆者が自らスラムに入り込み話を聞きまとめあげた “ノンフィクション”。
生々しく詳細な描写で読み応えはありすぎるのだが、本当にノンフィクションなのかは不自然さを覚えてしまう。
各登場人物の発言や行動がいちいち大袈裟だし、ことの展開も都合が良すぎるぐらい進んでいく。
とはいえ浮浪少年や乞食の生活の厳しさは現実問題として存在していると思う。
読んだからと言って何かできるわけではないが、世界で起きていることをリアルに知るためには良い本でした。
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数年おきにムンバイに訪問し、浮浪児を追った3部構成のルポ。インドは本当に闇が深すぎて、フィクションにしか思えない…。