ローマ人の物語 (4) ユリウス・カエサル-ルビコン以前

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096139

作品紹介・あらすじ

前人未到の偉業と破天荒な人間的魅力、類い稀な文章力によって"英雄"となったユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)。古代から現代まで数多の人がカエサルに魅きつけられ、政治・思想・演劇・文学・歴史等々、数多の視点からカエサルに迫った。それら全てをふまえて塩野七生が解き明かす、ローマ人カエサルの全貌-ルビコン川を前に賽が投げられた時まで。

感想・レビュー・書評

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  • 武人としてのカエサル
    快速を重んじ、失敗は繰り返さない
    少数でも臆せず突撃

    急造の砦の内外に同時に敵を迎え
    持ちこたえる

    対する大金持ちの遠征の悲劇的な結末

    HBOの「ROME」を見る
    ルビコンを渡る直前から始まり
    終わりはアウグストスの「第一の人」

    パックスロマーナは読まなくてよさそう

  • ★★★★★ フルプライスの価値アリ

    高校世界史までの知識しかない私だったが、カエサルの人間としての魅力に引き込まれた。天才ってなろうとしてなれるもんじゃないな。
    ガリアに入ってからは手に汗握る戦いの連続。講和を結んでも結んでも裏切られるような状況で、それでもカエサルは持ち前のカリスマ性と情報収集能力で乗り越えていくので、緊張感を持ちつつも安心して読み進められた。
    ラスト、青年クラッススなどとは違い今まで内面の掘り下げなどが特に無かったラビエヌスがポンペイウス側に立ってしまった…本当に越冬や軍を分ける時の説明でさらっと名前が出てくるだけだったけど、それだけでもカエサルが一等信頼を置いている人物であったのが十分に伝わってくるだけに、非常に切ない気持ちになった。

  • ローマ史中最も注目されるカエサルの物語だ。本巻はガリア戦記が主体だ。学生時代カエサル著作の「ガリア戦記」を読んで戦いよりもガリア諸部族の懐柔の歴史という感じを受けていた。本書を読むとガリアはアレシア攻防戦など激しい戦いの末平定したことが分かる。しかし、ローマ人は偉大だ。法の民と表現されるが、法治国家であったことがローマを基礎づけている。紀元前の実話なのだから驚かされる。

  • p.450くらいから胸が高鳴りっぱなし!さあルビコンを超えたぞ!って終わりかい!!早く続きを。。。

    ハンニバル編とカエサル編は本当にお薦め。カエサルはまさに理想的スペックを持ったカリスマリーダーといった感じ。軍事・政治力に秀でただけではなく、なにかこう人間的な魅力というか、どこか憎めない、けれどもついていきたくなるような言動。

  • ローマの歴史における英雄中の英雄ガイウス・ユリウス・カエサルについての叙述がいよいよ始まる。カエサルは紀元前100年の生まれという事で覚えやすい。項羽と劉邦の時代のおよそ100年後、カエサルの100年後にキリストの時代となるのでなんとも贅沢な時代である。
    カエサルの少年期は、マリウス(民衆派)とスッラ(元老院派)の抗争の時代と重なる。母方の伯父にあたるマリウスがカエサルの伯父2人を処刑するという凄惨な出来事を13歳の時に経験している。16歳で父親を亡くしたカエサルは家長となり、政略結婚を経て当時の政争に巻き込まれていく。マリウスのバトンを受けとった執政官キンナは、オリエント平定を終えたスッラを迎え撃つにあたり、自身の支持基盤を確立しておく必要があった。民主派の英雄であるマリウスの甥にあたるカエサルと自身の娘を結婚させ、支持を固めるのが目的だった。スッラがローマに帰国すると、メテルス、クラッスス、ポンペイウスといったマリウスの粛清を逃れていた「元老院派」の軍が合流し、「民衆派」の正規軍は粉砕される。スッラによる「民衆派」の粛清は苛烈を極め、スッラの抹殺リストにはカエサルの名前も載っていたが、周囲からの助命嘆願により抹殺リストから渋々カエサルの名前を消す(このカエサルが後々元老院を打倒する部分は源頼朝と似ている)。スッラは助命は許すもののキンナの娘との離婚を命じるが、カエサルの返事は「否」であり、激怒したスッラから逃れるため小アジアへと逃避する。離婚を拒否した理由は諸説あるが、カエサルは絶対権力者といえど、個人の私生活の権利を侵害できないと考えたのでは、と著者は言う。
    逃亡先の小アジアで軍務に就くことにしたカエサルであったが、数年後にスッラの訃報を受けローマに急ぎ戻る。戻ったものの、ローマはスッラの死後も「元老院派」が幅を利かせている状況でカエサルは何もすることができない状態だった。そこでカエサルは弁護士として身を立てていく事を選択する。名のある人物の裁判に勝訴すれば自身の名前が一気に売れるからである。2回目の訴訟でスッラ派の重鎮を法廷に引きずり出した事で、再度「元老院派」から目をつけられロードス島に留学を兼ねて逃亡する。ロードス島への道中、海賊に捕らえられたカエサルは身代金20タレントを要求されるが、なんとこれを一笑に付し50タレントに吊り上げた。身代金の高さが身の安全を守ってくれるとの計算が働いたのではとされるがなんとも豪胆である。捕虜というより、ボディガードを携えた重要人物のような暮らしをする中、海賊達に「いつか縛首にしてやる」と発言して笑われていたが、身代金の支払いが終わると実際に私兵を携えて海賊拠点を襲撃し、海賊達を本当に絞首刑にする。
    母方の伯父であるアウレリウス・コッタが、ボスフォロス海峡を有するビティニアの属州総督として派遣されると、ロードス島を引払いビティニアに向かう。だが、ポントス王のミトリダテスに早速侵攻を受け、コッタは逃亡先で病死し、スッラ派の重鎮ルクルスが派遣される。カエサルはまたも行き先を失うが、ローマからコッタの死により空席になった神祇官に任命されたとの知らせが届く。
    カエサルが27歳になったこの時期は、後に仲間にも仇敵にもなるポンペイウスとクラッススの覇権争いの時期と重なる。「スパルタクスの乱」を鎮圧したクラッスス、スペインでの「セルトリウス戦役」を終えたポンペイウスも共にローマにいた。スッラの粛清時に、粛清された貴族達の資産を安く買い叩いたクラッススはローマ一の大金持ちだったが、手段を選ばない蓄財をポンペイウスからは軽蔑されており、若くして名声を得たポンペイウスをクラッススは嫉妬していた。仲の悪かった二人ではあるが、利害は一致しており手を結ぶことになる。ポンペイウスは執政官への立候補資格が無かったが、これまでの数々の軍功をバックに元老院に立候補を認めさせようとしていた(法律違反だが軍隊も解散していなかったので軍事力を背景にした恫喝にも近い)。クラッススは、立候補の資格は問題なかったが、あどい金儲けにより人望がなかった。そこで、クラッススは裏で手をまわしてポンペイウスの立候補を元老院に認めさせ、ポンペイウスは自分の支持者達の票をクラッススに投じることにし、晴れて二人が執政官となった。スッラの構築した元老院をトップとした厳格な年功序列による統治システムは、突出した個の力の前に無残にも崩壊したのである。
    会計検査官、按察官(造営官)を得て民衆の支持を得ていた37歳のカエサルは、メテルスが亡くなったために空席となった最高神祇官の席に狙いを定める。対立候補は執政官を経験している重鎮2人であるため、通例の話し合いによる選出では不利とみたカエサルは、友人の護民官に選挙制となる法案を提出してもらう。多額の借金を選挙活動に投じ、見事当選を果たす。最高審議官は名誉職であり、特段利権等はないが、この時既にカエサルは元老院打倒後の新体制の構想があり、その権威付けには最高神祇官が良いと考えていたとされる。最高神祇官になったカエサルは親友の護民官と共に、一人の元老院議員を告発する。この人物は、37年前に護民官サトゥルニヌスの急進的な改革案の提出に際し、「元老院最終勧告(セナートゥス・コンストゥルム・ウルティウム)」の発布を主導した人物であった。カエサルの狙いはこの人物を潰す事が狙いではなく、元老院の持つ最終兵器である「元老院最終勧告」の正当性を否定することにあったが、結局この裁判はうやむやのまま終わった。
    属州総督として南部スペインに赴任する予定であったカエサルは、借金取りの座り込みに遭い、スペインに出立することができなくなるが、これを救ったのがクラッススであった。クラッススはカエサルの借金を肩代わりし債務をクラッススに一本化した。この行動は2つの理由から考えられるが、1つ目は単純に「カエサルに投資していたから」、2つ目は「カエサルへの貸付が多額すぎて、カエサルを破産させるわけにはいかなかったから」である。属州総督から帰任したカエサルはいよいよ執政官に立候補する。ポンペイウスとどのように打ち合わせたかは不明だが、カエサルとポンペイウスは密約を交わす。カエサルは執政官としてポンペイウスの部下に農地給付とポンペイウスが組織したオリエントの再編成案の承認を実現させ、ポンペイウスは部下にカエサルへ票を入れさせるというものであった。ここにクラッススが加わり、有名な「三頭政治」が確立される。クラッススは最大債務者であるカエサルを助けざるを得ない構図から、カエサルとポンペイウスという1対1対だとバランスを欠いた力関係を均衡に近づけたとされる。執政官となったカエサルは元老院の議事の内容をフォロ・ロマーノの一画に張り出すという周囲が驚く事を実行した。キケロは自身の元老院での発言を着色して出版してアピールしていたりしたため、この施策は大打撃であった。カエサルは更に「ユリウス判例法」という国家公務員法を提案する。これは、公職者がどのように振舞わねばならないかを規定しており、多額の横領や賄賂を受け取ったものは元老院の議席を失うとあった。着々と元老院派の力を削ぐカエサルは、満を持してグラックス兄弟からの長年の問題である「農地法」に着手する。グラックス兄弟は護民官として農地法を提案し、農地法の3名の委員会に自らも参加する体制を提案していたが、カエサルは執政官である上、委員会も20名とし自らは参加しない提案にする等、元老院派への配慮も施した提案であった。しかし、元老院は農地法=反元老院体制と理解し、この法案を通そうとはしなかったため、カエサルは市民集会での決議(ホルテンシウス法メソッド)を決意した。市民集会では市民に絶大な人気を誇るポンペイウスを前面に立たせ民衆のボルテージを上げるやり方をしたため、反対を唱えようとする元老院派の面々は市民のブーイングを浴びるような状況であった。このようにして遂に農地法が成立する。この農地法の成立過程でもう一人の元老院派の執政官は立場をなくし、執政官は実質カエサルのみとなる。この機と「三頭政治」を利用しカエサルは自身のガリアへの属州総督の任期等を自身の都合の良い内容とする法案を決議する。
    ガリア戦記は南仏属州の属州総督に就任したカエサルが、ガリアを制覇する過程を自身が執筆した伝記である。ガリア戦記をかなり大雑把にまとめると以下の通り。
    ・ガリアには様々な部族が乱立している状態であり、ライン川以東のゲルマン人の侵攻に晒されていた。
    ・カエサルはゲルマン人をライン川以東に押し込み、ガリアの制覇を目論んだが、ガリアの英雄ウェルキンゲトリクスがこれを阻む
    ・ガリアの諸民族をまとめ上げたウェルキンゲトリクスは、重装歩兵が主流のローマ軍に対して、騎兵を活用した戦法を用いカエサルを苦しめる。
    ・最終決戦の場であったアレシア攻防戦にてウェルキンゲトリクスに勝利し、ガリアは降伏を選ぶ。
    ・ウェルキンゲトリクスはガリアの諸民族を招集し、自身を生きたままローマに差し出す事での決着を決め、カエサルもウェルキンゲトリクスの意思を尊重し、ガリア諸民族から捕虜を取ることもなかった。
    無事ガリアを平定したカエサルであったが、今度は首都ローマで「反カエサル」の動きが高まる。元老院派がポンペイウスを担ぎ、カエサルのガリア属州総督の解任を目論んだのである。この動きに対して、カエサルは元老院派の護民官の一人であるクリオに目をつけ、自身の味方に鞍替えをさせ、自身の任期を延長させる工作を開始する。元老院がカエサルの解任を決議しようにも、護民官が拒否権を発動することで、綱引きの状態になった。結局、「元老院最終勧告」を発令し、ポンペイウスに全権を与えカエサルを打倒する決定をする。カエサルは自身の1個軍団を従え、遂にルビコン川を渡るのであった。これまでカエサルの元で数多の活躍をしてきた副将ラビエヌスだが、彼自身はポンペイウスのクリエンテスであったため、カエサルに付き従う事はできず、ポンペイウスの元に向かった。

  • 20210509
    常識の枠外で自身の頭で考えて実行する創造的天才
    ・借金を強みと考えて債務者からの協力を得て、権力闘争でも名誉職でしかなかった最高神祇官からキャリアを積み上げた。
    ・軍団兵は同質性を重視して補充はせず、ロジスティクスを重視して工兵の技術力によってガリアを征服した
    ・自らガリア戦記、内乱記を書くことで情報を管理していた既成の共和制護持の元老院階級に対抗し、市民と有力家の若年層の支持を集めて元首政という新しい政体を確立した
    ・多くの愛人をもったが、それを引け目に感じることなく相手が求めることを行った。兵士からも抜群の人気を誇る人心掌握の達人
    ・人間は自分のみたいものしか見ない、透徹した人間観を持ち、他者から超越していると考えるからこその余裕を持ち、断固として自己の考える理想の実現に邁進
    ・寛容をモットーとし、硬貨にも刻印させ、他者のプライベートには一切口出しをしなかった。内心の自由を尊重したからこそ、統制は緩く暗殺は成功した

  • 図書館長 井上 敏先生 推薦コメント
    『ヨーロッパの歴史を理解するにはまずローマの歴史。独特な書き方だが、ローマの建国から西ローマ帝国滅亡までの通史を知るにはちょうどいい。研究者からの批判もあるが、理解しやすい。』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/215025

  • スッラの独裁から元老院派が力を持っていた頃、カエサルはイタリア中を転々とし大学で学び軍に入隊していた。前61年に執政官に立候補し、当選を確実にする為ポンペイウスとクラッススと協力することになって始まった三頭政治。やがてガリア属州総督として現在のフランス・スイス・ベルギー・ドイツやイギリスにまで手を伸ばしたカエサルはガリア平定後再び執政官に立候補しようとするが、カエサルの兵力を恐れた元老院派はポンペイウスを味方につけ、カエサルのローマへの帰還と軍隊解散を命じる…ついにルビコンを渡る!という前49年までの物語。

  • ハンニバルは戦争のプロだが、カエサルは戦争と政治を操れたエリート。ルビコン前は ガリア戦記が中心

    カエサルは 借金、人妻好き、政略結婚と人物的には 評価しづらい。戦争と政治を使い分け、ポピュリズム、人心操作で、地位を確立していった と感じた

    カエサル、ポンペイウス、クラッスス、キケロを中心に 物語を追っていくと わかりやすい。

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